彼女の死(2)

 副部長は部長と共に吹奏楽部の練習場所を探していた。普段屋上で練習をしているのだが、その日は校舎の工事の関係で立ち入り禁止になっていた。

 副部長はある教室の前で立ち止まり、

「この部屋にしよう。」

 と言った。その部屋には同じ吹奏楽部でトランペットを演奏している女子の姿があった。

 部長はあまり乗り気ではなかったが、他に練習できる場所も見つからず、諦めて副部長と共に入った。女子は少し驚きながらも演奏を続けた。部長は会釈をしながら教室に入り、練習を始めた。

 曲が終わった頃だろうか、片付けもせずに女子は飛び出していった。女子は酷く慌てて、

「お兄ちゃんを止めなきゃ」

 と言いながら走って出て行った。部長は首を傾げながらも練習を続けた。

 練習を終え、楽器を片付けている時、副部長は言った。

「あいつ帰ってこないな」

 部長は

「どうしたんでんしょうね?」

 と不思議そうに言った。

 翌日、女子が死体で見つかった。それも部長に対する憎悪が書き綴られた遺書と共に。

 知らせを聞いた部長はショックだった。あの時止めていれば助かったかもしれない、と後悔した。

 警察による取り調べがあったが、あまりのショックで、前日一緒に練習しただけです。としか言えなかった。女子が酷く慌てていたことも忘れて。

”そのトランペットは音が出ない”

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