第105話 私の魔力量は1280万です

「ふ〜む」


 まさか担任の先生だと思ってた方が先輩で、しかも現生徒会長だったとは。

 けど、さすがは世界三大学園の一角にして世界最高峰の魔法研究機関でもあるオルガマギア魔法学園のある生徒会長。


 優雅に一礼して転移魔法で去っていったけど、見た感じまだ10代で若いのに高等魔法である転移魔法を使えるなんて!

 うちではアルトお兄様を始め、私に授業……こほん、修行をしてくれていたマリア先生も普通に転移魔法を使ってるから感覚が麻痺してるけど……10代で転移魔法を使いこなすのは凄い!!


「これが、オルガマギア魔法学園か〜……ふふっ!」


 確かにマリア先生のいう通りだわ!

 普通に転移魔法を普段から使うような優秀な魔法使いが集まるオルガマギア魔法学園だったら最強を目指す上で私が得るものも多いはず!!


「ん?」


 なんだろ……なんか、さっきからチラチラとクラスメイト達の視線を感じるんですけど。


「う〜ん……」


 まぁ、別にいいや!

 しかし……カミラ先輩も担任の先生が来るまでは教室から出ないで休憩してるようにっていってたけど、ルミエ様もお散歩に行っちゃったしな〜。


 こうなったら仕方ない! 友達であるフィルとお話をするしかないなっ!!

 うんうん! 我ながら素晴らしいアイデアだわ!


 別に友達とお喋りしたいってわけじゃないけど、暇だから仕方ないもんね!!

 そうと決まれば早速フィルのところに……って、向こうからこっちに向かってきてる!


「むふふ〜」


 やっぱり、フィルも考えることは同じだったみたいだわ!


「ソフィ……」


「ソフィアさん!」


「?」


 フィルの声を遮って、私とフィルの間に割り込んできたのは……誰?

 いやまぁ、彼女がクラスメイトなのは知ってるけど。


「あ、あの……」


「ふふっ、安心して。

 ソフィアさんはこの私、ミラが……私達が守るから!」


「へ?」


 ま、守る? ミラさん? いったいなにを……


「そうです!」


「ソフィアちゃんは私達が守ってみせるわ!!」


「えっ、えっ!?」


 なにこれ? 他のクラスメイト達まで……これってどういう状況?


「私達……ちゃんと見ていたのよ!

 貴方、ソフィアさんを泣かせたでしょう!?」


「っ!?」


 な、泣かせたっ!?


「そ、それは……」


 フィルもなんでそこでたじろぐのっ!?

 私は泣いてないじゃんかっ!!


「流石に最後尾を少し離れて歩いていた貴方達がなにを話していたのかまでは聞こえなかったけど…… 生徒会長に案内されて教室に向かってる時に貴方がソフィアさんを泣かせた事、忘れたとは言わせないわ!!」


「あ、あの……」


「大丈夫、彼がソフィアさんと同い年くらいの年頃でありながら次席だって事は知っているけど……いくら10歳くらいの子供とはいえ好きな女の子に素直になれずに泣かせるなんて最低よ!」


「へっ!?」


 す、好きな女の子っ!?

 ミラさん、なにか勘違いをしてるんじゃ….…


「彼が次席だろうと好きにはさせない!

 ソフィアさんの事は第三席たるこのミラお姉さんが……いいえ、私達でソフィアさんを守るわ!!」


 おぉ〜! ドドンッ!! って効果音がミラさんの背後に見えた。

 というか、ミラさんって私とフィルに次ぐ三席だったんだ。

 って! そうじゃなくてっ!!


「あのっ! フィルは私の、と……友達なんです!!」


「え?」


「だからその……別に好きとか、そういうのじゃないというか……あ! あと、私は別に泣いてないですからね!!」


 うんうん、この2つだけはしっかりと誤解を解いておかないとね!


「友達……本当に?」


「そうですよ、ちょっとした行き違いがあったようですね。

 僕とソフィーはちょっと境遇が似てて、それで仲良くなったんですよ。

 ミラさん達が思ってるような苛めっ子じゃないのでご安心を」


「うんうん!」


「それに、この学年だけじゃなくて、この学園にソフィーを苛められる者が果たして何人いるか。

 恐らくですがソフィーの魔力量は学園でもトップクラス、最低でも500万以上ですよ」


 な、なぜそれを……?


「ご、500万っ!?」


「えぇ、担任の先生が来れば入試結果発表でバレると思うので先に言っておきますが、僕の魔力量が490万ですからね。

 まず間違いなく僕が新入生総代になるだろうなとは思っていたんですが……世界は広い。

 まさか僕と同い年の10歳で僕以上の魔力量を誇る天才がいるとは思いませんでした」


「ソ、ソフィアさん、今のは本当なの?」


「えっと……はい」


 まさか、魔力量測定のときにマリア先生がいってた500万くらいの数値ってのがフィルのことだったとは……


「じゃあ、ソフィアさんの魔力量は……」


「あ、はい、1280万です」


「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」


 えっ? な、なに!? なんで一瞬で教室中が静まり返ってるのっ!?


「あ、あの……わっ!?」


「凄い! 凄いわソフィアさんっ!!」


「凄いなんてもんじゃないですよ!」


「凄すぎますっ!」


「まさかこんなに可愛い上にそんなに凄いなんて!!」


 ちょっ、ミラさん!? というか、みなさん近いです!!

 先生は! 先生はまだなのっ!? ルミエ様、助けてください〜っ!!






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 オルガマギア魔法学園の敷地内に存在する庭園。

 いつもは美しく手入れされ生徒達の憩いの場となっている庭園の周囲には結界が張り巡らされており……

 激しい戦闘があったことを物語るように地面は抉れ、美しい庭園は無残な状態と化していた。


「それで、コレが?」


「えぇ」


 荒れ果てた庭園にて、淡々と話すのは2人の美女。


「ふふっ、この学園に侵入しようだなんて、私もナメられたものだわ」


 オルガマギア魔法学園の学園長にして四大国が一国、魔導学園都市王国の女王たる大賢者マリアが地面に倒れ伏す男を見下ろし笑みを浮かべ。

 大賢者マリアの隣に並び立つルミエが冷たく、鋭い視線で男を見据える。


「ソフィーを狙うなんて……愚かな人間共が」


「っ!?」


 すぅっとルミエの目が細められ、降り注いだ圧倒的な殺気に男が声にならない悲鳴をあげて息を呑む。


「殺したらダメよ。

 下っ端とはいえ、奴らの情報を何か持ってるかもしれないんだから」


「……はぁ、わかってるわよ。

 ちょっと殺気を向けた程度で簡単に死んじゃうんだから……じゃあ、私はソフィーの所に戻るわ」


 絶対的な死の恐怖に震える男に興味を無くしたように視線を外し、小さな竜種ドラゴンの姿になって翼をはためかせて飛び去るルミエに目を見開く男を一瞥し……


「私も急がないとね」



 パチンっ!



 大賢者マリアが指を打ち鳴らした瞬間……男の姿が掻き消え、最初からなにもなかったかのように、いつもの美しい庭園が広がっていた。

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