第17話 お父様がカッコいいっ!!
圧倒的な力で真正面からねじ伏せるのもいいけど。
こんな感じで優雅に言葉で追い詰めて論破してやるのもカッコいい!
むふふっ! 私はそのどちらも兼ね備える……静と動を合わせ持つ公爵令嬢なのだ!!
さぁ! 私の邪魔をしてくれたセドリック殿下よ!!
自身の犯してしまった失態を思い知れ!
そして! その整った顔を青褪めさせて、必死に私に許しを乞うがいいっ!!
「あはは、お恥ずかしい」
「……えっ?」
お、お恥ずかしい?
国王陛下とフローラ様ですら驚愕に一瞬だけ目を見開いて息を呑んでたのに……何でやらかした当人が朗らかに笑ってるの?
「1ヶ月ぶりにソフィア嬢とお会いできると思うと、嬉しくてつい居ても立っても居られませんでした」
「っ!?」
今なんかゾワッでしたっ! 鳥肌が立ったっ!!
勝手に私の部屋に押し入って来たくせに悪びれることもなく、いけしゃあしゃあと!
なんなの? なにコイツ?
い、いや! 動揺するな私!!
深呼吸、深呼吸、ふぅ〜……よし!
私はソフィア・ルスキューレ、いずれ最強に至る者っ!!
この程度のことで屈する私ではないのだよ!
こんな温室でぬくぬくと、ぬるま湯に浸かって育ってきたクソガキ王子なんて簡単に論破して見せる!!
「ふふふ、そうですか。
つまりセドリック第一王子殿下は感情に身を任せ、身内でも婚約者でもない女性の部屋に押し入るのですね」
これでどうだ!
ふふんっ! さっきまでの遠回しな皮肉が効かないのならば、直接爆弾を叩き込んでやるまでっ!!
「ソフィア嬢、それは聞き捨てなりません。
僕は見ず知らずの女性の部屋に押し入るような、紳士の風上にも置けないような無礼極まりない者ではありません」
「えっ……」
な、なにいってんの?
「ですが、先程は婚約者とは言え、ソフィア嬢のお部屋に勝手に入ってしまったのは事実。
それで勘違いさせてしまったのですね……申し訳ありません」
婚約者? そういえば、私の部屋に押し入って来た時もそんなことをお付きの人に叫んでたけど……
「婚約者……」
ま、まさかとは思うけど……それって私のことじゃないよね?
だって過保護なお父様からも、お兄様からも、お母様からもそんな話は何も聞いてないし。
そもそも、セドリック殿下との最初の顔合わせの席で倒れたから、私とセドリック殿下がまともに顔を合わせたのは今日が初めて。
倒れちゃった私のあとにも他のご令嬢達と会ってるはずだし……うん! ないないない、さすがにそれはないわ〜。
「ですがご安心を。
いくら気が急いていても、婚約者であるソフィア嬢以外の女性の自室に入るなんて事はしませんよ」
「……私が、セドリック第一王子殿下の、婚約者?」
「はい!」
うん、セドリック殿下が年相応の朗らかな笑顔を浮かべてるのはいいとして……誰がお前の婚約者じゃっ!!
「うぅ、お父様……」
もうやだコイツ! 話が全然通用しないっ!!
しかも、なぜか私のことを婚約者だっていってるし……なんか怖い、言い知れぬ狂気を感じる!
「エルヴァン、これはどう言う事だ?
セドリック殿下との婚約の打診は断ったはずだが」
「いや、それがその……」
「さっさと言え! いくら貴様でもソフィーを泣かせたからには容赦はしないぞ」
お父様っ!? べ、別に泣いてないもんっ!!
というか! 魔力が漏れ出て、応接室の温度が低下してますっ!!
「婚約者はソフィア嬢以外にあり得ないと言って聞かんのだ」
「で?」
「いや、だからそのぉ……あの顔合わせ以降、何度面会の打診をしても断られてるだろ?
でも、一度会わせればソフィア嬢も乗り気になってくれるかなぁ〜と。
そうなれば良いなぁ〜と、思いまして、はい」
「ユリアナ、ソフィアちゃん、ごめんなさいね。
私は止めたのだけれど……」
なるほど、国王陛下の威厳が消滅してる件は置いておくとして。
それで事前の約束もなしにルスキューレ邸に押しかけて来たってわけね。
「ふむ、その結果がこれか。
ハッキリ言おう、セドリック殿下とソフィーの婚約はルスキューレ家にとって一切メリットがない。
そして何より! ソフィーが望んでいない以上、その婚約を受ける事はない!!」
おぉ〜! お父様がカッコいいっ!!
「何故ですかっ!?
僕との! 王家との婚約はルスキューレ家にとっても名誉な事のはずです!!」
「殿下、名誉などでは誰も救う事はできないのですよ。
それに言ったはずです、ソフィーが望んでいない以上は婚約を認めるつもりはないと。
ソフィーとの婚約を望むのならば、ソフィーを振り向かせて見せなさい」
「っ!!」
「お父様……」
むふふ! さすがは私のお父様!!
「ソフィーの体調が悪くなったようなので今日はこれでお帰りください、セドリック第一王子殿下」
「……わかりました」
「エルヴァン、もし次このような事があれば私は家族と共に領地へと帰るからな」
「はい……」
「だから止めておくように言ったではないですか」
「申し訳ありませんでした……」
ナチュラルに国王陛下が謝ってるこの空間って地味に凄いな〜なんて、現実逃避しながらどうでもいいことを考えている間に……
「必ず、必ずソフィア嬢を振り向かせて見せます!」
っていい残して、突然やって来たセドリック殿下は帰って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます