暗い森

わか

第1話 どこに出口があるのか

 私は都内に住む、精神を病んだただの女で、母とふたり暮らし。病名は統合失調症。

 なぜ、健康なはずだった私がこんな病気になったかと言えば、今は別の家庭を持つ父のせいだと思っている。

 統合失調症は、まるで暗い森に紛れ込んだような、恐れと、心細さと、寒さを常に感じる。これは父の浮気が原因で家庭も私もが壊れたのだ。


 最初は小五の時。学校から帰ると母が暗い目をして言った。


「……パパ、他所に女の人がいるみたい」


 なにを言われているか分からなかった。私は、善良な父と善良な母の元に生まれたのではなかったろうか?


「──これ」


 混乱する私に母が差し出したのはこどもの目から見ても分かる、ファンデーションのべったり付いたYシャツだった。顔を擦りつけない限り付くはずのない濃さで、それはYシャツの胸元で主張していた。


 私は、両親の別離を感じていた。今までもちょいちょい浮気をしては、ばれていないだろうという顔で戻ってくる父を知っていた。でも、これはそんなものじゃない。


 父は、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る