エピローグ 秋へ向けて
昨日の夜。
八月三十一日の、亜栖羽からのメールは、部屋で自撮りをした制服姿の写真が添付されていた。
『明日から新学期です♪ 学校楽しみ~♪ でもまだ暑いので夏服!』
と、元気なピースサインだ。
「あはは、可愛いなぁ…♡」
もう一文。
『童話、今度お会いした時にお見せしま~す♪ 恥ずかしいですけれど、オジサンに読んで欲しいです。> <』
「亜栖羽ちゃん、童話 完成させたんだな」
目標を一つ達成した少女を、青年は誇らしく感じた。
次のデートも楽しみだ。
今年の夏は、生まれて初めてと言い切れるほど、充実していた。
恋人とその友達と海に行ったり、恋人とドライブが出来ただけではない。
一緒に花火大会に行ったり、夏祭りを楽しんだり。
「亜栖羽ちゃん、楽しんでくれたみたいだし…。本当に良かった♪」
そして何より、思春期の頃からの大きな夢だった、恋人への「あ~ん」と、更にお返しの「あ~ん」を戴けた。
それだけで。
「生きてて良かった…っ!」
とはいえ、心残りというか、失敗もあった。
「夏休みに計画していた日帰りキャンプ、秋には実行するぞっ!」
ネットで調べて、日帰りが出来て予約が取れるキャンプ場を、現在も物色中だ。
他にも、秋ならではというイベントは多い。
各地での名産品や特産品のフェアや、キャンプほど本格的ではない紅葉狩りや、スポーツのイベントもある。
「普段から運動は心がけているけど…亜栖羽ちゃんと一緒にマラソン大会とかも、楽しいだろうなぁ…」
一緒に食べ物のイベントに行ったり、秋色も深まる山を散策したり。
それぞれの亜栖羽を想像すると、全てが愛らしくて眩しい青年だ。
「でへへ…と、とにかく、イベントのチェックは怠らないようにしないと…っ!」
亜栖羽からも、お出かけのお誘いを貰っている。
人生で初めての、恋人と過ごす夏を満喫した育郎は、大切な恋人にもっと色々と楽しんでほしいと、ワクワクしながらネットをサーフィン。
九月になった今日の天気も快晴で、時間的にも、亜栖羽は学校だ。
次の土曜日にも、デートの約束はしている。
窓の外は、少し空が高くなった感じがして、気温はまだ高めだけど、空気は秋色を含んでいた。
「もうすぐ秋だなぁ…」
亜栖羽と過ごす初めての秋を想い、育郎は遠くの青い空を見上げていた。
~エピローグ 終わり~
好きじゃなくって愛してる! ~夏休み後半編!~ 八乃前 陣 @lacoon
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