第二十四話 馴染みのお店の露店出張
大きくはないけれど綺麗な神社で、二人は参拝。
「可愛い神社ですね~♪」
「あんまり大きくないけどね。地元としても、そんな可愛い感じで若い女性たちにアピールしてるみたいだし」
露店巡りだけでなく、意外と多くの人たちが参拝に来ていた。
その大半は女性のグループだったり。
参拝を済ませた育郎たちは、来た道とは違う露店の通りへと向かう。
「それじゃあ、こっちから廻ろうか」
「は~い♪」
ケバブやザンギなど、この地域としては新しめな食べ物だけでなく、現在のヒーローヒロインのお面や紐クジなど、昔ながらの露店も多い。
人も溢れる露店の道を、青年は高い身長を有効活用して、何かを探していた。
「えっと…たしか、こっちの通りだと…」
「? 何か あるんですか~?」
「うん。お祭りではいつも…あった。亜栖羽ちゃん、あれ 見て」
育郎に示された方を見たら、なんとカモメ屋の露店が出店されていた。
数人のお客さんが並んでいて、賑わっているのが解る。
「あ~! カモメ屋さんですか~?」
「うん。毎年、神社のお祭りには 必ず出店しているんだよ」
思わぬお店に、亜栖羽も嬉しそうに小走り。
「こんばんは~♪」
「いらっしゃ~い。あら、亜栖羽ちゃんじゃない♪」
「あれ、っていう事は、育郎くんも一緒?」
「こんばんは。今日は…オムライスですか」
露店は、若旦那と若女将の二人だけで、大将と女将さんはカモメ屋さん本店で、孫をみながらノンビリお店を開いているらしい。
祭りの夜は客足も神社に取られるから、お店は二人でも回せるらしく、若い二人はお店では出さないメニューを販売しているのだ。
「っていうか、オムライスは 僕も最近になってようやく、納得できる味を出せるようになったからねえ♪」
若旦那の修行の一環でもあるこの出店は、毎回メニューも変わる。
それでも味は絶品だと評判なので、祭り好きの人たちには、絶対チェックのお店であった。
「育郎くん、っていうか、オムライス 二人前だよね」
「はい」
「あらあら~、亜栖羽ちゃん ちゃんと育郎さんに、色々ねだった?」
「はい~♪」
笑顔で応えながら、育郎が釣った水ヨーヨーを見せる少女だ。
「あらあら~、育郎さん、お手柄じゃない~♪」
などと話しているうちに、若旦那が卵を焼いて、若女将がジャーから紙パックへとチキンライスをよそって、焼いた卵焼きを乗せてケチャップを乗せて。
完成したオムライスは、チキンライスも熱々で卵もトロトロで、実に美味しそう。
「はい。少し大盛りにしておいたから♪」
と、亜栖羽に手渡しながら、小声の若女将。
「ありがとうございます~♪」
二人の後ろには、また数組のお客さんが並んでいた。
「それじゃあ、頑張ってください」
「毎度~♪」
亜栖羽にオムライスを受け取って貰って、育郎が支払いを済ませると、二人は小走りでお店から退散。
「さっき若旦那も言ってたけど、今年は材料も多めに用意してたみたいだね。それでももうすぐ、売り切れそうだったね」
「こんなに美味しそうですもの~♪ 私も、早く食べたいです~♪」
「そうだね。それじゃあ…あ、こっちの公園とか、見てみようか」
神社の近くに小さな公園があって、しかし当たり前に、家族連れがたくさんいた。
「こっちは 空きが無いか…」
どこか別の場所をと探していたら、ベンチに座っていた家族連れが、買った花火を楽しむ為に帰るところだった。
「あ、あそこで食べようか」
「は~い♪」
ベンチに座って、パックの蓋を開けると、オムライスの美味しそうな湯気がフワりと上がる。
「いい香り~♪ あ、オジサン、ご馳走様です~♪」
嬉しそうに微笑む少女が、キラキラと可愛い。
「それじゃあ、た、食べようか」
と緊張している育郎には、秘めたる目標が、実はあった。
~第二十四話 終わり~
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