第94話 私だったのっ!?

「1週間……!」


 なるほど、だからお母様達のこの反応か……うん、それなら納得だわ。

 さすがにそんなに寝込んでたなんて予想外だった!!


「ふふっ、その様子だと大丈夫そうだけど、とりあえず診察するわよ」


「わかりました」


 しかし、まさか1週間も寝込んじゃうなんて!

 無断でダンジョンに行って、心配をかけちゃったばかりなのに……また心配をかけてしまった……


「さて……そういう訳だから、男共は外に出てなさい」


「「「っ!?」」」


「何をそんなに驚いているのかしら?

 いくら家族といってもソフィーちゃんは女の子なんだから当然でしょう」


「なっ!? マリア様、貴女はやっと目覚めて心細い思いをしているソフィーの側から離れろと言うのですかっ!?」


「そんなっ! いくら師匠でも横暴ですよっ!?」


「ソフィー、いきなり診察なんて不安かもしれないけど安心して。

 お兄様達がソフィーの側についてるからな!」


 当然のようにベッド横に寄せた椅子に座ってるし、これからマリア先生に診察してもらう私の部屋に居座るつもりじゃん!

 けどまぁ……うん、これでこそ過保護で残念なお父様とお兄様達だ。


「あの……大丈夫なので部屋の外で待っていて欲しいです」


「「「ッ!?」」」


 えっ、いや、そんな息を呑みながら驚愕に目を見開かれても困るんですけど……


「だ、だが……」


「早く外に出なさい!」


「「「……はい」」」


 おぉ〜、お母様の一喝でトボトボとお父様達が部屋の外に出て行った。

 さすがはお母様だわ。

 でも、あんなにしょんぼりされると、なにか悪いことをしてるようでちょっと罪悪感を感じる……






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「こほん……それでマリア様、ソフィーの容態はどうだったのでしょうか?」


「「……」」


 診察が終わって、部屋に入ってきてもらったら……なんでそんなに深刻そうな雰囲気!?


「……別に何も問題は無かったわよ。

 ただ、まだ完全に蓄積されたダメージが抜け切ってないようだから、暫くは安静にした方が良いとは思うけれど」


「「「ハァ〜……」」」


 息ピッタリで心底安心したような感じの安堵の溜息を吐いてるし、部屋を出たあとでいったいどんな話をしてたのやら……


「う〜ん」


「ソフィーちゃん、どうかしたの?」


「お母様……いえ、ただどうしてあの状態から助かったのか不思議で」


 ナルダバートに貫かれたお腹の傷。

 内臓もぐちゃぐちゃになってたはずだし、アレは確実に致命傷だったはず。

 血も流し過ぎてたのに……あの状態からどうやって助かったのか謎だわ。


「どうやら気を失っていたせいか、記憶が少し混濁しているようね」


「っ! ルミエ様っ!!」


 よかった。

 お母様達と一緒に来てくれなかったから、私が寝てる間になにかあったのかと思った。


「ふふっ、遅くなってごめんね。

 ちょっと苦情を言いに行ってたのよ」


 苦情?


「それより、もう大丈夫なの?」


「はい、まだ蓄積されたダメージ? が抜け切ってないようで、ちょっと身体が重いですけど、もう元気です!!」


「ルミエ様、記憶の混濁とは?

 ソフィーちゃんは大丈夫なのでしょうか!?」


「ユリアナ、少し落ち着いて。

 あの時、ソフィーは気を失っていたでしょう? だから、しっかりと記憶が継承されなかっただけよ」


「あの……」


 あのときって?


「私が気を失ったあとにいったいなにがあったのですか?

 それに、あの後どうなったのかも気になります」


「そうね、ソフィーが気を失った直後から説明するとなると……」


 えっ? なに?

 ルミエ様だけじゃなくて、お母様もお父様もお兄様まで一気に表情が曇ったんだけど!?


 なにこの、まるで誰かが亡くなっちゃったかのようなシリアスな雰囲気!

 あれ? そういえば、皇帝陛下とガルスさんがいないけど……ま、まさかっ!?


「ソフィーちゃん」


「は、はい!」


「心して聞いてほしいのだけど……実はあの後……」


 ま、まさか本当に……


「ソフィーちゃんは一度死んだの」


「……ほぇ?」


 死んだ? 誰が? 私が??

 私が、一度死んだ……


「えぇっ!?」


 死んじゃったのは皇帝陛下とガルスさんの2人じゃなくて、私だったのっ!?

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