第6話 旧友との再会⑥

 とりあえず遅れてきた俺と美優も腰を下ろし、注文を済ます。


「朱美が遅れるから皆揃ったら先に始めといてくれって言ってたぞ」


「そうなのか?じゃあ御言葉に甘えて先に乾杯するか」

 そう言って不思議な面子での飲み会が始まる。

「カンパーイ」


 初めは美優もいるので皆、当たり障りのない会話から入って行く。

 そして少しお酒も進んできた所で俺は今日の本題を切り出した。

「そう言えばノブはこの2人の動画見たのか?」


「おお勿論。結構面白かったのに低評価が多くてびっくりしたわ。勿論俺は高評価に押したけどな」


『こんな身近に残念な感性の持ち主がいやがった!』


 俺と美優はあまりの衝撃に言葉を失った。


「おおノブ、やっぱりそうか。それなりに面白い動画だと思ってたんだけどイマイチ伸びないんだよな。どうしたらいいと思う?」

 泰文が少し照れたように頭を掻いているが、イマイチ伸びないんじゃなくて全然伸びないの間違いだろ、とツッコミを入れようとした時


「ごめん遅れて。皆結構出来上がってる?」


 朱美ちゃんが明るい感じで入ってきた。


 今2人の動画についてどうしたらいいか話し出した所だとノブが説明すると

「ああ、あの残念な動画ね」

 とはっきりと言い放つ。


 俺と美優以外でやっとまともな感性の人が来てくれたと正直安心する。


「朱美はなんかお前達の動画に対して評価低いんだよな。健太はどう思う?」


「いや、俺も評価はイマイチだな。それにノブは何処か贔屓目で見てるんじゃないか?美優や朱美ちゃんの方が第三者的な目で見てくれてるから的確なんじゃないかな?」


「う~ん、そうかなぁ」

 ノブは腕を組みながら首を傾げて不満そうな表情を見せるが正直不満なのはこっちの方だった。


『さわとやすチャンネル』について皆で話ていると、それまで大人しくしていた佐和子が口を開く。


「あのさぁ、今日集まってくれたついでに実は皆にちょっとしたお願い事があるんだけど」

 佐和子が上目遣いで珍しく少し言いにくそうにしているのを見て俺は少し嫌な予感がした。


「私達の動画、やっぱり泰文と2人だとちょっと限界があるのよ。だからちょっとだけ手伝って。お願い。この通り」

 そう言って頭を下げ、両手を合わせている。


「そう、佐和子の言う通りもうお前達に頼るしかないんだ。だからこの通り」

 そう言って泰文までもが正座したまま頭を下げる。


 旧友2人にそんな風に頼まれたら無下に断れる訳がなくノブや美優と顔を見合わす。


「いやいや、ちょっと待ってくれ。出来ればお前達の力にはなりたいけど何を手伝えばいいのかもわからないしなぁ」


「え、という事は手伝ってくれるんだな。よかった。やっぱり持つべきものは友達だな」

 そう言って泰文が握手を求めてくる。


 しまった。コイツらに遠回しに言っても上手く伝わらないんだった。

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