第111話 入場っ!
「むふふっ」
さぁ! 新たな仮面を身につけて……
「じゃあ、行ってくるっ!」
「はい、行ってらっしゃいませ」
「ファナと一緒に応援してるわ」
ファナとルミエ様の声援と見送りを背に、学園だけじゃなく各国からも大々的に注目されてる新人戦の舞台へといざ行かんっ!!
「っと!」
部屋を出ると同時に新人戦の会場になる訓練場の控え室に転移して一瞬で到着!
「ふふん〜!」
一瞬で目的地に移動できるから、時間ギリギリまでゆっくりできるし。
転移魔法には転移先を目視したり座標が必要になるけど、私の魔力感知を持ってすれば広大な学園内の大部分に転移可能。
まぁ、女子寮の私の部屋はルミエ様が結界を展開してるから、今の私だとマリア先生のみたいに直接部屋に転移したり、部屋の中から転移で移動することはできないけど……うんうん! やっぱり転移魔法は素晴らしい!!
イストワール王国にいるときは冒険者ソフィーとして行動してるときは別として、基本的に公爵邸の中でしか転移魔法は使えなかったけど……こっちでは最初の自己紹介でもう既に盛大にやらかしちゃってるし、学園内でなら気兼ねなく転移魔法を使用できるっ!
「おはよう、ソフィー」
「ふふっ、おはよう! フィル」
学園に入学して1ヶ月。
何度やってもこの気安い挨拶はいいっ!!
「全然来ないから寝坊しちゃったのかと思ったよ」
「むっ」
私を誰だと心得る! 私は才女と名高いルスキューレ公爵家のご令嬢にして、いずれは最強に至る者だぞ!!
そんな私が子供みたいに寝坊なんてするわけないじゃんか! まったく、失礼しちゃうわ!!
「あはは、ごめんごめん。
でも、その仮面は似合ってるよ」
「本当?」
「もちろん」
「ふふん〜! そうでしょ、そうでしょ!!
フィルも……いつもは仮面なんて着けてないからちょっと違和感があるけど似合ってるよ」
オルガマギア魔法学園は外界での身分とは完全に隔離された空間で、たとえ王族でも平民の生徒と同列に扱われる。
だからこそ、身分を隠して学園に在籍してる人もそれなりにいるんだけど……
この新人戦では魔導学園都市王国のみならず、各国の重鎮とか国内外問わず学外から多くの観客がやって来る。
そんなわけで、新人戦に出場する新入生で希望者は仮面で顔を隠して参加することができる。
だから、外での身分を隠してる私やフィルは仮面をつけてるんだけども……
「ははっ、それはどうも」
ふ〜む、この美少年め!
仮面で顔を隠してるの溢れ出すようなこのキラキラオーラ!
フィルもまだ私と同い年の10歳なのに……私の残念な婚約者のセドリックにも見習ってほしいわ。
確かにセドリックも王族だけあって顔はいいんだけど……なんというか、内面から溢れ出す優雅さ? が全然違う。
本物の王子様であるセドリックよりも、仮面をつけて顔を隠してるフィルの方が王子様然としてるってどうなのかな?
「ソフィーちゃ〜ん!!」
「わふっ!」
視界が真っ暗になって、画面越しに押しつけられる柔らかい感触といい匂い。
まぁ、並大抵の者ならビックリしたり、恥ずかしがって慌てふためいたりすだろうけど……
幼いころより毎日毎日、お母様やお父様! お兄様達と共に過ごしてきた私は一味違うっ!!
ふっふっふ〜、確かに自己紹介でやらかしてしまった初日の翌日に登校した時はちょっとびっくりしたけど……今更、この程度で臆する私ではないのだっ!!
「おはよう、昨日はよく眠れた?」
「ミラさん、おはようございます」
「あら! それがソフィーちゃんの仮面ね、凄く似合ってて可愛い〜っ!!」
初日の自己紹介でやらかしてしまって落ち込んでたけど……オリエンテーションが終わった直後にミラさんをはじめ、今度は女子生徒だけじゃなくて男子達にも群がられた。
後からミラさんに聞いた話によると、私の自己紹介で静まり返ってたのは私がやらかしちゃったわけではなく、新入生総代とはいえ新入生なのに私がいきなり転移魔法を使ったことにビックリしてたからとのこと。
まぁ、そんなことは別にどうでもよくて! 重要なのは……私の学園生活は、お先真っ暗ってわけではなかったということ!!
そして! フィルとミラさん以外にもいっぱいお友達ができたってことなんだけど……
「ソフィーちゃん!」
「おはよう、ソフィーちゃん!」
「遅かったから心配してたんだよ?」
「そうだぞ、ミラなんてソフィーちゃんが一向に来ないからずっとソワソワしてたしな」
クラスメイト達、みんなからこんなに一斉に話しかけられたら困るっ!!
「皆さん、そんなに一斉に話しかけるからソフィーが困ってますよ」
フィルっ! ナイスフォローだわ!!
「ったく、ソフィーちゃんと違ってフィルは可愛げないというか何というか……」
「まったくよ」
「この生意気小僧め!」
とかなんとかいわれながらも頭をわしゃわしゃされてるし。
「ふふっ」
フィルもちゃんとクラスのみんなから可愛がられてるようでなによりだわ。
『え〜、出場者の皆さん、時間になりましたので訓練場へ入場してください』
「っと! 時間のようね!!
みんな円陣を組んで! じゃあ……行くわよっ! 私達の実力を見せつけてやろうじゃないっ!!」
「「「「「「「「「おぉ〜!!」」」」」」」」」
むふふっ! みんなで円陣を組む。
これぞ青春! これぞ学園生活って感じだわっ!!
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