第10話 動画撮影開始②

 佐和子と俺達の攻防戦は尚続く。


「とりあえず心霊系は勘弁してくれ」

 ノブも悲愴感が漂っている。


「大丈夫だって。他の人達も心霊系の動画たくさん上げてるけど大丈夫そうだから」

「いや、その人達が大丈夫でも俺達が大丈夫っていう事はないだろ」


 そんな鍔迫つばぜいが10分程続いた所で美優が俺の腕を軽く引っ張る。


「健太、もういいよ。私は大丈夫だから佐和子ちゃんの提案に乗っとこう」

 美優がひっそりとささやいてくる。


「まぁまぁ、せっかく佐和子ちゃんが許可まで取ってくれたんだし私はそれでもいいよ」


 本当は心霊系なんてもう懲り懲りのはずなのに、この場の雰囲気に合わせて了承しようとしてくれてる美優を見て、たまれない気持ちになる。


「流石美優ちゃんありがとう。さぁ彼女はOKだって健太君」

 佐和子が勝ち誇った様に問いかけてくる。


「はぁ、・・・美優がいいなら俺は問題無い」


「じゃあ私もいいかな。別に肝試しとかは嫌いじゃないし」

 続いて朱美ちゃんも同意してくる。


「よし!じゃあ決まりだね。あと皆、顔隠すんだよね?とりあえずモザイク処理とか面倒だから女子にはお面被ってもらおうと思ってるんだけど」

 佐和子は楽しそうに話し出した。


「いや・・・おい、俺は嫌だって・・・」

 ノブが1人取り残され力なく呟いていたので俺はノブの肩に手を乗せ、静かに首を横に振った。


「本当は2人共美人だから顔出してほしいんだけどダメだって言うから、せめて口元だけならOKしてくれない?お願い。その方がトークもし易いし」


 美優と朱美ちゃんは顔を見合わせて少し戸惑っているようだった。


「それにさ、口元だけが見えてる事で更にセクシーさも伝わると思うの。お願い。一生のお願いだから」


 佐和子は更にまくてるようにお願いしてきた。


「ふぅ、まぁ口元だけならいいよ」

 朱美ちゃんがまず了承する。


「口元だけね」

 続いて美優も渋々了承したようだ。


「よし。こっち男性チームも色々決めて行こうぜ」

 そう言って泰文がこっちへ来る。


「俺達もお面を被るのか?」


 俺はお面を被る事にあまり気は進まなかった。

 女性は、特にあの2人ならお面を被っても華があると思うが男の場合はそうは思わないからだ。


「いやお前達の場合はまだ何も決めてないんだが、そうだな・・・当日までには何か考えとくよ」


 少し不安だがここは泰文に任せてみたが今思うとやっぱり自分でちゃんと考えるべきだった。


 撮影は来週末。

 動画撮影で10箇所を6人で回らなきゃならないので車が効率的だろうという事になり、俺が車を出す事になった。

 カメラは皆とりあえず持ってくる。



 結局この日決まったのはこれぐらいだった。

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