第4話 鉄壁の都にて
「うーん、お前はこれだな」
そう言われ、手渡されたのは直剣だった。
直剣と言っても、石でできた鈍らの剣。斬るというよりも叩く、そんな剣だ。
「戦い方を教えてほしいと頼んだのは僕だから不満はないけど、どうせなら違うのが良かったな……」
「早速不満爆発だな、兄弟! ま、最初からちゃんとした物をお前に持たせたら危ないだろ。体力もない、力もない。そんなんで剣振ったら怪我するぜ」
「わかってるよ。でもいつか、僕もレクスみたいな大剣を振り回してみたいな」
「いーや無理だね。お前が何年頑張ろうと、こいつを片手で振り回すのは絶対に無理だ」
無理だと言いながら、左手で軽々と大剣を振って見せるレクス。
いくら筋肉質とはいえ、細身の彼にこうも軽々振り回されると、余計に簡単なものだと錯覚してしまう。
全てが始まったラミール村を出てから1日。
ファルドたちは王都を目指して山道を進んでいた。
だが、途中で王都へ繋がる道が土砂崩れにより通行不可能だったため、現在は遠回りで王都へと向かっている。
「そろそろ出発するよ。さあ、乗った乗った」
小休憩を終え、ファルドたちは馬車に乗り込む。
「小休憩の時間だけじゃあれだなぁ……。よし相棒、この時間も有効に活用ってことで腕立て伏せだ!」
「ここで!? そんな無茶苦茶な!」
「冗談に決まってんだろ。ま、剣を振るくらいならいい練習になるかもな」
「より無茶だよ!」
レクスは立ち上がると、進行方向とは真逆を向いて大剣を振るい始めた。
山道の石などを踏みながら、がたがたと揺られる馬車の上。しかし、レクスは驚くほどぴたりと安定しながら大剣を振るっている。
「武器を振るうには力が必要だ。だけどそれ以上に、身体の芯もしっかりしないといけねえのさ。身体の芯がぶれてると、武器を振るったってろくに力が入らないからな」
試しにやってみろと促され、ファルドも同様に立ち上がる。
「あ、あれ?」
思うように上手く立っていられない。
レクスは簡単に立っていたのに、馬車の上はファルドの想像以上の揺れで立っているのがやっとなほどだ。
「ほらほらどうした。まだ剣を振ってもいないぞー」
「う、くっ。こ、こうだ!」
剣を振りかぶった瞬間、ファルドの体はよろめいてそのまま馬車の外へと――。
「あっぶねえ……」
「ご、ごめん」
間一髪、レクスがファルドを掴んだおかげで落ちずに済んだ。
「こ、こんなのどうやったらできるようになるんだよ!」
「わかったろ、今のお前は非力なんだ。これができるようになればちょっとはマシになるんじゃねえか?」
「……うん、頑張るよ」
これが今の自分自身の実力であると身に染みて感じる。
英雄には程遠い現実を受け止め、ファルドは強くなることを改めて胸に誓った。
「――ところで、まだ聞いてなかったんだけどさ。呪術師を探してる理由って?」
荷台に座り込んだファルドが、ふと問いかける。
ラミール村でのレクスの誘い言葉。ここから連れ出す代わりに、目的を手伝ってほしいというもの。
経緯がどうであれ、共に旅をすることになった以上、彼の目的はファルドの目的でもある。
「王都での探し物って、その呪術師って人の事だったのかい?」
手綱を引く馬主が、待ってましたと言わんばかりに口を開いた。
肝心のレクスはばつが悪そうな表情で唸り声を上げる。
「あー、その話は王都に着いてからな」
「そんなにここじゃ言いにくいこと?」
「そういうわけじゃねえけど。ま、王都に着いたら言うって言ってんだからいいだろ、な!」
「うーん、わかった」
納得はできないが、これ以上聞いたところではぐらかされて終わりだろう。
ファルドはそれ以上聞くことを止め、外の景色を眺めることにした。
「おっちゃん。王都まではあとどんくらいかかるんだ?」
「あと1日半、ってところかな。当初の予定からは少し遅れてしまっているからね」
「まだそんなにかかんのかよ……」
レクスは溶けるように項垂れると、寝ると言って目を閉じた。
