第45話 伯爵、登場っ!?

「部下が失礼しました」


 どうして……どうしてこんなことになったんだろう?


「……」


 白を基調とした制服をしっかりと着こなし、目の前で人のいい柔らかな笑みを浮かべる1人の騎士。

 グレンさんから王都近郊に突如として新たに出現したダンジョン調査の緊急依頼を受けて、転移で駆けつけただけなのに……


「私は王国騎士団が副団長バリアード・アレスと申します。

 現在、ここの指揮をとっている者です」


 なんで、案内された先にこの人が!

 私を冤罪で断罪するセドリックの側近の1人、ガイル・アレス伯爵令息の父親であるアレス伯爵と対面することになるなんてっ!!


 というか! これは結構ヤバいことになってしまった。

 ガイルの父親とかそんなこと以前に、アレス伯爵とは普通に何回かあったことがある。

 私がルスキューレ公爵家のソフィア・ルスキューレだってバレるんじゃ……


「如何なされましたか? ソフィー殿」


「い、いえ、なんでも……はじめまして、アレス伯爵。

 私はAランク冒険者のソフィーです」


 い、いや! 弱気になるな!!

 この仮面は認識妨害の効果もあるマジックアイテムだし、いくら相手が面識があるアレス伯爵でもそう簡単にバレることはないっ!! ハズ……


「同じく、Aランク冒険者のルミエよ」


「もちろん、存じております。

 なにせ貴女方2人は数百年ぶりに特別推薦試験においてAランクまで上り詰めた方々。

 我らが王国騎士団でもお2人の噂で持ちきりですよ」


 あぁ〜、なるほど。

 さっきここまで案内してくれた騎士さんがいってた噂ってそれのことか。

 そういえばグレンさんも私とルミエ様の話で盛り上がってるとかいってたっけ。


「何でも、お2人ともAランク試験の対戦相手である下位悪魔レッサーデーモンを文字通り瞬殺したとか。

 新たな英雄にお会いできて光栄ですが……ソフィー殿、もしや何処かでお会いした事でも?」


「えっ!! い、いや! そんなことは……はじめてお会いしたと思いますよ?

 な、なんでですかっ!?」


「い、いえ、ただ私の事をアレス伯爵とお呼びになられましたので」


 っ!! やっ、やってしまった〜っ!!

 いきなり私を断罪する攻略対象の父親と対面してついテンパって……!

 うぅ、ど、どうすれば……!!


「ふふふ、もうソフィーったら可愛いんだから! 焦りすぎよ。

 それよりも、どうして私達をここに案内したのかしら?」


「私の事をご存知の理由は説明したくないと……いえ、冒険者であるソフィー殿の事を詮索するのはルール違反でしたね。

 申し訳ございませんでした」


「い、いえ、お気になさらず」


 さ、さすがはルミエ様っ!!

 あの窮地を簡単に乗り切ってしまうなんてっ!! すごいですっ!


「それで、お2人をここにご案内した理由ですが。

 このダンジョンにはまだギルドの受付がありませんので、我々がダンジョンに一般市民が入らないかの監視及びギルドの依頼を受けてこのダンジョンの調査に訪れた冒険者の点呼をとっているのです」


 へぇ〜、なるほどね。

 数百年ぶりに特別推薦試験でAランクになった冒険者。

 既に騎士団内でも私達の話で持ちきりらしいし、そんな存在を国が調査しないハズがない。

 あわよくば自国の勢力に取り込みたいだろうし。


 まぁ、いくら調べてもわかるのはせいぜい私達の背格好くらいだろうけど。

 急遽私達についの情報を集めたは良いけど、その情報が末端までは届いていなかった。

 だからさっきの騎士さんに私達のことを知っているであろう指揮官であるアレス伯爵の所まで案内されたってわけか。


「まぁ尤も、点呼と言ってもこちらの用紙に冒険者方のお名前を記載するだけなのですが。

 Aランク冒険者ソフィー殿、同じくAランク冒険者ルミエ殿。

 こちらの名簿はこの陣営で管理しておりますので、ダンジョンからお帰りになる際には一声おかけください」


「わかりました」


「わかったわ」


「では、こちらへ。

 早速ダンジョンの入り口までご案内します」

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