第47話 魔法神の休息所
開け放たれたダンジョンの入り口。
巨大で立派な扉をくぐると……
「おぉ〜っ!!」
吹き抜ける穏やかで暖かな風に、頭上に広がる青い空から降り注ぐ柔らかな日差し!
目の前に広がるは、どこまでも続くような広大な草原っ!!
「これが、
お兄様達の授業でも習ったし、色々と話を聞いたりもしてたけど…… すごい、すごいっ! 本当に空が広がってて、太陽があって! 別世界みたいっ!!
う〜ん、それにしてもなんでダンジョンの中に入ったハズなのに、外にいるみたいなんだろ?
気になるっ!!
「〝探究者〟発動っ!」
私のユニークスキル〝探究者〟は、ありとあらゆる事象を解き明かし、理解することで己のものとする力。
それに加えてほとんど常時発動させてる思考能力とか思考速度、暗算能力を底上げするエクストラスキル〝叡智〟を合わせて、ダンジョンの謎を解き明かしてや……
『ぴろん!
個体名ソフィア・ルスキューレが迷宮に干渉、解析に挑戦……権限が足りないため失敗しました』
「っ!」
なんか変な声がっ!!
なにこれ、なにこれっ!? ルミエ様に加護をもらったときに聞こえた世界の声ってやつに似てるけど……今まではこんなことなかったのに!!
『ぴろん!
迷宮の創造者ーーーが個体名ソフィア・ルスキューレの挑戦を賞賛しました。
褒美に迷宮の正式名称が開示されます』
『ぴろん!
「魔法神の休息所……」
これが、この神殿ダンジョンの正式名称か〜……
「ん? えっ? ほえっ!?」
ま、まままま魔法神っ!?
「ふふふ、可愛らしい声を出してどうしたの?」
「ルミエ様っ!! 遅いですよ!」
「ごめんなさい。
ちょっと釘を刺して来たの」
釘? それはいったいどういう……って、それどころじゃないっ!!
「ルミエ様、ルミエ様! 聞いてください!!
今このダンジョンを解析しようとしたんですけど、そうしたら権限が足りなくて失敗しちゃって。
でも迷宮の創造者に賞賛されて正式名称がっ!!」
「ソフィー、ひとまず落ち着きましょう。
まずはゆっくりと大きく息を吸って」
「すぅ〜」
「今度はゆっくりと吐いて」
「はぁ〜」
「ふふっ! 落ち着いたかしら?」
「は、はい、取り乱しました、ごめんなさい……」
あぁっ! あんなにも子供みたいにはしゃいじゃうなんて恥ずかしいっ!!
うぅ、穴があったら入りたいっ……!!
「それで、どうしたの?」
「そ、そうでした! 実はこのダンジョンの正式名称が判明したのですが」
「あぁ、魔法神の休息所ね」
「っ! な、なんでそれをっ!?」
「ふふふ、私にはこの迷宮に干渉する権限があるの」
「ええっ!! さ、さすがはルミエ様! すごすぎますっ!!」
私は権限が足りなくてダンジョンの解析に失敗しちゃったのに!!
「尤も、このダンジョンはあの人が自ら創ったモノ。
私ですら少し干渉できる程度だけれど」
「っ!? ル、ルミエ様でもですか……?」
「ふふっ、そうよ。
この世界には強い存在がたくさんいるからね」
な、なんか最強になるってことが途方もないことな気がしてきた……い、いや! 弱気になるなっ!!
私はソフィア・ルスキューレ! 孤高な悪役令嬢にして、ルスキューレ公爵家の娘なのだ!!
確かに今はまだまだだけど、いつか最強になってやるわっ!!
「ふふふ、それでソフィーはどうしてそんなに興奮していたの?」
「だって魔法神様ですよっ!?」
「魔法神、ね」
「魔法神ティフィア様といえば、世界中で最も信仰されている主神!」
正式な歴史書や、子供向けの絵本にも登場する魔法神様の神話は誰もが知ってる超有名な話!!
現在も七柱存在する魔王の
大賢者であるマリア先生や、現人神と称される帝国の皇帝陛下が活躍して、伝説に語られるようになったきっかけ。
約400年に実際に起こった聖魔大戦と呼ばれるこの戦争において、強大な魔王は瞬く間に世界の半分を支配下に収めた。
圧倒的な魔王の力の前に、大いなる罪を犯してしまった人々はなす術なく瞬く間に窮地に立たされる。
しかし、罪を犯したのは時の権力者達であり、無垢な人々が魔王と罪人達との戦いに巻き込まれて命を落とすことを憂いて地上に舞い降りた魔法神様は怒り狂う魔王を止めるために人々と共に魔王に立ち向かい……魔王を説得することに成功する。
そののち、魔法神様の説得を受けて和解した魔王は罪人達に裁きを下すことで怒りを鎮めて世界に平穏が戻った。
「小さい子供でも知っている女神様です!」
ありとあらゆる全ての魔法を操り、その力はまさしく圧倒的!!
大賢者たるマリア様や現人神の皇帝陛下をして、自分達のように伝説に語られる存在全員で戦いを挑んでも勝負にすらならずにあしらわれると断言する程に強い超凄いお方!!
海の向こうには魔法神様が治める楽園があるって御伽噺は子供に聞かせる話として定番で、誰もが一度は聞いたことがあるくらい有名だし!
最強を目指す私の目標たる偉大な女神様なのだ!!
「そんな魔法神様のダンジョンなんて、驚かない方がおかしいです!!」
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