第95話 事前準備は大切!!
「わ、私! 死んじゃったんですかっ!?」
ちょ、ちょっと待って! なら、なんで私はここに?
「ま、まさか……ここは死後の世界……なの?」
「ふふっ、安心して。
ここは死後の世界なんかじゃないわ」
「えっ? そんなんですか?」
でも、さっき私は死んだって……いやまぁ、確かに大賢者たるマリア先生なら死者蘇生すら可能かもしれないけど。
「まぁ、混乱するのも無理はないわ。
ユリアナ、一から詳しく説明してあげましょう」
「そうですね……ソフィーちゃんは正確にどこまで覚えているかしら?」
「えっと……ナルダバートが消滅して、血溜まりに落ちた私にお母様達が走って来るところまでです」
お母様達の焦燥感いっぱいの悲痛な呼び声を最後に意識がぷっつり。
気がついたら今いるベッドの上だった。
「ソフィーちゃんが気を失った後、あの場にいた全員で可能な限りの治療を施したわ」
かつてSランク冒険者〝炎姫〟として名前を馳せたお母様に、現Sランク冒険者〝剣帝〟たるエレンお兄様、賢者にしてAランク冒険者でもあるアルトお兄様。
そして伝説に語られる英雄であり、最古の現役Sランク冒険者でもある冒険王ガルスさんとルミエ様。
国一つくらい簡単に落とせそうなメンバーによる治療を一身に受けてたとは……
「けど……ナルダバートによって貫かれたソフィーちゃんの傷は異様に治りが遅かった。
それに加えて、普通なら即死でもおかしくない致命傷だった事もあって、さっきも言ったように私達の必死の治療の最中ソフィーちゃんはゆっくりと息を引き取ったわ」
でも、私はこうしてここにいる。
ということは、やっぱりそのあとマリア先生が死者蘇生を行ったのかな?
「っ……ソフィーっ!!」
「ごめんね、痛かったよね、怖かったよね……」
「俺達が側にいながらっ!」
お、お父様、お兄様……せっかくの整ったお顔が後悔と悲しみに染まってるんですけど。
そんな顔をされるとなんていったらいいかわからないし、結果としてこうして生きてるんだからそんな顔をしなくても……
「貴方達」
「「「……す、すみません」」」
「よろしい」
「ふふっ」
さすがはお母様! ルスキューレ公爵家の真の支配者の名前は伊達じゃない!!
「それで、どうなったのですか?」
「ソフィーちゃんが息を引き取った直後……突然ソフィーちゃんの亡骸が光に包まれて消滅したの」
「ほぇ?」
ひ、光に包まれて消滅!?
「ソフィーちゃん、魔王城に乗り込む直前のやり取りを覚えてるかしら?」
「魔王城に乗り込む直前?」
お母様が魔王城の扉をぶっ飛ばして、そのまま……
「……あっ」
「そう、ルミエ様の提案でやった事があったでしょう?」
そうだった。
みんなで魔王城に乗り込む直前……ルミエ様が提案して、お母様達が全員賛成したから私のユニークスキル・並列存在を使ったんだった!
私のユニークスキル・並列存在は、自身の
マリア先生やルミエ様いわく、普段は無意識で行なってる魔素の操作を任意で行うことは非常に難しいらしく、まだ私はできないから全魔力の1%の分体を作って王都の公爵邸に避難させてた。
「ソフィーちゃんの亡骸が光で包まれて消滅したかと思うと、次の瞬間には公爵邸に避難していた無傷の分体がその場に現れたのよ」
「その時の記憶が混濁しているのは、ソフィーが気を失っていた事と、まだ並列存在に慣れてないからね」
「なるほど……」
どういう原理かは不明だけど、事前に並列存在で分体を作ってたおかげで助かったってわけか。
うん、やっぱり事前準備は大切だわっ!!
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