第15話 暮内亮司の見守りの日々(15)
・・・ん?
なんだ?
なんだか、ぞわぞわとする気配を感じる。
決して良いものでは無いなコレ。
どうしてだろう?
ここは・・・あれ?
ここって僕が通っていた高校じゃないか?
あそこにあるのはクラブハウスだったと思うんだけど・・・今ここにいるのは・・・総司と知らない男の子?
『会長〜!彼を呼んできましたよ〜!』
知らない子がクラブハウスに入って行って続いて総司が入って・・・
ゾワッ!!!
なんだ!?
でもやっぱり良くない事だとわかる!
総司!!
ガツンッ!!
総司が後ろからバットで頭を殴られ倒れる。
その頭からは血が流れている。
総司!
総司!!
さっきとは別の子!?
いったい何を考えているんだ!!
総司!起きなさい総司!!
『ははは!!や、やった!!やってやったぞ!!』
『そうすね!こいつ!!クソ野郎が!!』
総司がお腹を蹴られている。
許せない!!
くそ!なんで!!
助けたい!
くそ!?くそっ!!
『なん・・・で・・・』
『なんで!?なんでだって!?お前のような陰キャが舐めたことしてっからだよ!!』
『そうだ!副会長であるこの僕を差し置いて、会長・・・北上さんから惚れられる!?ふざけるな!!身の程を知れよお前!!』
『そうだ!南谷も、なんでこんなやつに惚れたんだ!!まぁ、いい。お前、今からボコボコにすっから。そんで、これからは俺達のサンドバックな!それに・・・お前の女はぜ〜んぶ貰うから!ヒャハハハ!!』
こんな・・・こんな奴らが今の生徒会の役員・・・?
僕の・・・僕や双葉、琴音さんや清見ちゃんや翼ちゃん、そして葵ちゃん達の青春を彩った愛すべき生徒会が・・・こんな・・・?
『ああ、面白れぇ!!あの女共も、こんな陰キャに惚れなきゃ、人生を棒に振ることはなかったのによぉ!!これからあいつらには地獄が待ってるぜぇ?もっとも、気持ちいいだろうから、天国なのかもしれねぇがな!!』
『もうすぐ、会長達が来る。まずは、僕を振った事の土下座をさせ、その後はストリップでもさせるかなぁ!!ははは!』
『そん・・・な、事をして・・・すぐに・・・人が・・・』
『来ないね。それについては対処済みだ。今頃、彼の友人の他校生徒が、別の場所で騒ぎを起こしているだろう。教員も他の生徒も、そっちにかかりきりだろうよ。』
『助けはこねぇぞ?あひゃっひゃっひゃ!!』
なんて醜い・・・酷い・・・悔しい・・・総司がこんな奴らに傷つけられるのが悔しい!!
なんで僕が助けてあげられないんだ!!なんで!!
『お?まだ折れないのか?まぁ、もうちょっとボコッって・・・』
『総司!?」
ああ、西條さん達だ!!
でも、いけない!来ちゃダメだ!!誰かを呼んできてくれ!!
こんな奴らの前に君たちが来たら・・・
頭から血を流して倒れている総司を見て、悲しみ、怒っている彼女たち。
『ああ?そんなの決まってんだろ?お前ら今から俺達の奴隷な?』
『・・・会長。あなたがいけないのだ。優秀な僕を差し置いて、そんなゴミみたいな奴に入れ込んでいるあなたが。』
『お前ら、わかってんだろ?抵抗したら、そいつ殺すよ?』
下衆な!!
男の風上にもおけない!!
もどかしい!
この身体が実体を持たないのがもどかしい!
『・・・わかった。抵抗しないわ。そのかわり総司に手を出さないで。』
『私もいいよ。だってそーちゃんのためだもん。』
『もとから、私の全ては総司先輩のものです。総司先輩を救うためなら、なんだって出来ます。』
『・・・ワタシも、気持ちは同じだ。もし、それが必要になるのであれば、すぐにでも差し出すさ。必要になれば、な。』
彼らの要求を飲もうとする彼女たち。
総司も驚きの声をあげている。
・・・これほど総司を愛してくれている。
その事はとても嬉しい。
でも・・・それは違う。
その身を投げ出すのは、違うよ。
それは総司が悲しむ。
・・・あれ?
総司の身体の奥が光ってる?
