第144話 またあなたですか。
アイザックside
食事も終わり少しの団欒の後、再び話し合いをしようと皆をテーブルに呼ぶと、ソフィアがシャルロッテの膝枕で気持ち良さそうにすやすやと眠っていた。
ふぐっ……!?
眠っている可愛いソフィアを再び見れるなんて! こんな幸運が連続で続くなんて事ありえるのか? 大丈夫か? 僕は明日死ぬんじゃ?
なんならその膝枕係を再び変わって欲しい所だが、その気持ちをグッと飲み込み「気持ち良さそうに寝ているのに、起こすのは可哀想だ」と毅然と振舞った。
んっ? まてよ? って事はだ。ソフィアを部屋まで運んで行くわけで……それは……誰かがソフィアをお姫様抱っこして運ぶわけで……あぐっ!
「あのう……アイザック殿下どうされましたか?」
僕が想像だけで悶絶し身悶えていると、シャルロッテ嬢が困惑した顔でこちらを見つめている。しまった。僕とした事が、失態を見せてしまった。
「んんっ? なっ何でもないんだ。気にしないでくれたまえ。さっソフィアを部屋に運ぼうじゃないか」
僕が何食わぬ顔で、サッとソフィアを抱き抱えようとしたその時「ちょっと待ってくれ、その役は僕が」などと言い出した奴がいた。そう空気を読まない男ジーニアスだ。
クソっ。そうだったアイツがいたんだった。
毎回いいタイミングで邪魔してくるんだ。
だが今回はこの役だけは譲れん。
「いやっここは婚約者である僕の役目だから」
「なっ婚約者と言っても(仮)だろう? なら僕と同じ立場だと思うけど?」
「いやっ(仮)であろうと僕が婚約者なのには変わりないからね!」
「なっ!?」
などと言いあいになってしまい。「静かにして下さい。ソフィア様が起きてしまいます」とシャルロッテ穣に注意されてしまう。
「「……すまない」」
「中々決まらないようですし、ここはどうですか? 馬車の時と同じく公平にジャンケンをしては?」
シャルロッテ穣が、ジャンケンで決めたらどうだと言ってきた。
「「ジャンケン」」
くっ……なんて事だ! ここでまた運勝負なんて! もう僕は今日の分の運を使い果たしているはず。いや……二分の一なんだ! 負けるとも限らないぞ。
「ではジャンケンしますよー」
「「えっ!?」」
シャルロッテ穣がいきなりジャンケンを始めるので、僕は慌てて出す手を考える。
「ジャーンケーンでホイッ」
出された手を見ると俺とジーニアスはグウ、あっあいこだ。
「やったー私の勝ちですね」
シャルロッテ穣が勝ちと喜んでいる。その手はパーと大きく開いて。
「えっ……シャルロッテ穣も参加していたの?」
突然の出来事に理解が追いつかない。もしかして僕はこの重要な勝負に負けたのか?
「もちろんですわ! ソフィア様をお姫様抱っこできるなんて! そんな至極タイム、いくらアイザック殿下とはいえお譲りできませんわ」
「あっな……」
僕とジーニアスが余りの衝撃に、脳が追いつかずに固まっていると。
「ソフィア様では失礼します」
シャルロッテ穣は騎士のように颯爽とソフィアを抱き上げた。
頬は心なしか桃色に染まっている様にも見える。
「では部屋にお連れしますので、扉を開けて頂けませんか?」
「「…………」」
「あのう?」
「あっああっ! すまない。エスコートするよ」
僕は慌てて扉を開けて、シャルロッテ穣を手伝った。
くう……扉を開けるんじゃなくてソフィアを抱っこしたかった。との心の叫びを飲み込んで。
もちろんこの後の話し合いは、僕とジーニアスが上の空で使い物にならなかった為。
明日の朝、レストランのラウンジでゆっくり話し合いをする事にしたのだった。
★★★
「ふぁーあ……」
うう~ん。よく寝たわねって、あれ!? 私昨日はアイザック様達のお部屋で話し合いをしてた……?! ふと部屋を見ると自分達の部屋だ。
なんで自分の部屋で寝ているの? 私……話し合いの記憶が全くありませんけども。私はみんなが大事な話をしている時に呑気に寝ちぎっていたのだろうか? イビキとかかいてないよね。
考える程に嫌な汗しか出てこない。
「あっソフィア様。起きたんですね♪ おはようございます」
「……シャルロッテおはよう」
私が困惑している事に気付いたのか、シャルロッテが「どうかしましたか?」と心配そうに質問してきた。
「そのう……昨日って……アイザック様達のお部屋で話し合いしていたのに……」
「あっそれはですね。ソフィア様が、お食事の後そのまま寝られていましたので、争奪戦に勝った私がソフィア様をベットまでお運びしました」
嬉しそうにシャルロッテが笑うけども、お腹いっぱいになったら寝るとか、私何しちゃってるの?
子供じゃないんだから……ううっ恥ずかしすぎる。
それに争奪戦って何?! シャルロッテは勝ち誇っていたけど……。
「あっ! それでですね。昨日は結局話し合いにならなかったので、今日の朝食時にレストランのラウンジにて話し合いましょうって決まりました」
「今日になったの?」
良かった! 寝て話し合いをすっぽかしたとか、情けなかったから。今日再びするなら、汚名返上が出来るわ!
「じゃあ身支度をして、レストランに行きましょう」
待ち合わせに気を取られ、争奪戦の事を聞きそびれてしまった。
でもまぁ。聞かなくても大丈夫よね?
★★★
この大きな宿泊施設には、レストランの横にお茶などをゆっくり飲んだり出来るラウンジが、併設されている。
ソファーもゆったりしていて、のんびりと寛げるようになっている。
私達は朝食を食べた後、ラウンジでお茶を飲みながら、さぁ今から大事な話をしようとしていたその時、耳障りな声が近付いて来た。
「あらぁ? まぁ。またお会い出来るなんて」
「あっ……」
プルーチン令嬢がまた登場した。
なんでそんなに縁があるのよ。
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