「外の景色見てればすぐなのに」
自分の知らない世界をあと1日半も見ることができる。そう思うファルドの心は踊るようだった。
ラミール村以外のことは書物でしか知ることが出来なかった世界を、自分の目で見ることができる。ただそれだけで、満足なのだ。
「そっちの若いのはどうして旅をしようと思ったんだい?」
景色を眺めるファルドに、馬主が声をかける。
「僕は世界を見たいんです」
「世界?」
「はい。ずっと、『伝記』の中の英雄に憧れてた。『始まりの伝記』みたいな人たちのように世界を見て回りたい。色んな人たちと出会って、気の置ける仲間と冒険したい。そしていつしか、憧れた人たちみたいな英雄になりたいって」
塔で過ごしていた頃は胸を張って言えなかった憧れ。
それを口にするのに、もう一切の躊躇は無い。
「『始まりの伝記』、懐かしいなぁ。私も好きだよ。だけどね、王都や他の場所でそれを口にするのは止めた方がいいよ」
「……神子が良く思われていないから?」
「半分は正解かな。確かに昔は『始まりの伝記』が主流だったけど、今では『神人伝記』っていうその後のお話が主流になっているのさ」
「『神人伝記』、ですか?」
聞いたことがない単語に、ファルドは聞き返す。
「やっぱり、その様子じゃ知らなかったみたいだね。『始まりの伝記』の最後は、神々の黄昏によって終焉を迎えた世界を英雄たちが救って終わりだったね。『神人伝記』は、神々の黄昏を引き起こした者たちを断罪した人々の話なんだ」
「断罪……? それってどういう?」
「神々の黄昏を引き起こした者たち――つまりは『始まりの伝記』で英雄と呼ばれているような者たちの事さ。彼らがいなければ終焉を迎えることはなかったからね。そんな彼らを断罪した人々を神人と呼び、崇めたのが『神人伝記』の内容なんだよ」
言葉が出なかった。
ファルドが憧れた英雄たち。それが今や世界を終焉に導いた存在として扱われていることが信じられなかった。
「だから、神子を特別扱いしている場所なんて本当にごく一部しかないんだよ。これから向かう王都だって、神子はいるけど殆ど特別扱いなんてされていないんだ」
「そう、ですか」
「それにね、『始まりの伝記』は知ってる人も少なくなってきてる。『神人伝記』が流行り始めてからどこの店も置かなくなってしまったし、最近の若い子らはもう名前すら聞いたことがないだろうね」
「……そんな」
「だから、『始まりの伝記』の神子に憧れているだとか、そういうことを口にすると笑われてしまうから気を付けるといいよ」
村長が話していた神子が良く思われていないという事実。それが真実だった事に、ファルドの気分が沈む。
分かってはいたことだが、心のどこかで嘘であることを願っていた。
「――とはいえ、こんなことを言ってる私も君と同じ『始まりの伝記』ファンでね。私と同じようなのが少なからずいるとは思うよ」
そう言って笑う馬主。
まだ世界中の人に良く思われていないわけじゃない。思われていようと、自分でそれをひっくり返せばいい。
そんな気持ちが強くなっていく。
「だから、さっきのはおじさんからの助言ってことで。もし英雄になったら、助言を与えた者として広めてくれると嬉しいね」
「はい!」
ファルドは力強く頷くと、より一層の決意を秘めて拳を握った。
今の想いを零さないようにしっかりと。
□
揺られ続けて1日半。ファルドたちはようやく、王都の目前まで辿り着いていた。
「着いたよ、ここが王都アルベンハイルの入口さ!」
目の前にそびえるのは、見上げる程の巨大な石門。
村の物見塔よりも大きく、高いそれに圧倒され、思わず声を漏らす。
「なんだこれ……」
「早速田舎もんがばれんぞ。静かにしとけ」
「べ、別にいいだろ。田舎者で悪かったな!」
「まあ、王都はこの大陸で一番大きい都だからね。『鉄壁の都』だなんて呼び名もあるんだけど、大概は外観を見て納得するものさ」
馬主の言う通り、都を囲む門はどうやっても崩せないような鉄壁の守りであると納得せざるを得ない。
