第9話 修行開始
「お、さま……お嬢様!」
「んぅ〜……」
「起きてください、朝ですよ!」
「やっ」
まだ眠たいから寝るぅ〜……
「今日から特訓を始められるのでしょう?」
特訓? 特訓、特訓……
「特訓っ!」
そうだった!!
大事をとってマリア先生に診断してもらってから1週間。
今日からやっと特訓……いや、修行が開始するんだった!!
「ふふ、おはようございます」
「おはよう、ファナ」
「ではお嬢様、こちらへ」
「は〜い!」
冒険者になるのなら本当は朝の支度も自分でできるようにならないとダメなんだけど……こればっかりはファナが頑なとして譲らなかったから仕方ない。
まぁ、1週間前。
お母様に屈し……いや、戦略的撤退をしたあと、ファナもだけどお父様達もお母様もお兄様達も私が冒険者になることに反対してたからなぁ。
これもファナからの無言の抗議なのかもしれない。
まぁ、過保護なお父様達が心配するのはわかる。
けど! エレンお兄様だって冒険者なんだから、みんなしてあんなに反対しなくてもいいのに……
何気にお母様も私に甘いし、そのお母様よりも父様とお兄様達は遥かに甘い。
そんなあまあまなお父様達にあんなに反対されたのは、何気に初めてだったけど……私は負けなかった!
「むふふ!」
冒険者なるって、ごねてごねて! ごねたおして!! お父様達の了承を取り付けたっ!!
まぁ、冒険者なれるのは10歳かららしいから、5年後だけど……
「はい、できました」
「ありがとう、ファナ!
どう? 似合ってる?」
今日はいつものワンピースやドレスじゃなくて、今日から始まる修行用にお兄様達が素材を集め。
お父様が潤沢な資金を注ぎ込み……
そして、私が前世の記憶から知識を提供し!
お母様がデザインして、ルスキューレ公爵家が総力を上げて作り上げた特注の訓練用……じゃなくて戦闘服!!
「っ──!」
「ファ、ファナ! 大丈夫?」
ファナの前でくるっと回って見せたら、なぜかいきなり胸を押さえて蹲ってちゃったんだけど!?
「だ、大丈夫です」
「大丈夫ならいいけど……」
ファナはたまに今みたいな発作を起こすことがあるから心配だけど……前にマリア先生にファナを見てもらった時は何も問題はないっていってたし。
大賢者であるマリア先生とファナ本人が大丈夫っていうならそうなのかな?
う〜ん、でも一回ちゃんとお医者様に見てもらった方が……
「そんな事より!
よくお似合いですよ、お嬢様」
「そう?」
「はい! もう抱きしめちゃいたいくらいです」
「ふふん!」
動きやすい半袖半ズボンに、腰くらいまでのローブっ!
くるっと一回転した時にローブがふわっと広がってカッコいいと私も思ってたんだ!!
前世の記憶にあるラノベでは、貴族の女性は素肌を晒すのはよろしくないって常識がある。
事実、この国でもそうされてるけど……
冒険者であるエレンお兄様や、オルガマギア魔法学園があるオルガ魔導王国に留学してたアルトお兄様によると。
他国では貴族の女性でも普通にミニスカートとか、肌を見せる服を自由に着ているらしい。
なんでも、世界的に見ても有数の長い歴史を誇るイストワール王国は歴史と伝統を重んじている国らしく。
数百年前までは他国でも貴族女性は素肌を見せるのははしたないって考え方が主流だったみたいだけど、今となってはもはや古い考え方なんだとか。
まぁ、何はともあれ!
ルスキューレ公爵家ではお父様が色々な事業を国内外で手広く展開してる事もあって、凝り固まった古い考え方が無くてよかった。
「やぁ、ソフィー。
おはよう」
「アルトお兄様っ!」
「よく似合ってるよ」
「ありがとうございます!」
「あぁっ! ソフィーが可愛すぎる……!!」
とまぁ、アルトお兄様のコレはいつものことだから放っておくとして。
お父様達にも見せないと!
「ファナ、早く行こう!」
「かしこまりました」
さぁ! お父様達に戦闘服をお披露目して、朝ご飯を食べたら……ついに修行開始だ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます