第5話 旧友との再会⑤

 そして約束の週末を迎える。

 あえなく俺達のキャバクラ計画はつゆと消え、代わりに居酒屋で、そして美優と朱美ちゃんも同伴する事になった。


「ひょっとしてキャバクラ行けなくて残念だな~とか思ってない?」

 美優が悪戯っぽく微笑みかける。


「いやいや、行くわけないだろそんなの。泰文が行きたいって言ってただけで俺は始めからそんな所、更々行く気なんてなかったからな」

 本当はあわよくば行こうかな、とか考えてたがそんな事がバレたらずっと言われかねないので絶対にバレる訳にはいかなかった。


「そりゃあそうよね。私がいるのにそんな所に高いお金払って飲みに行くなんて意味わかんないよね」

 そう言って美優は微笑みかけてくるが疑いの目を向けられてる様な気がしていた。


「まぁ美優も朱美ちゃんもついてくるって事は俺達は信用されてないのかな?」


「あはは、どうだろうねぇ。とりあえず『私達が彼女ですけど、それでも貴方はこの2人をキャバクラに誘う気ですか?』って圧かけようかなぁと思ってさ」


 美優は笑っているがあまり冗談には聞こえなかった。


 そんな事を喋りながら2人、約束の居酒屋へ向かって歩いている。


「ねぇ本来は動画の事、色々伝えるのが目的だよね?」


「あぁそうだな。泰文の奴低評価押されても気にしてない様子だったしな。だいたいあんな動画に高評価押す奴なんて、押し間違いか、身内か、余程残念な感性の持ち主じゃないと押さないしな」


「健太は身内だけど高評価押さなかったね」


「流石にあの動画に高評価押すのは俺のプライドが許さなかったよ」


 そんな事を話てるうちに約束の居酒屋に到着する。


「おっ、ここだな。さてもう来てるのかな?」

 店の扉を開けるとバイトと思わしき女の子が声をかけてくる。


「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」


「ああ、もう先に友人が入ってるかもしれないんですが・・・」


「あっ、ひょっとして林様ですか?先に男性の方2名様と女性の方1名様であちらのお座敷に居られますが」


 店員の女の子にお礼を伝え、教えられた座敷に向かう。


「ノブも朱美ちゃんも先に来てたみたいだな」


「そうだね。私達が1番遅かったみたいだね」


 そんな事を話ながら座敷のふすまを開ける。


「おっ健太。お疲れ」

「おお健太久し振り」

「あ、健太君久し振りじゃん」


 そこには佐和子がいた。


「佐和子?久し振りだな。佐和子も来てたのか。あれ?じゃあ朱美ちゃんは?」


「朱美は急にバイトが長引いて少し遅れるらしい」

 ノブが間髪を入れず答える。


「ああ、だからLINEしても返事なかったんだ」

 美優も部屋に入ってくる。


「健太の彼女か?初めまして泰文です」

「初めまして。佐和子です。わぁ綺麗な人だ。昔、駅で会ったよね?覚えてますか?」


「ありがとう。勿論覚えてますよ。健太のの美優です。よろしく」

 美優は穏やかな笑みを浮かべている。


『ファーストコンタクトは無事成功って事でいいんだよな?』

 俺はなんとなく不穏な空気が漂っているような気がして仕方なかった。

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