第14話 Sの森①

「それ以来ですねこの『Sの森』は手付かずで放置されてるようです」


 泰文が説明をし終わった所で皆がコメントをする。

「えぇちょっと怖いよ~。ねぇケンケン」

 朱美ちゃんが振ってくる。


「う~ん、だよねぇ。まぁでも行かなきゃ始まんないし」

 一応返すがまだキャラが固まってない。


「じゃあちょっと行ってみましょうか」

 佐和子の言葉と共に皆で森の中へ進んで行く。


 この時美優が軽く袖を引っ張ってきたので皆とは少し離れて歩く。


「ねぇ健太。ちょっといい?」

 美優が小声で話しかけてくる。


「どうした?ミューちゃんのキャラは辞め?」

 俺が少しおどけて返すと


「はは、休憩。ごめんね。別に脅かすつもりはないんだけどこの森何か雰囲気が違うよ。どう言ったらいいかわかんないんだけど、そうね・・・空気が重い感じがするの」

 美優は狐の面を外し、真剣な表情を見せる。


 その顔を見て俺はやはりこんな企画に参加した事を少し後悔した。


「あれー、ミューちゃん、ケンケン。そんな離れてたら置いて行っちゃうよー」

 佐和子が少し笑いながら呼びかけてくる。


「あーん、置いてかないでよ~。待って~」

 は駆け出し追いかけて行く。


『凄いな。ちゃんと演じれるんだな』

 俺は感心しながら


「おいおい、置いて行くなってー」

 俺も一応頑張ってみる。


 皆に追い付き歩いていると、至る所に『N建設』と書かれた看板やプレートの様な物を見かける。

 どうやら過去に開発が行われようとしていた事は本当のようだ。


 森に入り暫く歩いて進んでいると、ある違和感を覚える。

 外から見た時、このSの森はそれ程大きな森には見えなかったのに、いまだに目的の御神木にすら辿り着かないからだ。


「なぁヤッスー御神木ってそんな森の奥にあるのか?」

 俺は気になり、キャラは崩さないように泰文に問いかける。


「うーん。森に入るのは初めてだしなんとも言えないけど多分もう少しかなー」

 泰文は笑顔で答えるが、なんともぎこちない笑顔だ。


「え、サワワちゃん、なんか遠くない?この森ってこんなに大きいの?」

 朱美ちゃんも気になっていたようだ。


 と言うよりも皆、気にはなっていたが口には出さなかったという感じに思えた。


「えっと・・・許可もらった時の説明では入口から御神木まで歩いて5分程って言われてたんだけどなぁ」

 眉尻を下げ少し困り顔で佐和子は笑っている。


 やはりおかしい。

 森に入って既に10分以上は歩いている。


 その場に不穏な空気が漂う。

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