第8話 旧友との再会⑧

「はぁ、もう最悪」

 居酒屋で今日はひとまず解散となり、2人で家路に就いていると美優は頭を抱えながら大きなため息をつく。


 美優と朱美ちゃんが「出たくない」「嫌だ」と拒否していたが結局泰文と佐和子に押し切られる様な形で6人で動画に出演する事になった。


「まぁ1回だけだし、顔も隠すってなったからさぁ」

 俺はなんとかフォローを入れたつもりだった。


「私ほぼ初対面なんだよ。あくまでも健太の顔を立てて了承したんだからね。だいたい健太が電話の時にキャバクラちゃんと断ってたら私達今日付いて来てないかもしれないんだから」


『結局話はそこに戻ってしまうのか!?』

 そう思いながらもなんとかなだめてこの話を終わらそうとする。


「いや美優がいるのにそんな所行くわけないだろ。それに佐和子も言ってたけどやっぱり3人揃うと映えると思うよ。それこそ3人揃ってたら下手なアイドルユニットよりもよっぽど華があるって」

 勿論本心ではあるがちょっとだけ大袈裟に褒め称える。


「へぇ~随分と口が上手くなったねぇ。私と朱美は顔隠すけどそれでもアイドルより華があるの?」

 美優は含み笑いを浮かべ首を傾げこっちを覗き込む。


「勿論そうだろ。顔を隠してても美優と朱美ちゃんなら雰囲気で伝わるはずだし、顔隠さないと美優や朱美ちゃんのファンが絶対出来るから寧ろ顔隠してもらわないと俺達が困るよ」


「ふふ、本当に口だけは上手くなったね。まぁこうなったら仕方ない。健太の為だと思って頑張るよ」

 美優はそう言って満面の笑みを浮かべている。


『結構本心で言ったんだけどなぁ。少しは伝わったかな?』


 そんな事を思いながら2人歩いていると美優が腕を組んでくる。


「ねぇ。お酒も飲んでるしさぁ、今日は何処か泊まらない?ダメ?」

 美優がほんの少し照れたように語りかけてくる。


「そうだな。たまには外で泊まろうか」

 俺はあえて冷静に返したつもりだったが心の中では今日一番テンションが上がっていた。


 そしてそれは美優も同じだった様だ。

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