ハイドのその後


 あれからも順調に依頼をこなして、無事Aランクに昇進した。もともとCランクの実力は有ったらしいから当然とも周りからは言われる。


 剣術の腕も母様に並んだ。剣帝であるシャル母様に模擬戦で勝てたのは気持ち的にも大きく前進できた。


 ビアンカもフローラもそれぞれ武術大会などで優秀な成績を収めている。


 今も三人で冒険者活動をしている。俺たちに足りないのは魔法使いだ。

 最近ヨウコちゃんさんが魔力が不足しがちになっているそうで不参加になっている。もともと父様から魔力を供給してもらっていたからガンガン魔法を放つことが出来ていたが、ヨウコちゃんさんは魔法が強力な分燃費が悪いんだそうだ。だから以前はダンジョンに篭って魔力を吸っていたという話だ。


 多分今の俺たちは物理攻撃なら王国一だろう。それなりに努力はしてきたからな。


ーーーーーーーーーーーーー



「Aランクパーティーのお前たちに頼みが有る。新ダンジョンの調査だ」

「わかりました。やりましょう」


「ねぇ、兄さん。危なくない? サラさんも連れて行こうよ」

「そうですわ、お兄様。私たちではトラップに気付かなくて大変な事になるかも知れません」


「そう‥‥‥だな。サラさんとローズさんにも来てもらおうか」



「わかった。お前達を危険に晒したら旦那に会わせる顔がないからな」

「そうニャ。腕が立つのとダンジョン攻略は別だからニャ」


「よし、よろしくお願いします。行きましょう!」


ーーーーーーーーーーーーー


「で、ここはどんなダンジョンニャ?」

「以前の様な水浸しダンジョンじゃなければ良いけどな」

「え? なんですか? それ‥‥‥」


「ネロから聞いてないニャ? 水浸しでとてもまともにはクリア出来なかったニャ」

「あんなの旦那にしか出来ないよな」

「ねぇ、父様はどうやったの?」


「水浸しダンジョンの水を全部無くしたニャ」

「どう言う事でしょう? 水を全部?」


「どうもこうもそのまんまだよ。お陰で楽勝過ぎてダンジョン攻略じゃなくて魚介類バイキングみたいになってたからな」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


「お前たち、知らなかったニャ?」


「‥‥‥はい。父様は優しくて背が高いのは覚えてるんですけど、あまり強そうには見えなくて‥‥‥」

「水の魔法しか使えないからなって笑って何も教えてくれなかったわ」

「この間のお兄様の話を聞くまでは他の女の人のところに行ってしまったとばかり‥‥‥」


「お前ら、なかなか酷いこと言うニャ。まぁ、女好きは否定出来ないけどニャ」

「旦那の魔法は規格外だから、お前たちに出来ないから教えなかったし、見せなかったんだろうぜ」


「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」」



「と、話してたら着いたニャ。ここで間違い無いニャ?」

「はい。ここですね。サラさん、何か感じますか?」


「うーん、よくわかんねぇなぁ。なんだ? このダンジョンは? 敵の数は多いけど」

「俺のカンですけど‥‥‥、モンスターハウスダンジョンかもしれませんね」


 モンスターハウスとは入った階がモンスターで埋め尽くされている状態の事で、それが全ての階でそうなっているダンジョンはAランクかSランクでないと攻略出来ないとされている。


 今回は調査という事だが、モンスターハウスに入ってしまえば、こちらかモンスター側が全滅するまで戦闘が続く。


 こんなダンジョンに潜ったら命がいくらあっても足りないだろう。撤退してもっと大人数で対処すべき案件だろう。これを受けたのが例え父様だったとしても‥‥‥




「こういう時にネロならニャー」

「旦那なら、即殲滅してただろうなぁ」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


 俺は撤退がベストだと思った。だが父様がいたならすぐにここをクリア出来るみたいな物言いが何となく腑に落ちない。

 俺たちだってそれなりに頑張ってAランク冒険者として研鑽を積んできた。

 その俺たちが撤退するのに父様なら進めるのか? 

 そんな事あるのか? 

 父様の魔法はそんなに凄いのか?

 


 悔しいっ!!!

 今はっきりわかった。

 父様はすごい魔法を使えるのだろうが、水魔法だけなんだろう? 実際に見て無いし、俺たち三人よりも本当に父様は強いのか?


 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 そんな事‥‥‥あるものか!!!


「進みましょう。ローズさん、サラさん」

「ニャ?」

「ハイド、このダンジョン進むって言うのか?」


「はい! 進みましょう。俺たちだって負けてないはずだ!」

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