少なくとも、ファルドの頭では何をしようにもこの壁を崩す方法は見つからない。そんなことを考えるくらいなら、どうやって入るかを考えた方が早そうだった。
話すうち、馬車はゆっくりと門に近づいていく。
門の前では、多くの人々が並ぶ待機列が形成されていた。
「これって何待ちなの?」
「入国の待機列だ。ここで怪しまれると、疑いが晴れるまで尋問されんだよ」
「ふーん。大変なんだな」
「他人事みたいに言ってるけどな、うかつに神子のような英雄になりてえなんて言ってみろ。即刻尋問だからな」
淡々と話すレクスの言葉を一度は流したファルドだったが、他人事ではないことを感じすぐさま聞き直した。
「いくらなんでも尋問なんて流石にないでしょ?」
「考えてみろ。こんな立派な壁に囲われた都の玄関口だぞ。警戒厳重に決まってるだろうが。そんな場所で神子に憧れてるなんていうやつ通すか? 危険因子だろ」
「……それ一番危ないのって、僕?」
「他に誰がいるんだよ」
背中に込められる力が強くなる。
ぴしっと真っ直ぐに背を伸ばし、着々と近づくその時を待った。
「――よし、通って良いぞ。さて、次は……」
前の商人たちの検査が終わり、兵士たちが馬車の側へと寄ってくる。
「この荷物は?」
「王都で装飾品を売ろうと思いまして、その為に参りました」
馬主がそう告げると、兵士はちらりと荷台へ視線を送る。
その視線はすぐさまファルドたちへと移り。
「この者たちは?」
「道中雇った用心棒です。装飾品を運んでいると野盗に襲われてしまうこともあるので」
「確かに、最近はそういったものが多いと聞くな。では、商品を見させてもらうが構わないな?」
馬主の言葉に納得した様子の兵士が、荷台に詰まれた装飾品を手に取った。
いくつかの装飾品を見た後、満足げに口を開く。
「成る程、これは立派な装飾品だな。是非うちのかみさんにもくれてやりたいもんだ。よし、通っていいぞ」
道が開かれ、馬主が再び手綱を引く。
ゆっくりと門をくぐり、離れていく兵士たちを背にファルドが安堵の表情を浮かべた。
「き、緊張した……」
「堂々としてりゃあ怪しまれることもねえんだ。これから旅を続けてりゃあ関所を通ることもあるんだから、色々と気を付けろよ」
「そうだよね、今後もこういうことがあるんだ。レクスみたいに堂々としないと――」
その時、一行のすぐ脇を走り過ぎる一頭の白馬。
それに跨り、黄金の髪をたなびかせる女と目が合ったような気がした。
ファルドは目を奪われたように過ぎ去っていく女の背を追う。
その背は一瞬で遠のき、門をくぐってどこかへと姿を消してしまった。
(あの人は一体……)
「どうした?」
「いや、何でもないよ」
「そら、門を抜けるぞ」
がらがらと車輪を鳴らしながら、ファルドたちを乗せた馬車が門を通り抜ける。
そこに見えたのは、ファルドの想像を超えた光景。
広い田畑の中に数件並ぶ村等ではない、伝記の中でしか見たことのないファルドにとっては御伽噺の街並み。
「これが、都……」
遠くに見える豪華で大きな建物まで伸びる、広く長い大通り。
それを囲むように、石造りの建物が隙間なく並んでいる。
見たこともないほどの大勢の人々が賑わい、ファルドの耳には絶えることなく声が聴こえ続けている。
これが、本の中でしか見たことがなかった景色。
そんな王都アルベンハイルの街並みに、ファルドは心を奪われていた。
「お前いくらなんでも見渡しすぎだろ。田舎者まるだしじゃねえか」
「始めて見るんだ……。凄い、凄いよ」
目を輝かせて都中を見渡すファルドに、レクスは呆れるように笑った。
「――さてと、じゃあここらでいいぜ」
「おや、いいのかい? まだ入口だけど、宿まで送っていかなくて大丈夫かい?」
「ああ、問題ねえ。随分世話んなったな、助かったぜ」
大通りを少し進んだところで馬車を止め、運んでくれた御者の男に軽く挨拶を済ませる。
「あの、ありがとうございました」
