チームハイドの活躍


「ハァーーッ!!!」

 俺の剣がオークを引き裂く。 


「セイッ! セイ、セイ、ハッ!!!」

 フローラの拳と蹴りでゴブリン達を吹き飛ばす。


「そりゃあぁーーーーーー!!!」

 ビアンカの槍がリザードマンを薙ぎ倒す。


「すごい勢いだニャ~、ウチら出番ないニャ」

「あいつら、ホント強くなったなぁ‥‥‥」


 この後も快進撃を続けた。

 俺たちは不思議と疲れないからな。


 さすがに四階層ともなると、敵自体が強くなってきた。あとは単純に物理攻撃だけじゃ効かなくなってきている。物理耐性のあるモンスターが増えてきた。


「どうする? 引き返すか?」

「ヤダ!!」

「嫌です!!」


 俺も一応聞いてみただけだ、引き返すつもりはハナからない。疲労している訳では無いし。




 五階層、フロアボスがいるはずだ。魔力が少し心許なくなってきたかな。帰りの分を考えるとそろそろ引き返すタイミングだろう。


「そろそろ戻ろう。ここまでのマッピングは出来て‥‥‥!!!! ハイド! 危ない!!」

「え? !!!!」


 サラさんが突き飛ばしてくれたお陰で俺は怪我をしなかった。‥‥‥俺は。


「大丈夫かい‥‥‥? ハイド‥‥‥」

 サラさんの肩に深々と矢のような針? が刺さっていた。

「!!!! サラさん!! ローズさん! サラさんが‥‥‥」

「大丈夫ニャ、ネロのポーションが‥‥‥ってまだまだ飛んでくるニャ!! 避けるニャ!」


 くっ! 相当な数の針が飛んできた。剣で払いつつサラさんを担いでその場を離れる。


 皆それぞれ針が掠ってしまったが、コレくらいなら‥‥‥。


 !? なんだ、これは‥‥‥、手が痺れる。剣を取り落としてしまった。


「ククク、麻痺毒が効いたようですね。やはりあなた方はこうするに限ります‥‥‥」


 暗闇から現れたのは執事に似た格好のモンスターだ。大きな角と蝙蝠の様な羽があった。

 魔族というやつか?

「なっ!? 麻痺毒だと‥‥‥? 貴様は誰だ‥‥‥?」

「これはこれは失礼しました。私は火針のプロクス。ここのフロアを任されております」



「なに‥‥‥何故フロアボスがボス部屋から出てきている?」

「ここは特殊なダンジョンでございますゆえ。他の方々もちゃ~んと効いているようですねぇ?」


「ぐっ! お前らだけでも逃げるニャ!!」

「ローズさん!!」

「うちは足が麻痺してるニャ。せめてここでこいつを食い止めるニャ! サラも置いてけニャ! 足が動くなら三人は逃げるニャ!」


「そうはいきませんよっと!」

「キャアッ!!!」

 ビアンカの足に針が刺さる。


「そっちのお嬢さんもっ!」

「キャアッ!」

 フローラも歩けなくなった。


「はい、貴方もっ!!」

「くっ! そうはいくかっ!!」

 利き手と逆で剣を持ち、払い除ける。


「ほう! 素晴らしい剣の腕ですねぇ。迂闊に近づくところでした。危ない、危ない、離れて攻撃しましょう。そして、コレだけの針は防げないでしょう?」


 くっ!! あの野郎、数えるのも嫌になるくらいの針を出してきやがった。


「ぐあぁーーー!!!!」

 ぐっ、ほとんど全身を刺された‥‥‥。


「痛いでしょう? そういう針ですからねぇ。私、強い冒険者をこうしてから蹴りつけるのが大好きでしてねぇ‥‥‥」


「‥‥‥妹達に‥‥‥手を出すな‥‥‥!」

 

「ほほーう!! 美しいぃ!! 実に美しいぃ!!! 兄妹愛というやつですかねぇ! よろしい! 貴方から先に痛めてあげましょうねぇーーーーーー!!!!」




「そら! そら! そら!! 痛いでしょう!? ほら、こっち向いてその表情を見せて下さいよ!!」


 ぐっ!! くそっ、こいつ楽しんでやがる。

全身を針で刺されたが、這うようにして妹達に覆い被さる。せめてコイツの蹴りが当たらないように‥‥‥。

 だがいつまで保つか‥‥‥。


「ふーう、貴方は声を上げないからツマラナイですねぇ~。そ~れっ!!」

 掴まれて投げられた‥‥‥。

 二人も手足が麻痺して無防備だ。


 まずい‥‥‥!! 




「だ、だれかっ‥‥‥!!!」


「クククッ! 誰も来ませ‥‥‥ぐはっ!!」

 突然、ヤツが吹き飛んだ。



 一瞬光って声がした。

「すまん、遅くなった‥‥‥」


 聞き覚えのある声‥‥‥


「ハイド、妹達をよく庇ってくれたな」


 黒い髪、黒い服‥‥‥そして黒い目‥‥‥


「ありがとな、あとは‥‥‥」


 来てくれたんだ、父様‥‥‥


「俺に任せろ!!」

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