第61話 王家の遣い
「それでですね。
あのダンジョンは……なんと! 魔法神様がお創りになられたダンジョンだと判明したのです!!」
「ふふふ、流石はソフィーちゃんね!
すごいわ!!」
「えへへ〜」
お母様に褒められて、頭を撫でられちゃった!
「うんうん、ユリアナの言う通りだ。
本来なら最奥まで辿り着かなければ判明しないとされる正式名称まで明らかにしちゃうなんて!」
「魔法神の休息所か〜」
「これは大発見だぞ!」
「むふふっ!」
もっとみんなして、私を褒めてください!!
「そのあと魔法で空を飛んで第一階層の最奥まで行くと、そこに巨大な湖があって。
ルミエ様がいうには、あの湖と草原は魔法神様の別荘がある場所がモデルになっているそうなんですよ!」
「ふふふ、それは凄いわね!」
「そうなんです! それに、あの湖には水竜や水の精霊さん達が住んでいて。
精霊公って最高位の水の大精霊アクアさんが、湖の水質を管理しているのですご〜く綺麗なんです!!」
「精霊公?」
「ふむ、聞いたことがないね。
アルト、エレン、2人は知っているか?」
「残念ながら私も初耳です」
「俺も初めて聞く種族名ですね」
ふっふっふ〜! やっぱり、思った通りだわ!
お母様やお父様、お兄様達ですら精霊公の名前を聞くのは初めてだったみたいだ。
まっ、精霊について詳しく記されてる本にも、さらには大賢者たるマリア先生の授業でも出てこなかったし。
いかに公爵、公爵夫人、賢者、Sランク冒険者であるお兄様達とはいえ、知らなくてもむりはない!
実際、私も昨日までは知らなかったし……
「こほん、精霊とは下から順に最下級、下位、中位、上位、最上位と続き、その最上位精霊のさらに上に君臨するのが精霊公なのです。
ちなみに、私達の常識でいうと上位精霊からは大精霊と呼ばれる存在だそうです」
まぁ、これは全部ルミエ様とアクアさん本人の受け売りだけど!
「ふふふ、じゃあそのアクアさんってお方は凄いお方なのね」
「そうなんです!
なんでも魔法神様から直々にあの湖と第一階層の管理を任されているそうです」
「なぁ、お前達。
ソフィーの言う通りならば、精霊公って……」
「えぇ、凄いなんてもんじゃありませんよ」
「言ってしまえば、一種の神とすら呼べる存在ですよ」
「……」
お父様とお兄様達がなにやら小声でコソコソと話してるけど……まぁいいや!
そんなことより!!
「アクアさんいわく、第二階層からは難易度が跳ね上がるらしく、今の私では確実に死ぬことになるって忠告されたので先に進むのは断念して湖で遊ぶことになったのですが。
初めて水着を着てですね、途中でガルスさんが現れたりとアクシデントはありましたが楽しかったです!!」
「「「……ソフィー、今なんて?」」」
ん? お、お父様にお兄様??
「えっと、楽しかったです?」
「その前!」
「ガルスさんの前!!」
ガルスさんのまえ?
「あぁ! 水着を着て、ルミエ様達と一緒に湖で遊んだってところですか?」
「「水着っ!?」」
「え、はい、そうですけど……」
「じゃ、じゃあソフィーはそのガルスさんに水着姿を見られたと?」
「うぅ、そ、それはそうですけど」
もう! アルトお兄様のせいで恥ずかしかった記憶が蘇っちゃったじゃん!!
「ガルス様……いや、ガルス! あのクソ野郎がっ!!
たとえ師匠だろうが、オルガラミナ武術学園の理事長だろうが関係ない!
ソフィーの水着姿を見ただなんて……抹殺してやるっ!!」
「エレンお兄様っ!?」
いきなりなにを!!
「父上! 今すぐダンジョンに向かう許可を!!」
「……」
「父上!」
「しっかりしてください!!」
「2人とも落ち着きなさい」
「「「っ!?」」」
あ、あのお父様が!
いつも暴走しがちで残念なお父様が! 冷静にお兄様達を嗜めたっ!?
「今はガルスなんてどうでもいい」
「どうでもいいって……」
「ソフィーの水着姿を見たんですよっ!?」
「そう、そこだ。
つまり私達はソフィーの水着姿を……ソフィーの人生で初めての水着姿を見逃してしまったという事なんだぞっ!!」
「「っ!!」」
「その時、ソフィーがルミエ様達と一緒に湖で遊んでいる時にその場にいればっ……!!」
「そ、そんな……」
「ソフィーの、人生初の水着姿を……」
えっ? ちょ、ちょっと待って!
なんで3人して愕然とした顔で蹲ってるんですかっ!?
「これも全ては忌々しい王家のせいだ」
「王家の?」
「せい?」
「そうだ。
あの時、魔王が動いたから王宮に来いなどと言うくだらない王命さえ無ければ、私達はソフィーの元まで駆け付けていたはず。
つまり! ソフィーの水着姿を見逃す事はなかった!!」
「「っ!!」」
「ふ、ふふふ……エルヴァン、この恨みは大きいぞ」
「もういっその事、謀反でも起こしますか?」
「そうだな、我らルスキューレ公爵家を嘗めている王家など切り捨てて独立でもしましょうか?」
謀反! 独立っ!?
なんかめっちゃ物騒な方向に向かってるんですけどっ!!
「ふふふ、さぁソフィーちゃん、おバカなお父様達は放っておいもっとソフィーちゃんのお話を聞かせて?」
「お母様……でも」
「大丈夫よ、ほどほどでちゃんと止めるから
でもね、確かに独立だなんてちょっと物騒な考えに向かってるようだけど……最近の王家はルスキューレ家の事を軽く見過ぎなのは事実だし、少しお灸を据える必要があるわ」
お、お母様まで……!!
「むっ?」
この気配は……
「お止まりください!
いくら王家の遣いとて、このような事は許されませんぞ!!」
「どけっ! 一介の使用人風情が!!
僕は国王陛下より王命を授かって来た近衛騎士団の、それもセドリック第一王子殿下直属の騎士だぞ!!」
バンっ!!
やっぱり、コイツか……
「ここにおられましたか。
ルスキューレ公爵家の皆様、国王陛下の王命により今日こそは王宮へとご同行していただきますよ?」
無断で扉を開け放って、ズンズンと優雅さのかけらもない所作でリビングに押し入ってきた赤い髪に瞳の少年。
ガイル・アレス伯爵令息が偉そうに笑みを浮かべながらいい放った。
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