第105話 結界石
シャルロッテがメラメラとやる気を漲らせている。お願いだから無理しないでね?
「結界はどうするんですか?」
シャルロッテは両手を力強く握りしめて精霊王様に質問する。
ーーんん? 結界のやり方か? 至極簡単じゃよ。村に設置してある#結界石__けっかいせき__#に光魔法を送れば完了じゃ。
精霊王様が得意げに教えてくれるが、私しか言ってる事がわからないので急いで通訳する。
「ええと。この村にある結界石? とやらに光魔法を送れば良いって!」
それを聞いたジーニアス様が急いでどこかに走って行く。
何か知っているのかな?
「結界石ですか。初めて聞きました」
シャルロッテは小首を傾げ、人差し指で自分の頬をトントンと叩く。
ーーじゃろうのう。聖女が現れんと結界石など使うこともないからのう。じゃが、この村にも何百年前かに結界石は設置されておるはずじゃからあるはずじゃ。
なるほど結界石とやらは聖女の力がって意味を成すのか……。そうか、何百年も前の結界だから効果が薄れて魔獣達が村に集まって来たんだわ。
「ソフィアこっちに来て!あっみんなも!」
「俺達はついでみたいだな……」
ジーニアス様が教会内に戻ってきて私を呼んでいる。アイザック様は何やら少し不満気な顔をしている。
何でかな? 少し気になるけど、慌てジーニアス様の所に駆け寄る。
「どうしたんですか?」
「僕の後をついてきて!」
「後を? どこに行くのですか?」
「着いたら分かるから」
言われるがまま一緒に教会を出て、ジーニアス様の後をついて走って行く。
すると村の端で立ち止まった。
そこには高さ一メートルほど太さは五十センチくらいの白く濁った石が埋まっていた。
「精霊王様、結界石ってこれですか?」
ジーニアス様が、この石が結界石じゃないかと精霊王様に聞いている、この石が結界石?!
ーーおお! そうじゃ。そうそうこの石じゃ。この石が白く濁っておるのは、結界の力を失っている証拠。この石に再び光魔法を送り、石が透明になり輝きを取り戻せば結界石の力で村に結界が張られるんじゃ。
なるほど……結界石ってそうやって使うのね。
みんなはドヤ顔でブヒブブーと言う精霊王様が何を伝えたいのか分からず困惑気味に私を見る。
表情だけじゃ意味分かんないからね。
精霊王様が言ったとうりに説明する。
「…………わかりました。私がこの石に光魔法を注ぐんですね」
話を聞いたシャルロッテがメラメラとヤル気を漲らせている。
それにしても、ジーニアス様は何でこの場所が分かったんだろう。稀代の天才は何でも知ってるんだろうか?
「ジーニアス様すごいです! なんで結界石の場所を?」
私はジーニアス様の所に走って行くと、ぎゅっと両手を握って褒めた。
すると何故かジーニアス様は上を向いて目を合わせてくれない。
「……ジーニアス様?」
「あっぼぼっ僕はその地理についても勉強していて、村や町の歴史だったり町の作りを調べたりするのも好きで、結界石のことは本で知ってたんだ」
「そうなんですね! さすが稀代の天才と言われるだけありますね」
「いっいや……」
「はいはい! ジーニアス? 結界石はこの場所だけじゃないんだろ?」
アイザック様が急に間に割って入ってきた。
ジーニアス様を握っていた手は、いつの間にかアイザック様の手に変わっている。あれ? いつのまに?
「ちょっ?! はぁ……っ。この村には後二つある。ですよね?精霊王様」
ジーニアス様は大きくため息を吐くと、後二つあると言い精霊王様を見る。
ーー正解じゃ。その全ての結界石に魔力を注げはこの村の結界は完成じゃ。
「じゃあ、三つ全ての結界石に光の魔力を注げば良いんですね」
ーーうむ。
そのことを伝えると、シャルロッテが結界石を触る。
「任せてください! 私が必ず村に結界を張って見せます」
やる気に満ちたシャルロッテの為に私も何か手助けはできないかと思い
「私も別の石を手伝おうか?」
シャルロッテ一人で三つの石に魔力を注ぐよりも、私も一緒に手伝った方がいいかなって考えたんだけど。
ーーだめじゃ!ソフィアの魔力が強すぎてこの石を壊してしまう。
「えっ壊す?」
お手伝いしたかったけど、壊してしまったら意味がない。ここはシャルロッテに託そう。
ーーそれよりソフィアには別の仕事がありそうじゃぞ?
精霊王様が私の方を見てイタズラに笑った。んん? なんですかその顔。
嫌な予感しかしないんですが。
「別の仕事って……?」
ーーソフィアはシルフィから教えてもらって気配探知出来るじゃろう?
「気配探知? もちろん」
ーーではの? 北の方角を気配探知で見てみるのじゃ
「北の方角?」
言われたとうりに気配探知してみると……!
「なっ!すごい数の気配がこの村に向かってきている。しかもこの気配……魔力数値が高い!」
ーーそれはビックボアの群れじゃ。
「ビックボアの群れ?!」
「ソフィア? 今なんて言った? ビックボアって言わなかったか?」
ビックボアと聞いたアイザック様が、すごい勢いで詰め寄ってきた。
アイザック様が私の両肩を掴んで真剣な眼差しで見つめてくる。あの……距離が近いです
「あっあのアイザック様近いです」
私は顔を赤くし俯きながら言うと、アイザック様は慌てて離れてくれた。
「ごっごめんビックボアって聞いて……動揺して。そいつはAランク魔獣なんだよ。それが群れだと聞いてビックリしてしまって」
「その……Aランク魔獣と言うのはそんなに危険なんですか?」
まだ学校では魔獣の事は習っていないこともあり、私は魔獣やランクがいまいち分からず間抜けな質問をする。
「そうだね凄腕のBランク冒険者チームが四人で一匹をどうにか倒せるレベルって言ったら分かる?」
ちょっと待って! そんなに強い魔獣が村に走ってきてるの? その数百匹はゆうにいるよね?
これを私がどうにかするの?
嘘でしょ!?
「ブヒブー」
ーーソフィアなら余裕じゃよ。
精霊王様は鼻を鳴らして、適当なことを言う。
か弱い女子に余裕って……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます