第18話 Sの森⑤

 とりあえず止まっていてもらちが明かないので美優と2人で歩を進めていると他のメンバーを発見する事が出来た。


 美優が声をかけると朱美ちゃんが駆け寄って来て2人抱擁し喜びあっている。


「本当心配したよー。何処行ってたの?」


 朱美ちゃんは美優の両肩を持ちながら体を揺らす。


「ちょっとちょっと朱美、痛いから。だいたいどっか行ったの朱美達でしょ?・・・え、違うの?」


 美優がちょっと困った様に笑いながら朱美ちゃんに問いかけたが周りの反応を見て自分達との認識のズレに気付き戸惑う。


「いやお前達が先に行ってそのまま何処かで迷ってたんじゃないのか?」


 ノブが戸惑いながら聞いてくる。


「いや俺と美優が少し先に行った所で俺がつまずいて転けた後、振り返ったらお前達の姿はもうなかったんだぞ」

 俺も自分達の置かれていた状況を説明する。


「え?どういう事なの?私達はお互いどのタイミングでお互いを見失ったの?」


 佐和子が混乱した様に問いかける。

 いや、今この場に混乱してない者なんかいないだろう。


「そうだ!カメラ!健太カメラ回してなかったのか?」

 泰文が思い付いた様に問いかける。


「おお、カメラなら確か回してたはずだ」


 俺はすぐさまカメラを確認する。

 ノブと泰文もカメラを持って集まり皆で3台のカメラを確認する。


 結局、泰文のカメラには俺達の姿は映っておらず、ノブのカメラでは僅かに俺達の姿を確認出来るが遠すぎてはっきりとはわからかった。


 一方俺のカメラには立ち並ぶ木々と終わりの見えない暗闇がずっと写しだされていた。

 しかし俺が躓き転けた瞬間にカメラが丁度、自分達の後方、すなわち他のメンバーがいるはずの方向に向いていたがそこには暗闇しか映されていなかった。


「ダメだ、よくわからないな。だいたい俺達が迷ったって言ってたけど俺達はまっすぐ歩いて行っただけで何処も曲がったりしてないから迷ったりする訳ないんだけどなぁ」


 俺と美優の感覚としては俺達が先に行ってる間に皆が何処かに行ってしまった様に思っていたが、皆からすると俺と美優が何処かに行ってしまった様に思ってたようだ。


 一体消えたのはどっちだ!?

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