第96話 大賢者の提案
「ん? そういえば……」
「ソフィーちゃん、どうかしたの?」
「お母様、いえ……ただ、ナルダバートも分体がどうとかいってたな〜と」
「あぁ、アイツも分体を作れるのよ。
以前ソフィーの並列存在と同じような権能を有している人を知ってるって話した事があったでしょう? その一人がアイツ。
けどまさか、あそこまで……油断してたわ、ソフィーごめんなさいね」
「い、いえ! それよりも! どうして公爵邸にあった分体があの場所に現れたのでしょうか?」
「あぁ、それなら簡単よ。
本体だった肉体が死亡した事によって分体だった肉体が本体となり、魂に引き寄せられて転移してきたってわけ」
さすがはルミエ様、なんでも知ってる!!
「ふふっ、流石に何でもは知らないわよ」
またまた〜、ルミエ様ったら謙遜しちゃって!
「まぁ、そう言うわけでソフィーちゃんは一命は取り留めて、肉体的な傷や怪我は回復したものの……本来なら死んでいるほどダメージ自体は新しい肉体にも引き継がれて、結果として1週間もの間寝込んでいたのよ」
「なるほど……」
まぁ、1週間も寝込んじゃったのは想定外だったけど……マリア先生のいう通り、本当なら死んでる大ダメージを受けちゃったわけだし。
生きてるだけラッキーだった!
「世間にはどういう風に発表されたかはもう聞いたかな?」
「よっ! 無事に目が覚めたみたいで何より」
「皇帝陛下! ガルスさん!」
まったく2人とも今までどこに行ってたのやら。
最初2人がいなかったから、お母様達の暗い面持ちから2人になにかあったのかと勘違いしちゃったじゃないですか!
まぁ、お母様達の表情が暗かった原因は私だったわけだけど……
「お2人もお元気そうでなによりです!」
「まぁ、俺もコイツも強いからな」
おぉ〜、さすがは伝説に語られる英雄にして最古の現役Sランク冒険者。
すごい自信!
「それよりも、眠っていた間に今回の一件の顛末がどう世間に発表されたのか知りたい?」
「っ! 知りたいです!!」
気が付いたら1週間も経ってたり、自分が一度死んだって聞かされたりして二の次になってたけど、そういえばまだ今回の一件の顛末を聞いてなかった!!
皇帝陛下、ナイスです!
「あはは、わかったよ。
じゃあ、まずは王都に侵攻してきていた魔王ナルダバートの軍勢との防衛戦についてだけど……」
「ルスキューレ公爵家、公爵家と親交のある大賢者である私とそこの皇帝。
そして王国騎士団がそれぞれ、四方で敵軍を率いていた最高幹部の五死を撃破して防衛に成功と発表されたわ」
「そんでルスキューレ公爵家が誇る剣帝、賢者、炎姫。
これまた公爵家と親交のある冒険王と、公爵家に応援要請された今話題のホープであるAランク冒険者ルミエ、ソフィーのたった6名で魔王ナルダバートの本拠地へと攻め込み。
命をかけたソフィーとナルダバートの一騎打ちでの激闘の末、ソフィーが魔王ナルダバートを打ち倒したと正式に発表された」
「マリアさん、ガルスさん……」
ほほう、つまりお父様は約束通りちゃんと王都を守ってくれたというわけですねっ!
「ふふっ、さすがは私のお父様です!」
「ッ──!! ソフィーっ!!」
「むへっ!?」
く、苦しい……
「やめなさい!」
おぉ〜、お母様の見事な一振りがお父様の頭にスパーン! って決まった!
ここは私もビシッと……
「つ、つい、ソフィー……病み上がりなのにごめんね……」
うっ、お父様にそんな顔をされると強く出られない。
「そんなに心配しなくても大丈夫です。
なにせ、私はお父様の子供ですから!」
「ソフィーっ!」
また抱きつかれちゃったけど……今回は苦しくないし、お父様が満足するまでこうしておこう。
「はぁ……ソフィーちゃんはお父様に優しすぎるわ」
「父上! ずるいですよ!!」
「早く代わってください!!」
まぁ、それはさておき!
とりあえず魔王ナルダバートを打ち倒して、冒険者ソフィーの名を上げるって目論見は無事に成功したようで一安心だわ!!
問題は……公爵令嬢ソフィアを生贄に捧げろといった魔王ナルダバートを冒険者ソフィーが打ち倒したって点。
これで更に名前が知れ渡ったであろう冒険者ソフィーと私を結びつける人が出てくるだろうけど……
まぁ、それはこれから並列存在をうまく使って誤魔化すしかないかな?
同時に違う場所で公爵令嬢ソフィアと、冒険者ソフィーが存在してたら私が謎の仮面冒険者ソフィーだって考える人も少なくなっていくはず!!
私が冒険者ソフィーだってことは国とか貴族とかに介入されても厄介だから、私が最強に至るまでは明かすわけにはいかない。
然るべきタイミングで切るべき私の手札!!
「むふふっ!」
とりあえず! 冒険者ソフィーの名前を上げることはできたし……なにより1週間寝込んじゃってたおかげで素晴らしい副産物があった!
「ソフィーちゃん、何を考えているのかは大体わかるけど……残念だけれど、ソフィーちゃんのステータス鑑定の儀式は今回の一件で延期になってるから、後日日程を調整してしっかりと行われるわよ?」
「ぇ……」
な、なんですとっ!?
「うぅ〜、せっかく今回のどさくさに紛れて流れたと思ったのに!」
「そんなハズないじゃない」
「そんな……」
確かにステータス鑑定の儀式は例外なく全ての子供が受ける習わしで、強制ではないしろ義務みたいなものだけども!!
「ふふっ、落ち込んでるところで申し訳ないけど、実は私からソフィーちゃんに1つ提案があるの」
「提案ですか?」
マリア先生の……大賢者の提案っていったい……
「えぇ、今までは公爵令嬢、さらには第一王子の婚約者という立場もあって難しかったけど並列存在があるのなら問題ないわ。
それにソフィーちゃんの最強を目指すって目標を達成するための手助けにもなるはずよ。
ソフィーちゃん」
「は、はい!」
「我が魔導学園都市王国が誇るオルガマギア魔法学園に入学する気はないかしら?」
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