第104話 女神様じゃありません!


 良かった……みんな助かった。

 助けられた事に安堵し、一気に身体中の力が抜け落ち放心状態に。


「……??」


 ふと気づくと私の周りに村人達が集まり次々跪いていく。

 え? 何これ! ちょっとやめて? どうして跪くの?

 私は慌ててアイザック様の方を見ると、目を見開いて固まり私を呆然と見つめていた。


 ええ? どうしたの?


 シャルロッテとジーニアス様まで同じ様に私を見て固まっている。


 すると跪いていた一人が私に向かって「女神リリア様の降臨だ! ああ……」と叫んだ。


 ちょっと待って? 女神リリアだって? 巻き戻る前に私を酷い目に合わせてくれたあの駄女神が何で出てくるのよ? え? 私に向かって言ってない?

 私が駄女神リリア? それは勘弁してください! 女神って言われてるのに嬉しくない。


 ちょーーーーーーっ!! 違うから!


「ちょっと待って!私は女神リリアじゃありません!私はソフィアです!ソフィア!」


 声を大にして女神じゃない! 私はソフィアだと叫んだ。


 なのに……何を誤解したのか、集まった人たちは「失礼しました! 女神ソフィア様でしたか」と言い放った。


 #女神__・__#ソフィア? だからなんで女神が名前の前についているのよ。それがいらないの! 私は女神様じゃないから!


 助けてくれと言わんばかりにアイザック様を必死に見るもまだピクリとも動かず固まっている。


 ええ……


「ああ……女神様の神々しい光を浴びれて幸せです」


 女神様の神々しい光?何を言ってるの? 


「神々しい光?」

「はい! 女神ソフィア様から溢れ出ている光の事です」

「私が……?」


 そう言われて自分の体を見ると、私は自分が眩い輝きを放っていた事に、やっと気付いたのだった。

 何これ、歩く電球なんだけど。


 私の光は教会内だけでは収まらず、教会の外にまで溢れていた。


 溢れる光に気付き、どんどん人が教会に集まり私を女神様だと言い跪く。


 この光を浴びた人はみんな怪我が全回復していく。欠損していた腕や脚まで元通りに治っていた。


 人間電球の力凄い……。もうこの村にいるすべての人を治癒したんじゃないかな?って程に広がっている。

 いい加減この光収まってくれないかな? 目立って仕方ないよ。どうしたら良いの?


 困り果てていたらやっと助け船がやって来た。



ーーソフィアこりゃまた輝いておるのう。


 精霊王様がトコトコと短いしっぽをフリフリ近付いて来た。


「精霊王様! 来るのが遅いよっ。これっ……この光どうやったら元に戻るの?」


 私は精霊王様を抱き上げ早く直し方教えてっと体を揺する。


ーーちょっ揺らすでない。魔力がずっと流れ出ておるから輝いておるんじゃよ!魔力の流出を抑えるんじゃ! 簡単じゃ。


 魔力の流出を抑える?


「そんな事言われてもやり方がわからないよー」


ーーはぁ……仕方ないの。これは貸しじゃ。


 精霊王様は私のおでこを前脚でコツンっと軽く叩いた。

 すると輝きが次第に収まっていき五分もするといつもの姿に戻った。


「良かったぁ!精霊王様ありがとう」


 私は精霊王様をギュッと抱きしめヨシヨシと頭を撫でた。


ーーむっ? それは嬉しいのう。


 精霊王様は頭なでなでが気に入ったみたいだ。ふふっそれじゃ神獣リルと一緒じゃない。


 私はクスリと笑い精霊王様を撫でていると。


「フィア! さっきの光は一体?」

「私はソフィア様が本当に女神様になってしまわれたのかと」

「本当だよ! キラキラ輝いてそれは綺麗だっゲフンッゲフン」


 やっと正気に戻ったアイザック様たちが駆け寄ってきた。



「そのう……怪我をした人を助けたいって強く願ったら……体が光ってしまって」


「強く願うだけで?」

「……はい」


その私の答えに困惑を隠せないアイザック様。その気持ちは分かりますけど……本当にそうなんだから他に説明のしようがない。


ーーソフィアは無自覚に聖魔法である癒しの光を発動したみたいじゃな。魔力数値が異常に高いソフィアじゃからできた事じゃろうがのう。普通ならあんな事したら魔力を枯渇して廃人になっておる。


 ヒョッ!

 喉の奥がキュッと閉まる。今サラっと精霊王様怖い事言わなかった? 廃人?


「はっ廃人て!」


ーーああ? 変な心配せんでもよい。ソフィアの魔力が枯渇する事など無いから安心せい。お主の魔力は無限じゃ。


 そそっか、魔力無限も気になるけど……またさっきみたいな事になって枯渇とかになったら嫌だから、無限の方がいいよね。うんうん。


 と良い様に一人納得していると


ーー今この村に結界を張るチャンスじゃ。さっきの光で魔獣達もこの村から少し離れた。いま結界を張ったらもうこの村に魔獣達は入ってこれまい。


「そっそうなの? 分かった結界ね!」


 私が精霊王様と何を話していたのか気になったアイザック様が質問してきた。


「廃人とか結界っと言葉が聞こえたんだけど?」


 ええと……その廃人の話はややこしくなりそうなので、取り敢えず置いといて……と。


「いま結界を張った方がいいって精霊王様が……」


 私が結界と言った言葉にシャルロッテが反応する。


「結界ですね。では私の出番ですね」


 シャルロッテの瞳がキリッと真剣な眼差しになる。いつものホワンとしたシャルロッテとは別人の様だ。


「私、ソフィア様のために頑張ります!」


 シャルロッテ? その気持ちはすごく嬉しいけど……私のためはおかしくない?

 この場合、村のためにが正解だと思うよ?

 

「さぁ! 精霊王様。どの場所で結界を張るのが一番良いのか案内してください!」


 シャルロッテはメラメラと燃え盛る炎の様な熱い眼差しで、精霊王様を見るのだった。






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