第103話 ドキドキ
「ふぅーっ! これで最後ね」
馬車の近くでケガをし倒れていた人達は、全て快癒してあげる事ができた。良かった……助ける事ができて。本当に良かった。
「ソフィア様! 私は感動しています。ううっふぐっ…」
シャルロッテがバタバタとこちらに走って来たかと思ったら
「シャルロッテ!? どうしたの! 何で泣いてるの?」
ふとシャルロッテを見ると大粒の涙をポロポロと流し泣いていた。なんで?
「だって……村の人達の傷を癒すソフィア様が女神様に思えて……感動して」
「ちょっ! 何言って」
シャルロッテ? 恥ずかしいからね? そんな事言わないでね? 女神様なんて言われて赤面してしまう。
「女神様ありがとうございます! まだケガを負った者たちが村の教会に多数います。お願いします! その者達を助けてください」
助けた村人の一人がまだ教会に沢山ケガをした人が居るという。そう言って頭を下げる。
「分かりました。私に任せてください。だからもう頭を上げてください」
「女神様……」
村人達が集まり私を見て拝みだした。何やら変な空気になって来たので、私は村人にお辞儀をすると、足早に教会へとシャルロッテを連れ走っていった。
教会の近くに行くと、アイザック様とジーニアス様もいた。
「アイザック様! ここにいたんですね」
私はアイザック様を見つけ駆け寄って行く。
「ソフィア! この場所は危険だ。さっき魔獣が歩いてきっ!?」
次の瞬間アイザック様に手を引っ張られ後ろに下げられる。
「え?!」
何と目の前には二メートル以上の大きな体躯の狼?が突然現れた。これが魔獣?! こんなに大きいの?!
「ソフィア後ろに下がって!」
そう言うとアイザック様は魔獣に向かって切り掛かっていった。
アイザック様の鋭い剣捌きが大きな魔獣を一刀両断し、真っ二つに体を切り裂いた。
魔獣はなす術もなくその場に倒れる。
「すごい……」
アイザック様ってあんなにも強かったんだ。
「ソフィア大丈夫か?」
「あっわっ私は全然大丈夫です! アイザック様が助けてくれたので、私はなんともありません」
そう言うとアイザック様にギュッと抱きしめられた。
「ひょっ?!」
「……良かった……心臓が止まるかと思った」
アイザック様の声にならない声が唇から漏れる。私の耳元近くで……囁くように。
「あっ……う」
急に抱きしめられるは耳元で囁かれるはで私はどーしたら良いのかも分からずドキドキして固まってしまう。
アイザック様の体は私よりも大きくて、私は腕の中にスッポリと収まっている。
いつの間にこんなにも体格に差がついたんだろう。少し前までは私の方が大きかったのに。
ドキドキして胸が苦しい。
「あーーーーっ! アイザック何してるんだよっ。ソフィア大丈夫?」
ジーニアス様が私とアイザック様の間に割って入る。ふっふう助かった。
「ったく、目を話した隙に」
ジーニアス様がアイザック様に何がブツブツと文句を言っているようだけど、私は最早それどころではなかった。
はぁドキドキした。
大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせ、教会の中に入ると……床に布を敷いただけの場所に、村人や防具を着た冒険者らしき人達が横たわっていた。教会の中は鉄臭い血の匂いでむせ返っている。
ざっと見ても重傷者は二十人以上いる。こんなの一人一人治癒していったんじゃ間に合わない。
どうしたら良いの!
神様、女神様、妖精達! どうか私に力を貸してください! この教会内にいる人達を癒してあげたいんです。
傷を治してあげたいんです。お願いします私に力を貸してください!
強く必死に願った次の瞬間、教会内を目が開けられないほどの光の粒子が覆う。
「えっ?」
何が起こってるの?
光がおさまると、教会内の怪我人は全て全回復していた。
皆自分に何が起こったのか理解できず怪我していた筈の体を何回も見ている。
何故なら欠損部分まで修復し身体が快癒したのだ。理解が追いつかないんだろう。
良かった……何だか分からないけど、助けることができた。神様女神様力を貸してくれてありがとうございます。
教会内の人が助かった事が嬉しくて
私は自分の姿がキラキラと神々しく輝いている事に、全く気づいていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます