第102話 邂逅
入学生は全員例外なく行うらしい魔力量測定で図らずも新記録を樹立してしまったのはいい。
いいんだけど……どうして私が代表として答辞をするはめに……!!
いや! 入学式で新入生のまえに出て来てしまった以上は、もはやぐだぐだ考えていても仕方ないっ!
こうなったら覚悟を決めてビシッとカッコよく決めてやるわっ!!
むふふっ! ザワザワって騒ついてるな……私の洗練された優雅な歩く姿を!
伝統を非常に重んじることから礼儀作法が厳しいと有名なイストワール王国の王子妃教育で、教育係のご夫人から文句の付け所がない完璧といわしめた一礼を刮目せよっ!!
「やわらかな風が吹き、暖かく穏やかな日差しが注ぐ、うららかな春の佳日。
世界に名高いオルガマギア魔法学園に入学することが叶い、とても光栄に存じます。
オルガマギア魔法学園の一員としての誇りを胸に、その名に恥じぬ行動を、知識を、実力を示すとここに誓います」
とまぁ、ここまでは真面目で普通の答辞といえるだろうけど……
「例年、我々のようにオルガマギア魔法学園に入学する者の半数以上が挫折し、卒業することができるのはごく少数です。
しかしながら! 我々にとって、これから始まるオルガマギア魔法学園での日々は過程に過ぎません」
うんうん、やっぱり答辞としてのテンプレとはまったく違うことをいったからかなり騒ついてるな。
ザワザワと騒ついてる新入生達を……軽く魔力を放って威圧することで黙らせるっ!!
「オルガマギア魔法学園の学園長にして、魔導学園都市王国を統べる女王陛下でもある大賢者マリア様のように、歴史に名を刻むような偉大な魔法使いに……いずれ最強になるという覚悟を持って答辞とさせていただきます。
新入生総代、ソフィア」
ふっふっふ〜ん! どうよ?
カッコよく、ビシッと! それでいて一応は答辞としての形を崩すことなく決めてやったっ!!
『ふふっ、カッコよかったわよ、ソフィー』
ルミエ様! あぁ、緊張した〜……そもそも! マリア先生の推薦入学で入学試験を受けてない私がなんで新入生総代!?
しかも、この答辞があったから私だけ他の新入生達とは席が違って、なぜかマリア先生の隣だったし……
一応イストワール王国ではルーが私の代わりにソフィア・ルスキューレ公爵令嬢として動いてくれてるけど、しばらくは可能な限り目立つつもりはなかったのに。
特別席のせいでめっちゃ目立ってるし!
これはもう早く席に戻って、猫ちゃんサイズのルミエ様を膝に乗せて癒やしてもらわなければ!!
あとは学園長であるマリア先生の挨拶で入学式も終わりだし、私の役目は終わった! あとはのんびりとリラックスさせてもらうとしよう。
「まったく……私もソフィーちゃんに負けてられないわね」
「?」
マリア先生、いったいなにを……
「では最後に、学園長にして魔導学園都市王国が女王陛下のご挨拶です」
「っ!」
司会の人がいった瞬間、目の前にいたマリア先生の姿が掻き消え……突如壇上で燃え上がった炎の中からマリア先生がっ!!
「おぉ〜!」
マリア先生が壇上にふわっと着地すると同時に燃え上がっていた炎が弾けて会場の中を!
新入生達の頭上を炎の波が駆け巡って、壁に当たって掻き消えた!!
派手な演出ながらも、一切どこも燃えてないこの繊細で洗練された高度な魔力コントロール!!
新入生達も盛り上がってるし、さすがは大賢者たるマリア先生!
「皆さん、まずは入学おめでとう。
これから貴方達はこのオルガマギア魔法学園で切磋琢磨していく事になるわけだけど……魔法の、魔導の深淵は限りなく深いわ」
うんうん! まったくもってその通りです!!
「魔法使いの雛たちよ、精進しなさい。
ソフィアさんが言ったように、貴方達がその名を歴史に刻む日を楽しみに待っているわ。
そして、いつの日か……私達を超えて見せなさい!!」
おぉ〜! 拍手がすごいっ!!
これぞまさしく拍手喝采って感じだわ。
そしてまた炎に包まれて掻き消えたマリア先生が、元の席である私の隣にっ!
「さすがです!」
『まぁまぁね』
「はぁ、ルミエ……貴女、昔はあんなに可愛らしかったのに、すっかりとふてぶてしくなっちゃったわね」
『っ! い、言ってくれるわね……』
「大丈夫です! ルミエ様は、今もすごく可愛いですよ?」
それはもう抱きしめちゃい程にっ!!
「ルミエ、しっかりとソフィーちゃんを守るのよ」
『わかっているわ。
そう言う貴女こそ、わかってるでしょうね?』
「ふふっ、えぇ勿論」
「?」
なんの話ですか?
「それじゃあ、これで入学式は終わりだからソフィーちゃんはこれから担当者の指示に従って教室に向かってね」
「わかりました」
「じゃあ、私は少し用事があるからこれで失礼するわ。
また後で」
おぉ〜、颯爽と転移して行ってしまった……っと、私も担当者の指示に従って教室に向かわないと!
担当者さんは……
「ソフィアさんはこっちだよ」
「貴方は……」
「初めまして、僕はフィル。
今年の入学生でソフィアさんに次ぐ次席だよ」
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