第106話 ビッグボア
「では光魔法を送りますね」
シャルロッテが結界石にふれ光の魔力を送っていく。
キラキラと黄金色に輝く光の粒子がシャルロッテから結界石に流れていくのが見える。
「綺麗……」
キラキラと輝く魔法の粒子を纏ったシャルロッテに見惚れていると
ーーおい。悠長にしておる時間は無いようじゃぞ?
そっそうだった! 私にはビックボアを討伐すると言う使命が。
早く行かなくっちゃ!
「聖霊王様は討伐を手伝ってくれないんでしょ?」
ノーって言いそうだけど一応聞いてみる
ーー我がこのような自然の理には関わってはの? 色々とおかしくなってしまうのじゃ。じゃがソフィアならあれくらい余裕じゃと思うよ?
ほらね。精霊王様って肝心の所は自分達で頑張れなのよね。余裕って言うけどどうやって討伐するのよ。私は魔獣の討伐経験とかゼロなんだからね?
「じゃあどうやって討伐したら良いのかアドバイスください」
ーーふむ? いつもシルフィと森の草や木々を風魔法を使って切っておるじゃろ? 今度はビックボアの巨体をスパッと切る事をイメージしたら良いんじゃよ。
なるほど! 木を切る感じで魔獣達を切るか。精霊王様のくせになんて適切なアドバイス。
「ありがとうございます! では行って参ります」
自分の体に魔法を纏い、身体強化すると、ビックボアがいる方角に向かって思いっきり走っていった。
「あっソフィア! 僕も一緒に行くからっジーニアスはシャルロッテ嬢に結界石の案内頼んだよ!」
「なっ何で僕が!? 僕だって魔獣達を討伐に……」
「だってジーニアスがいないと結界石の場所が分からないだろ? それに討伐なら僕の方が向いている」
「はいはい。……結局アイザックの役得だな」
話し合い?の結果アイザック様がついてきた。
「アイザック様!?」
身体強化した私の速度について来てる! 何で?
「ふふ? 驚いた? 僕だって身体強化くらい使えるさ。ただソフィアと一緒に森にハーブを取りに行ったりしてたわけじゃないんだよ? ちゃんと修行もしてたのさ」
知らなかった。
アイザック様がどんどん男らしく見える。
村を出て五分ほど走って行くと、地面が揺れるような激しい足音が聞こえてきた。
「これはビックボアの足音だね。もう近い、少し行った所で待ち伏せして倒すか」
「はい」
「ソフィアは魔法で援護してくれる?僕が剣で斬って行くから」
「分かりました」
数分もすると、ビックボアの姿を目で捉えることが出来る距離まで近づいてきた。
あの姿は丸々太った猪!
三メートルもあるのに手足が短くって、風船に足がついてるのかと思うほどにまん丸だ。
そう、まるでその姿は今日の精霊王様の姿が大きくなったような……
………もしかして今の精霊王様の姿ってビックボアの子供なんじゃ?
などどしょうもない事を考えていたら、すぐ目の前までビックボアが近づいていた。
「ソフィア!後ろに下がって」
アイザック様に後ろに下げられる。
ふとアイザック様の手元を見ると剣に何かしている?
アイザック様の剣がドンドン輝いていく。
《紅蓮爆雷刃》
アイザック様が剣を一振りすると、次の瞬間ビックボアの体が中から爆発した。
「すごい!」
「まだまだこれからだ!」
アイザック様はそう言って一人でビックボアに向かって倒していく。
私だって援護して討伐のお手伝いしなきゃ!
風魔法で切るイメージ!
大きいからいつもより多くの風を集めないとね? 数も多いしね。
私は自分の両手を上に翳して風魔法を大きくしていく。私の頭の上で横に広がった風の渦がドンドン大きくなる。
ゴウンゴウンっと風のすごい音がしてきた。
その音に気付いたアイザック様が振り向くと、恐ろしいものでも見たかのような表情をしている。
何でだろう?
その間も風の渦はドンドン横に広がり大きくなる。
「よしっこの大きさならあの丸々した体も一発だ!」
「ちょ!?ソフィア!まっ…」
投げる瞬間にアイザック様が何か言ったような気もしたけど?……風の音で聞き取れなかった。
私は風の塊を勢いよくビックボアに向けて投げた!
するとなぜか風の塊は、ドンドン大きくなっていき、ビックボアの所にたどり着いた時には半数のビックボアの体を真っ二つに切り裂いていった。
ええーーーーーーーーーーー!!
五十匹弱のビックボアを一瞬で倒してしまった。
………嘘でしょ。
私の魔法ってそんなに強いの?
精霊王様が心配もぜず余裕じゃって言うはずだよ。
生き残ったビックボア達は、突進していた足を止め、私を見て短い脚をブルブルと震わせている。
ちょっと待ってよ。
これじゃあ私の方がヤバい奴だよね。
ちらっとアイザック様の方を見たら、口をあんぐりと開け固まっていた。
………ええと。なんかすみません。
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