第46話 初ダンジョンっ!!

「こちらがこのダンジョンへの入り口になります」


 おぉ〜! ここが、このダンジョンの入り口!!

 外観は遠目からなら大規模な神殿って感じだけど……こうして近くで見てみると作りとしては、どっちかと言うと神殿よりも教会の方が近いかな?

 入り口も立派で、巨大な両開きの扉になってるし。


「ふふっ!」


 まぁ、なんにせよ! この入り口を通ったら……ついに! 私は人生で初のダンジョンに足を踏み入れることになるっ!!


「っ! 扉が!!」


 ダンジョンの入り口である巨大な扉が勝手に開いたっ!!


「ふふふ」


「ははは、ソフィー殿はダンジョンは初めてですか?」


「っ!!」


 ど、どうしてそれを……


「ダンジョンの入り口がこうして自動的に開く所は結構あるんですよ。

 尤も、扉すらない場合が一番多いのですが」


 な、なるほど……つまりは、扉が勝手に開いたことに反応した私はダンジョン初心者だってことか。

 むぅ〜、これはなんでもそつなくこなす、クールでカッコいい謎の仮面冒険者たる私のイメージを崩しかねない事態! 次からは気をつけなければっ!!


「我々騎士団で入り口付近を一度調査した結果。

 第一階層は草原が広がっているだけで、未だ魔物の確認もされていません」


「ふむふむ」


 つまり第一階層は安全領域セーフティーゾーンになってる可能性が高いと。


「わかりました。

 アレス伯爵、ここまでご案内ありがとうございました」


 本来なら王国騎士団の副団長にして、ここの指揮官でもあるアレス伯爵が入り口まで冒険者を案内するなんてことはしないだろうに……


「いえいえ、私も新たな英雄お2人とお話しできて光栄でした。

 第一階層が安全領域となっている事は他のダンジョンでも見られる事ですが……調査しているのは扉から入ってすぐの入り口周辺のみ。

 出現したばかりで殆ど何も判明していないダンジョンですので十分にお気をつけて」


 嫡男であるアレス伯爵令息、ガイルはなんの躊躇もなく淑女の腕を掴み上げて組み伏せて。

 あまつさえ、得意げな顔をするようなヤツだけど……父親であるアレス伯爵は紳士だっ!!


 まぁ、アレは私の前世の記憶にある乙女ゲームの話で、実際にガイルがあんな感じになるとは限らないけど。

 う〜む、なんで乙女ゲームではこのアレス伯爵に育てられてガイルはあんな残念な青年に成長することになったんだろ? 謎だわ。


「長くても今夜には一度帰還するつもりですので、また後でお会いしましょう」


「ええ、お待ちしております」


 本当なら何日もかけてダンジョンに潜って慎重に調査や攻略を行うべきなんだろうけど……

 さすがに無断で外泊なんてすると残念なお父様やお兄様達がどんな暴走をするかわからない。


 今日はダンジョン攻略は夜までにして、一度帰ってお父様達に数日間ダンジョンに潜る許可をもらってからまた明日来るしかない。

 っとまぁ、細かいことを色々と考えるのはこのくらいにして……


「では!」


 人生初のダンジョンへ、いざ行かんっ!!


「ふふふ、走ると危ないわよ」


「大丈夫です!!」


 こう見えて、私は冒険者ギルドがS級危険領域に指定している魔の森を踏破した実績がある!!

 確かに年齢は10歳でまだまだ子供だけど、ただの10歳児とは違うのです!!


「あらあら、走っていちゃったわ。

 ふふっ、まったくソフィーったら……」


「ははは、ルミエ殿は行かれないので?」


「当然、私も行くわよ。

 けどその前に……アレス伯爵」


「っ!!」


「ソフィーの邪魔をしたら……ふふっ、じゃあ私もそろそろ行くわ。

 また後で会いましょう」


「ルミエ殿、貴女はいったい……」


 イストワール王国騎士団が副団長にして、この場の指揮官であるアレス伯爵が悠然とダンジョンの扉へと消えていった美女の背中に呟きを零し……一息吐いて踵を返す。


「はぁ、当然把握しているとは思うが……流石にこれは一度連絡をする必要があるか。

 それにしても……数百年ぶりに特別推薦試験でAランク冒険者になってしまわれるなんてお転婆過ぎですよ、ソフィア・ルスキューレ様」

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