暖かくて・・・強くて心地よい光だ・・・
ん?総司が彼女たちを見つめる目。
明らかに力尽きて倒れている様子に見えない。
もしかして、総司これって・・・
『総司!もう良いぞ!!全部撮った!!』
近くの物陰から吉岡くんが携帯電話を片手に出てくる。
男たちは焦っているようだ。
総司が平然と立ち上がった。
やっぱり、彼らを嵌めたのか。
・・・総司、心臓に悪いよ・・・
『シオン、柚葉、翔子、黒絵。ありがとな。俺は、覚悟を決めたよ。』
『・・・総司?大丈夫なの?』
『ああ、これは確かに切れてるが・・・殴られる瞬間に、自分から倒れこんで、勢いは軽減しているからな。それほど大怪我でも無いんだ。痛いことには代わりが無いが、まぁ、後で手当すればいい。』
『そうなんですか・・・よかったです・・・。』
『ま、でも、黒絵は気がついていたみたいだがな。あいつらに対する、カウンターが欲しかったのさ。』
『当然だとも・・・だが、キレそうになったのも本当だ。お前に血を流させるとは・・・万死に値する!』
・・・北上さんも気がついていたのか。
やっぱり、総司と北上さん達と僕では、修羅場をくぐった場数が違うなぁ。
恐れ入ったよ。
『ああ、お前は手を出さないでくれ。お前たちには迷惑をかけた。だから、その責任を取る。俺が・・・今から覚悟を見せるよ。』
『覚悟?それって・・・』
『見ててくれ。』
『・・・わかったよ。でも、そーちゃん?早く手当しようね?」
『ああ、すぐ終わらせる。ああ、そうだ。シオン、そのパーカー貸してくれるか?』
『・・・ソウ、お前まさか・・・』
『言ったろ?覚悟を見せるってな。』
総司、そうだよ。
普通の常識では決して良い事ではないし、後ろ指をさされるだろう。
僕も、琴音さんや清見ちゃん達に告白された事があるけれど、それでもそんな事考えもしなかった。
でも、彼女たちはそれを望んでいる。
そして今君も覚悟が決まったようだ。
なら、僕も見届けるよ。
君の覚悟と選択を!
その後始まったのは、トレードマークの赤いパーカーを着た総司から彼らへの蹂躙劇だった。
容赦なく、相手を無力化して行く。
やっぱり強いね総司。
凄いよ。
ここまで無慈悲には僕には出来ない。
でも、結果としてそれが場を支配するのに一役買っている。
ひいては、それが西條さん達の安全に繋がっている。
これは総司のこれまでに得たものだ。
こういった鉄火場で甘さが持つ危険性をよく分かっているんだろうね。
最初に総司を殴った生徒会の子はすでにガタガタと震えている。
『こ、こいつ・・・まさか・・・『クレナイ』?いや・・・でも・・・こんなとこに居るわけが・・・』
おや?
どうやら総司の二つ名を知っている子がいたようだ。
『「クレナイ」?「クレナイ」はもういない。ここに居るのは暮内総司、だ。もう、逃げも隠れもしねぇ。』
『『『『っ!!』』』』
総司の宣言に西條さん達は息を飲んでいる。
総司の覚悟がしっかりと伝わったみたいだね。
『てめぇら、よくも俺の女に手をだしてくれたな?地獄を見せてやる。』
総司がそう言って彼らをにらみつける。
そして今にも涙を流しそうな西條さん達を見た。
『悪い。後でしっかり言うが、俺、やっぱりみんなが好きだわ。どれだけ考えても決めらんねぇ。だから、俺のものになってくれないか?いや、俺のものになって貰う。どれだけかかってもな!』
そう言って二カッと笑った。
西條さん達は涙混じりに笑っていたよ。
そしてその後も続く総司・・・と北上さんの蹂躙劇。
どうやら北上さんはかなり怒っていたようだ。
攻撃された相手が吹っ飛んでいるね。
やっぱり、あの子も凄いなぁ。
そして彼女は、最後に逃げようとした生徒会の子の前に立ちはだかり、
『・・・貴様には以前に伝えたな?生徒会に属する者として、生徒を平等に見ろ、と。貴様は生徒会役員失格だ。今をもって罷免とする。そして・・・』
『か、会長!僕は・・・!!』
『よくもソウを傷付けてくれたな!!その痛み思い知れ!!』
『ひっ!?ぎゃあ!?がっ!?ごふっ!?』
す、凄い連続攻撃・・・というか、これ、北神流の技なんだろうね。
吹っ飛んでったけど・・・あの子、生きてる?
あ、ピクピクしてるから生きてる・・・よね?
総司は・・・あ、最後に残った子に容赦なく脅しをかけているね。
『後で、てめぇらが何をして、何をしようとしたのか、しっかりと先生に話せよ?良いな?それで勘弁してやる。』
『はぃぃぃぃ!!必ずぅぅぅ!!』
泣きながら高速で頷くその子。
馬鹿な事したね。
もう、彼らはこの高校にはいられないだろうなぁ。
あ、どうやらさっきこの子達が言っていたトラブルがもう起きているみたいだ。
その場を吉岡くん達に任せて現場に急行する。
・・・僕は、ここまでかな。
総司に引っ張られるように移動しているけれど、段々と意識が・・・今回はここまで・・・
『おらぁ!!小僧共!!それでもキン◯マついてんのかぁ!?ああん!?』
・・・あ、あれ?
聞き覚えがありすぎる怒声が聞こえた気が・・・?
消えかけていた意識が少しづつはっきりとしてくる。
あ、遠くに先生が近づいて来るのが・・・あれ?あれって・・・
『みなさん、大丈夫ですか!・・・って、ん・・・!?あいつはまさか!?・・・夜叉姫!?なんで・・・っていかん!おい!姫野!!その子を離さんか!!』
そうだ!竹田先生だ!!まだいたのか!!
『ああん?あれ?竹先じゃん?ププッ!めっちゃおっさんになってるし!ってあれ?あたし・・・あ・・・』
あ、双葉が正気に帰った。
周りを見回している。
そして空を見た。
『きゃ〜〜〜!こわ〜〜〜い!!』
パッとその子から手を離し、口元に両手を持っていって、そう言った。
『『『『『『『『『『『「いやいやいやいや』』』』』』』』』』』』
いやいやいやいや。
双葉、いくら双葉がお茶目でも、それは無いと思うよ?
そういうところも可愛いとは思うけど。
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