第2話 獅子は舞っても舞われるな ②
◆◇◆
「ところで何でみんな神社に集まってんですか?今日何か催し物とかあったっけ?」
普段から町内のお知らせのプリントとか全然見ないし、大体親が出張るモノばかりなのでみかんは今日、何かあったとしてもよくわからない。
「何言ってんだ。3週間後に獅子祭り開催すっから、今日からここで練習だ。オレたちゃその準備に来たんだよ」
「アレ!?もうそんな時期だっけ?完全に忘れてた」
「まぁ、”新型ネオウイルス”のせいで2年間祭り中止だったしなぁ」
ちなみにこの世界では2年前に世界的規模で”新型ネオウイルス”という、聞いた人の大半が思わず「何て?」って聞き直すウイルスが大流行した。
そしてつい最近、ワクチンを日本人の半数以上が接種して収まりつつある。
「でも今年から再始動だ。今年からよろしく頼むぜ。”天衣無縫”《てんいむほう》と呼ばれた”天空のみかん”!」
「ギャアアアア!!!それ止めてぇ!!」
「何?その中二病な二つ名。文字通り2つあって渋滞してるし」
「カレピさん。昔みかんはさ。大人でも上手い人間と肩並べる程”天狗”役がずば抜けて上手い・・・。というより何か異様な凄みがあって、唯一無二の存在感で子供の天狗の中ではエース的存在だったんだ」
「へー。意外。それに今の獅子って女も天狗役やるんだ。」
「少子高齢化ってヤツだね。それ置いといてもホントみかんの天狗は何か凄かった」
基本的にこの北島町の獅子祭りの構成は。
天狗1人 獅子1~5人 太鼓1人 笛たくさん。
(地域や各町内によって、やり方は変わります)
30年ぐらい前までここでは男のみでやっていた。
でも、少子高齢化で男のみじゃ祭りが回らない。
だから太鼓や笛係に町内の女子が少しずつ参加するようになる。
ここで女を参加させないなんて女性差別ぅ。
とかゆう人は是非一回だけで良いからまる1日獅子祭りに参加して欲しい。
雨降っても、風吹いても、ほぼまる一日拘束されて町内踊り回るのキッツイから!
特に昨今では、祭りの当日に快晴の日はあんまり無いし!
特に重い獅子ぶん回して踊る大人は、その日だけ酒飲みまくって、肉体のリミッターを自分から切って踊ってるから!
次の日は体ボロボロなのに、みんな公民館来てゾンビみたいになって後片付けしなきゃいけないから!(大人だけ)
「それにみかんが天狗やってて凄かったのが一番意外。てっきり物作り以外は全般的にポンコツだって思ってた」
「はっはっは。何言ってんの研ちゃん。・・・アトデブチノメス」
「逃げる」
「追う。追いつめる」
「「・・・・・・」」
「「アハハハハハハハハ」」
「ホント仲良いなぁ。君ら」
◆◇◆
「ギャアアアアアアア!!」
その時。
神社の本堂の中から男の野太い悲鳴が聞こえる。
「!」
「本堂の中からだ!ノブの声だ。祭りの道具を取りに行ってたノブの声だ!!」
「ああっ。アレ見て!!」
神社の本堂と鳥居の真ん中辺りで駄弁ってた3人が。
本堂の異変に気付いて全員そこに目を向ける。
床にへたり込んでいるノブが見上げるその先に。
そこに現れたるは、宙に浮かぶ獅子頭。
誰も持ってはいないのに不自然に浮かんでる。
見えないハズなのに、その場にいる誰もが感じる陰気で異様な気配を放っていた
その獅子頭が何故か聞こえる声を放つ。
『我は”
「「「
『我はこの2年間。新型ネオウイルスの影響で。全国の獅子祭りが途絶え、残念・無念というお獅子好きの負の思念がこの獅子頭に集まり誕生した物』
「何でよりにもよって、この町内にピンポイントで集まるんだよ!ふざけんな!!」
佐久間さん。思わず突っ込む。
『我が知るか。お前は何で自分が産まれて生きてんのか説明できるのか?』
「ううっ!確かに!」
「ねぇねぇ。研ちゃん。憑神ってなんぞ!?」
「悪霊の神バージョン」
「超ザックリ!」
「補足すんな。悪霊ってのは、人の個の負の感情を煮詰めたモンだとすると、アレはアレの言ってる通り、お獅子がしたいってゆう莫大な負の思想がアレしてアレに集まったカンジだな」
「後半フワフワッとしてるけど、なるほど!」
『とにかく我の願いは、今まで出来なかった分のお獅子を存分に踊ること・・・』
憑神お獅子大好きは、未だに床にへたり込んでいるツダさんを見下ろして。
獲物を仕留めるとばかりに飛びかかり、襲いかかる。
「わあああぁぁ!!!!」
「ツダさん!!」
・・・・・・・。
『『我が名はツダ。お獅子大好きーー』』
「ツダさん!?」
襲い掛かられたツダさんは。
憑神のアゴの付け根をガッチリ両手でホールドして踊ってる。
何も知らない人が見たら。
ただお獅子を持って、踊って、変な声を出してる人だった。
「ツダが!ツダがあの変な頭に乗っ取られた!?」
「ツダさんだからフツーに悪ふざけしてるようにも見えなくもないけど!」
『まだ足りぬ。そもそも獅子頭一つでは獅子は踊れん。
ここにいるお主ら全てを操り。我が内に渦巻く悔根晴れるまで不眠不休で獅子を踊り倒してくれる』
「どうしよう?研ちゃん!めっちゃヤバそう!!」
「やれやれ。お仕事の時間のようだな」
「研ちゃん!」
「下がってな。みかん。佐久間さんや他のみんなも」
「研ちゃん!」
ヤレヤレだぜと首を左右に振りつつ。
みんなの前に研は立つ。
「研さん!危険だ。とにかく危険だ!あんたもヤツに取り憑かれてお獅子を踊るハメになっちまうぞ!慣れてる人間でも本番用の獅子の頭を持ってイキナリ踊るのはキツいんだ!!」
「あ。ホントだ。さっきまで踊ってたツダさんの息切れてる。」
『『ゼーゼー・・・何だ貴様?』』
「オレは退魔師 研だ」
『「「退魔師!!?」」』
聞き慣れない単語が出てきたから、聞いてるみんなはビックリである。
「オレはこの辺の神社を取り纏めている神社本庁からの依頼で来た。何かこの神社の本堂から嫌な感じするから調べろってな」
胸元に手を入れて。
内にあった巻物を憑神に見えるように片手で広げて掲げ挙げる。
“北島町の神社の本堂に悪しき気配あり。
至急調査すべし。
何か危険があれば、其の方の権限で処分せよ“
と文章は固いのに何故かかわいい丸文字が直筆で書かれてた。
「(え?退魔師ってどゆこと?研ちゃんの本職って死神じゃなかったっけ?)」
「(そーゆー
「(
「(少子高齢化だよ!フツーこういう案件は霊力だの異能力持った人間が担当するんだけど、そんな人間ゴロゴロいるワケないだろ。少子高齢化のせいでやれる人間いないから、死神にも仕事が回ってくるようになったんだよ。そして今!オレ!)」
「(少子高齢化の波がそんなトコまで)」
恐るべし。少子高齢化。
つづく!
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