第3話 旧友との再会③
とりあえず最後までは見守ろうと動画を続きから再生する。
「おお、味噌ラーメン来ましたねぇ。いやぁこれは美味しそうだ。よしいただきます」
泰文は顔の前で手を合わせると味噌ラーメンを食べだした。
「うん。美味い、美味い」
そう言って味噌ラーメンを食べる泰文がずっと映し出される。
そうまさにずっと。
そして・・・・・・
「ご馳走さまでした。美味しかったです」
そう言いながら顔の前で手を合わせる泰文の後に映し出される『終わり』の文字。
動画を見終わった俺と美優との間に沈黙が訪れる。
完全に呆気に取られていた。
「け、健太。起きてるよね?」
美優が沈黙を破り問いかける。
「え、ああ、勿論。・・・・・・なんだこれ?」
ツッコミどころ満載な上に泰文が味噌ラーメン食べてる所をひたすら見せられる動画。
思わず率直な感想を口に出してしまう。
「あはは、・・・ごめん。もうフォローのしようもないや」
美優も眉毛を八の字にして困った様に笑っている。
「なんかごめん」
思わず謝ってしまった。
美優と一緒に罰ゲームをしていたような気分にかられる。
そして今更ながらよく見ると、どの動画も低評価だらけだった。
「とりあえず泰文に電話していいかな?こんな動画を世の中に垂れ流し続けられたらたまらないから」
「うんそうだね。久し振りに電話してあげたら。たまには第三者の意見も必要だと思うよ」
そう言って美優は立ち上がりキッチンで溜まった食器を洗い始める。
プルルル、プルルル
「はい、もしもし」
2コール程で泰文が電話に出る。
「お、久し振り。健太だけど・・・」
久し振りの旧友との会話でいきなり動画のダメ出しから入るのは
「そう言えばお前達、動画配信してるんだな。この前見たけどあれはちょっと酷くないか?」
「お、見てくれたのか?酷いかな?それなりの出来映えだと思ってたんだけどなぁ。じゃあ今度じっくり意見を聞かせてくれよ」
「ああいくらでも意見ならするよ。だいたい低評価も多過ぎだろ」
「いやぁ、あんな評価のボタン嫌がらせとかで低評価に押すやつばっかりだから当てになんねぇよ。そんなの基準にしてたら動画配信なんかやってらんねぇぜ?」
『じゃあお前達は何を基準にしてるんだ?そんなんだから永遠に動画のクオリティも上がらないんだぞ』
そう言いたかったが言った所で今は理解してもらえないと思いグッと胸にしまい込む。
「動画の事もそうだし、他にも色々話あるから今度飲みに行こうぜ」
「ああ、勿論いいけど俺は仕事あるから週末ぐらいしか行けないぞ」
「俺もバイトあるから週末で行こう。この前いい店みつけてさぁ、キャバクラなんだけど今度そこ行こうぜ」
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