第2話 終わりの始まり

 父の今回の浮気は酷かった。家族で食事をしていても、愛人から電話があるともう、どろどろに溶けたような顔で、うきうきと出ていってしまう。


 母は泣いていることが多かったように思う。スマホを持たず、また、狭く壁の薄い我が家では、内緒の電話は不可能。なので、よく夜中に家のそばの公衆電話で、実家のそばに住む友人に電話をかけに行っていた。それを父が嗅ぎ付けると、ドアチェーンをかけてしまう。それを外すのは、寝たふりをしている私の役目だった。私は小学生ながら考えて、六法全書を手に入れて、必死に読んだ。


 家族が、少しずつ壊れる音を聴きながら。

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