「君の夢が叶う事を僅かながら応援するよ。頑張って」
そう言って笑う御者。
ファルドは男に負けず笑顔で応えた。
「……はい! いつか必ず!」
遠ざかっていく馬車を見送ると、レクスは荷物を抱えて歩き出す。
「よし、早速行くとするか」
「どこに行くって?」
「同盟だよ、同盟」
そう言いながら先を進むレクスの背を追う。
彼が口にした同盟という単語は、ファルドにも聞き覚えのあるものだった。
「同盟って、伝記に出てくるあれの事? 神子たちが結成したっていう」
「ああ。神話大戦の終結後、神子たちが誓いを立てて築いた集まりの事だな」
始まりの伝記の最終章に書かれた神話大戦。その後日譚に、神子たちが盟約を交わし、いくつかの同盟を築いたという一説が載っていた。
「今もまだ同盟が残ってるのか……本物が見られるなんて楽しみだな!」
「これから行くのは『
「そうなんだ……あれ、でもさ。神子って世間的にはあまり良く思われてないんだよね? それなのに神子が創った同盟が王都なんて目立つ場所にあるんだな」
「ま、同盟って言っても残ってんのは名前だけだしな。昔は神子だけの集まりだったのかも知れねえが、今は仕事の斡旋所――組合みたいなもんだ」
先を往くレクスの後を追って大通りを進み、細道へと入る。
迷子になりそうな曲がりくねった路地裏を抜けると、また大通りのような開けた場所へと出た。
目に入ったのは、往来の激しい大きな屋敷。
「大きい屋敷だ……」
思わずファルドが声を零す。
ラミール村の村長宅よりもずっとずっと遥かに大きい。もしかすると、ラミール村1個分はあるかもしれない。
そう呆ける彼に見向きもせず、レクスはさっさと屋敷へと向かっていく。
我に返ったファルドは速足で。
「ここが同盟?」
「まあ着いて来いって」
屋敷の扉を開き、中へと入っていく。
目に映るより早く、聴こえてきたのは笑い声。
酒場のような場所だろうか。
それぞれのテーブルで、酒や食事を楽しむ人々。カウンターで受付と会話しながら悩んでいる人などの姿が。
剣士や魔術師、中には学士のような者も見える。
(これが同盟本部? 見た感じ、ただの酒場にも見えなくはないけど)
レクスの足は一つの場所へと一直線に、屋敷の中央のカウンターに立つ女性のもとへ。
「ようこそ、『岩鴉』へ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」
人当たりのよさそうなにこやかな笑顔で出迎えてくれる女性。
「盟主に伝えてくれ。お前の旧友が挨拶に来たってな」
「……はい? 本日はそういったお約束をしているとは伺っておりませんが」
女性の眉がぴくりと動いた。
「伝えてくれりゃあわかる」
「ですから、お約束をされた上で来ていただけなければ困ります」
先程まで笑顔だった女性から、それが消える。
その様子を見ていた一部の男たちが、レクスを見て。
「おい、あいつってもしかして」
「ああ、あの左腕の真っ赤な籠手、間違いねえ……」
「
(赤腕? レクスの事を見て言ってるみたいだけど……)
誰かが呟いた『赤腕』という呼び名に、場の雰囲気が張り詰める。
そんな場を鎮めたのは、1人の男の声。
「――相変わらずじゃないか、レクス」
2階へと続く階段を降りてきた黒髪の好青年が、手すりに身体を預けながら声をかけてくる。
「お前もな、オスカー」
どうやら、あの男がレクスの言う旧友らしい。
「執務室で話そう。さあ、こっちだ」
「行くぞ」
レクスと2人、オスカーの後を追いかけるように階段を上がっていく。
廊下の突き当りにある部屋に入り、オスカーと呼ばれた男の対面に座った。
男は部屋の隅に待機している給仕たちを退室させると、改めて口を開いた。
「久しぶりだね、レクス。そちらの少年は始めましてかな?」
「あ、始めまして。僕はファルドといいます」
「ご丁寧にどうも。俺は同盟『岩鴉』の盟主をしているオスカーという者だ」
(さっきもレクスが盟主って言ってたけど、同盟の長とかなのか?)
