もう一人の「彼女」

 俺には大切な彼女が。俺は彼女の為ならこの身を投げ出しても構わないと思っていた。だが、彼女はいなくなってしまった。

 朝、家まで迎えに行くのが日課だった。その日もいつも通り迎えに行った。

 だが、返事はなかった。普段なら飛び出してくるのに今日は来なかった。

 不思議に思ってドアの取っ手を握ったが開かなかった。いや、半分くらいは開いた。鍵はかかっていないのになにか重い物体が邪魔しているようだった。

 これはマズい、なにかの事件に彼女が巻き込まれているかもしれない、と焦った。急いでタックルするとドアは簡単に開いた。同時に俺は絶句した。

 そこには冷たくなった彼女が倒れていた。

 俺はどうしたらいいか分からず死体を家の押し入れに隠した。

 そして気が済むまで泣き叫んで、八つ当たりして、気が付いたら夜になっていた。頭の中は彼女を殺した犯人捜しでいっぱいになっていた。そして、俺が唯一憎むべき奴を見つけた。そうだ、奴が殺したに違いない。

 俺は彼女に変装し、仇をうつことにした。

 次の日、彼女はこう供述した。「前日一緒に練習しただけです。」

 そして、彼女は待ち続けた。奴が来るのを。

”それは「彼女」なのだから”

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