第3話 獅子は舞っても舞われるな ③



『退魔師だか何だか知らんが喰らえ! ”お獅子大好き光線”!!』


憑神の両眼から放たれる黒い光。

お獅子大好き光線 が研を襲う。


「効かん!!」


『何!?』



人間ではなく、死神のためか研にはモロに光線が当たるが効かず。



「次はオレのターンだ!」



どこから出したか、右手に現れる銃。

研の仕事道具である、死神の銃 だ。



「そい!」



研は銃の引き金を引き、乾いた音が2回空に響く。

憑神に向けて銃弾が放たれるが空を切る。



『えんやさー! えんやさー!』



華麗なステップで避けた!



『光線が効かんなら物理で倒す!!』



「うべし!」



懐に潜り込まれ、上から下へと10㎏を超える獅子頭が研の頭上に振り落とされる。


その衝撃でそのまま地面に叩きつけられダウン!


額が割れて流れた流血が地面を伝う。


効果はばつぐんだ!





両者の攻防時間 5秒






            LOSE  研!







・・・・・・・・・・・・・・。







「「弱っっっっっっっっっっっっわ!!!!」」




「ちょ ちょっと!ちょっと!!無いわーー!!え!?ちょい。

5秒でKOは流石に無いわーー。研ちゃん、せめて30秒は頑張ってよ!!」





「・・・う、うるせーー!!オレそもそも普段戦闘職じゃないしー!どっちかって言うとデスクワーク寄りだしーー」



「うっそだー!よく仕事のグチ聞くけどデスクワーク要素無いかんねー!」



「守秘義務ってヤツですー!仕事の内情んな部外者にペラペラしゃべれるワケねーだろ!!」



「イヤ!個人名伏せてるだけで、結構しゃべってるからね研ちゃん!」



「2人とも痴話げんかは余所でやってくんねーかな!」



聞くに堪えないので流石に口を挟む佐久間さん。



「「痴話げんかじゃねえし!!」」



「ああっ!んなコト言ってる間に獅子の蚊帳と尻尾役の人補充するために、憑神がまた人取り込んでる!!」



「うわー」


「お助けー」


「引き寄せられるー」


「尻尾を振る役のために取り込まれるー」



2人が痴話げんかをしてる間。

憑神 お獅子大好きは近くの青年団の若者を取り込んで。

人員補充をしていた。





『えんやさー!えんやさー! ×5人』




これで憑神 お獅子大好き は完全体だ!





◇◆◇




「くそう。みかん!こうなったらプランBだ!今、考えた!!」


「プランB!? ・・・って今、考えたっつたな!」


「プランBだ!」


「押し通した!!」



「踊れ!みかん!お前が!!」


「踊れと!?」


「天狗になって踊れ!!」


「えーーーーーーーーーー!!?」


「押してもダメならってヤツだ。聞けばみかんは他の人より抜きんでて天狗が凄かったそうじゃないか。アイツをお前の体で満足させるんだ!!」


「言い方!」


「確かに!みかんの天狗なら憑神 お獅子大好き も満足させられるかも!イヤ。きっと出来る!!」


「佐久間さん!?」



『ククク・・・。よかろう。お獅子だけ舞っていても獅子舞は成立せぬ。共に舞う天狗もいなければなぁ」



「くそっ!アイツもノリノリだ」






「おー。何だ何だ。何か神社が騒がしいなー」


「獅子の練習してるみたいだなー」


「もう本番用の獅子使って練習してんのか。2年ぶりだからって気合入ってんなー」


「いいぞー。やれやれーー」




「いつの間にか近所の人たちも来て盛り上がってるーー!?」



『ククク・・・。良かろう。ギャラリーがいて、演者をもてはやさなければ獅子舞とは言えぬ」



「結構寛容だなぁ。あの憑神」



「あー!もうやったらーー。憑神 お獅子大好き!本殿の中に天狗の剣とか槍とか入ってんでしょ!それコッチ寄越せー!!」



『ククク・・・よかろう。天狗が剣や槍を構えていなければ(以下略)』



お獅子大好き 槍を咥えてみかんの所へぶん投げる。

それを右手で受け取り、構えるみかん。



「っと。みかん。この法被はっぴを着ろ。天狗の衣装は流石にすぐ着るのは無理だけどコレならある」




赤を基調とした各色の。

派手な色であしらった法被を身に付ける。



「太鼓と笛はオレ達に任せろ!」



いつの間にか、太鼓と笛を並べていつでも準備OKになっている。

青年団の方々と子供達。

ここまでお膳立てされたらもうやるしかない!


「みかん。コイツもだ」


額から流血してた血をぬぐい。

研はみかんの槍に血をかける。

すると、怪しくも神々しく光るみかんの槍先。


「・・・これは?」


「オレの血で槍の力をブーストさせた。」


「そんなん出来るんだ!?」


「コレで憑神の圧力もなんぼかマシになんだろ」


「まぁ。無いよりマシかぁ」


「昔から神が道具に血ィぶっかけてパワーUPってのは、よくある話だ。それにコレも神のために舞う儀式の道具だからな。反応しやすいってのはある」


そんな力あるのに、さっきはアッサリ負けたよね。

って心によぎるも、みかんは言っても意味無いのでグッは堪えた。






◇◆◇




ドンドンドコドン ドンドコドン

ドンドンドコドン ドンドコドン



ドンドンドコドン ドンドコドン

ドンドンドコドン ドンドコドン



青空に響き渡る 力強き太鼓の音。

そしてピーヒャラーと太鼓の音と調和するがの如く流れる笛の音。


神社に 獅子に 天狗。

そして流れる 太鼓と笛の音。

見守る観客。


最早舞台は整った。

さあ! 神の場で舞う演者達よ!


己が力尽きるまで

舞いを捧げるのだ!!







『ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』







「ってイキナリ苦しんでんだけど!?え。何で!?あたしまだ何もしてねぇ!!」


「あ。太鼓の音だわ。本来、太鼓って魔を払う効果があるから」


「えーー!?この憑神。お獅子したくて誕生したのに、お獅子すると苦しむの!?」




『ククク・・・構わぬ。やるぞ。娘よ』



「え?ホントに大丈夫?汗すごいんだけど。ちょっと休も?」



獅子に何で汗?

と思うが実際ドバドバ獅子頭の表面から出てきているからしょうがない。



『・・・構わぬと言っている。我。踊るために生まれたり。獅子舞をすることが我が生き様!』




「みかん!踊れ!あいつの生き様を無駄にするな!!」



「研ちゃん!アンタ一体どっちポジションやねん!!」



どっちみち踊らないと始まらない。

もう。みかんは。

踊るしかないのだ!




ドンドンドコドン ドンドコドン

ドンドンドコドン ドンドコドン



「ええい!やったらーーー!!(2回目)」



ドンドンドコドン ドンドコドン

ドンドンドコドン ドンドコドン



「ハッ!」


みかんが。

法被を羽織り、槍を構え。

STARTの掛け声を上げて。


ようやく本当の意味で獅子舞が始まった。




つづく!

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