第4話 旧友との再会④
泰文の奴が平然ととんでもない事を言い出した。
俺は思わず美優の方に目をやる。
変わらずキッチンで食器を洗ってくれている。
いくらこの部屋が狭いからってこの距離なら流石に聞こえてなさそうだった。
「い、いや、何処行くかはまた今度決めようぜ」
俺は今、これ以上その話題をされ美優にバレるのが何より怖かった。
「おお、そうか。その店可愛い子も多かったし初回は安くなるんだぞ。ノブも誘って3人で行こうぜ」
「いや、とりあえずまた電話するから、また今度な」
そう言って俺は少々強引に電話を切った。
「なぁ美優。今度の週末、ノブも誘って泰文と飲みに行こうかってなったんだけどさぁ」
さり気なく美優に喋りかける。
「あっそうなんだ。ノブ君も行くのか。・・・じゃあ私は朱美とどっか行こうかな」
そう言いながら美優が横に戻ってくる。
「あ、洗い物ありがとう。美優も朱美ちゃんと何処か飲みに行くのか?」
「う~ん。まだ朱美に何も言ってないしどうしようかな?」
美優は横に座りながら顎の辺りに人差し指をそえて少し上を見つめて考えている様だった。
「ねぇねぇ」
そう呼びかけられ振り向くといきなりソファの上で押し倒された。
『おっ、今日は美優の方からかな』
そんな事を考えながらソファで仰向けになっている。
すると美優は上から覆い被さる様に俺を覗き込んできた。
『ドン!』
俺の顔の横に手をつき美優は優しく微笑む。
「ねぇ、健太・・・」
美優が髪をかきあげて見つめてくる。
そんな美優の仕草に色っぽさを感じ俺の鼓動も高まってくる。
「・・・週末、まさかキャバクラに行かないよね?」
美優はずっと微笑んでいるが逆にそれが恐ろしかった。
「え、あ、いや、い、行くわけないだろ」
『やばい、聞こえていたんだ。絶対怒ってるやつだ』
俺は軽いパニックに陥っていた。
「本当に行かない?本当は行きたいのかな?」
優しい口調で微笑んではいるが美優の冷たい視線が刺さる。
元々美優はややきつい目付きだが今は更に鋭さが増している。
「い、行きません。絶対に。誓います」
さっきとは別の意味で鼓動が高鳴る。
「ふ~ん。・・・ひとまず信じてあげる。もし裏切ったら・・・ふふふ、どうしようか?」
美優はそう言って笑っているが俺はとてもじゃないが笑えなかった。
「とりあえず朱美に電話しようかな」
美優はそう言ってスマホを手にする。
「ああ、どこ行くか相談?」
「ううん。貴女の彼氏、今週末キャバクラに誘われるかもしれないから気を付けてって言ってあげようと思って」
もう俺にはどうする事も出来なかった。
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