そんなファルドの心を読んだかのように、レクスがすかさず口を開く。
「盟主――つまりは同盟『岩鴉』全体のトップなのさ、こいつは」
「まだまだ若輩者だけど。まあ、よろしく頼むよ」
2人は軽く会釈を済ませると、オスカーはレクスへと向き直り。
「――さて、君がここに来た理由は分かっている。呪術師の件についてだろう? その様子だと有力な情報は得られなかったようだからね」
「半年探し回ったんだが何一つ痕跡がねえ。何か情報は無いのか?」
「――そうだった、呪術師を探してどうするの?」
始めて出会ったあの日。
レクスの口から聞かされた旅の目的。それは呪術師を探す事だった。
都に着いたら話すと言われていながら、今の今まで話されなかったその目的に再度疑問符を持った。
「なんだ、レクス。連れ合いには事情を話してなかったのか?」
ばつが悪そうに頭を搔きながら、レクスは口を開く。
「オレの目的は世界を巡る事――そして、呪術師を見つけて殺す事だ」
「殺す? どうして殺すんだ?」
「仇だからだ」
「仇……?」
それきり、レクスは口を開かなかった。
ファルドは聞いてはいけなかった事のような気がして、思わず「ごめん」と呟いた。
「……話を戻そう。それで呪術師の情報なんだが、実は王城に出入りしたという話を聞いた」
「そいつは本当か!」
「ああ、恐らく何かしらの伝手を使って国王に謁見したんだろうが、目的は不明だ」
「なら早速国王に話を聞きに行くぞ。行き先が分かるかもしれねえ」
立ち上がるレクスを制止する素振りを見せるオスカー。
「待て。国王に直接謁見なんて、当日に突然出来るわけがないだろう。――そこでだ、俺の依頼を達成してくれたのなら国王への謁見を取り次いでも良い。どうだ?」
「……何をすりゃいい?」
「盗賊退治だ」
依頼内容を聞いたレクスは鼻で笑いながらドスンと座りなおす。
「何かと思えばそんなもんかよ。いいぜ、やってやる」
「ちなみに、その盗賊には国王も手を焼いているんだ。王都の最高戦力である騎士団に討伐を要請するくらいにはね。だけど、騎士団は多忙で未だ討伐には踏み込めていない。これを解決できれば国王も喜んで謁見に応じるだろうさ」
「そういうことかよ。なら今すぐ向かう。場所は?」
「え、今から!?」
「ったり前だろうが! 早くしねえと先越されちまうかもしれねえんだぞ!」
勢いよく立ち上がったレクスは、今にも部屋を出ていきそうな勢いで告げる。
「場所はここから南西に向かったモルドモルだ。名前くらいは聞いた事あるだろう?」
「遺跡街モルドモルか……。馬車で一日ってとこだな。よし、相棒! 馬車捕まえてこい、急げ!」
「ええっ、僕!? わかった、わかったよ! だからそんなに押すなって!」
レクスに急かされながら、ファルドは部屋を小走りで飛び出していく。
そんな様子を見ながら、オスカーは真剣な眼差しでレクスに問いかける。
「……君が仲間を連れるなんて、どういう風の吹き回しだ? もしやあの少年が、そうなのか?」
「確証はねえ。だが、きっとあいつが『あの神子』だ。まだ不安定で、本人も自覚はねえみてえだけどな」
「以前よりもすんなり依頼を受けると思ったけど……彼の力を試すことも兼ねて、か」
「さてな。ま、行ってちゃちゃっと片付けてくるから国王への根回し頼むわ」
こうして、ファルドたちは盗賊退治をするべく遺跡街モルドモルへと足を運ぶのだった。
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