第9話 動画撮影開始①

「はいどうもーサワワです。ヤッスーです。さわとやすチャンネルへようこそ!」

 相変わらずハイテンションで2人が登場する。


「そして今日は素敵なゲストに来てもらってます。

 まずはケンケンとノブックスのお2人」


「どうもケンケンです」

「こんちわーノブックスです」


「そして今日のスペシャルゲスト。ミューちゃんとアケンちゃんです」


「どうもミューです。よろしくね」

「アケンだよー。よろしく」

 白い狐のお面と黒い猫のお面を被った妖艶な2人が現れる。


 何故こうなったのか。

 少しさかのぼる。



 居酒屋で久し振りの再会を果たしてから数日後、泰文から連絡があった。


『今週金曜に駅前のファミレスで動画の打ち合わせしたいから美優ちゃんと一緒にお願いします』


 あわよくば酒の席の話って事でなかった事にならないかなとか思っていたがやっぱりダメか。

 諦めて

『了解です。美優にも言っときます』

 そう返信する。


 普段、俺は1人暮らしで美優は実家暮らしだ。

 週末に美優が泊まりに来るのが俺達の生活スタイルだが、今は美優が夏休みという事もあり週4、5日一緒にいる生活になっている。


 そして金曜日、美優と共にファミレスに集まる。


「皆集まったね。それじゃあ今後の動画について話し合おう」

 佐和子が仕切ってその場を回す。


「実は次の動画の方向性とタイトルは決まってるんだけど発表するね。それはズバリこれ」


 佐和子がフリップの様な物を取り出した。


 そのフリップには

『特別ゲストと行く、心霊スポット10選!』

 と書かれていた。


「いやいや、ちょっと待て。心霊スポットって」

 俺が思わずつっ込むと


「おいおい、聞いてないぞそんなの!」

 ノブが激しくつっ込む。

 ノブは心霊系が大の苦手だからそりゃそうだ。


「ちょっと佐和子ちゃんいい?心霊スポットって何処か入るなら許可取らなきゃいけないし、迂闊にそういう所には行かない方がいいと思うんだけどなぁ」


 美優がそう言うのも無理はない。

 小さい時から美優は数々の心霊体験をして来た訳だし、俺と出会った時だって結構大変だったんだから遊び半分でそんな所に足を踏み入れたくはないはずだ。

(※True Stories参照)


「大丈夫だよ。もういくつか許可は取ってあるから」

 佐和子は得意気にそう言って動画の方向性を説明しだす。


『普段は適当なのに、なんでこんな時だけ手際が良いんだ?』

 俺はそう思いながらもとりあえず佐和子を説得する。


「いや、佐和子ちょっと待ってくれ。こういう心霊系は迂闊に関わらない方がいいって。何かあってからじゃ遅いし」


「ええ、大丈夫だって。もう許可も取っちゃったしさぁ。それに万全を期すためにほら、こんなのも全員分用意したんだから」

 そう言って佐和子は御守りを取り出した。


 いや御守り1つで心霊現象収められたら苦労しないんだけど

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