第13話 暮内亮司の見守りの日々(13)
う・・・ん・・・?
なんだ・・・?
いつもとちょっと違う感じがしたんだけど・・・
いつもはもっとすっと目が覚めるみたいな感じで意識が戻るのに、なんというか・・・ぼんやりとしているような・・・
ん!?
なにこれ!?
双葉!?
総司!?
なんなのこれ!?
僕の目の前で、繰り広げられる光景。
それは・・・
「大変、総司は亮司と同じで弱いのね。これはいけないわ。ねぇ・・・琴音先輩?翼?」
「・・・そうね。大変だわ。ほら、総司くん?もう少し、こっちにいらっしゃい?もたれかかった方が楽になるわよ?」
総司がフラフラして琴音さんにもたれかかっている状況。
ナニコレ!?
どういう状況なの!?
「・・・総司くん、熱くないかしら?」
「・・・暑い・・・です・・・」
「そうよね。ちょっと脱ぎ脱ぎしましょうね?」
「あ、こら!翼!!」
「そうよ翼!あなた何する気・・・」
「まぁまぁ、清見、葵、落ち着いて。」
「双葉センパイ!一体何を・・・」
「そうです!このままじゃ総司くんが・・・」
まさか総司酔っ払ってるのか!
葵ちゃん!清美ちゃん!止めてあげて!!
このままじゃ総司が!!
「・・・あら、総司くん・・・やっぱり良い身体してるわね。苦しくないかしら?」
「・・・ちょっと・・・苦しいかも・・・」
「それは大変ね!待ってて!今楽にしてあげるからね?」
「こら〜!翼!!もがっ!?」
「駄目よ!つば・・・もがっ!?」
「ほらほら、二人共飲んで飲んで。」
やばいやばいやばい!!
総司がどんどん肌色に!!
「うふふ・・・総司くん、楽になったかしら?それとも、もうちょっと涼しくなる?」
琴音さんの言葉に総司はぼんやり考えた後、コクリと頷く。
その瞬間、僕は見逃さなかった。
琴音さんと翼ちゃんの目が猛禽類みたいになったのを。
総司逃げてくれ!!
君は既にパンイチなんだよ!!
西條さんは!?北上さんは!?
柚葉ちゃんはどこに!?
翔子ちゃんだと協力しそうだから翔子ちゃんは来なくて良いけど!!
「どうやら、その方が良いみたいね。じゃあ・・・最後の一枚も脱ぎ脱ぎしましょうね〜♡」
「もがっ!そーちゃ・・・だめ・・・このままじゃ・・・!」
「双葉先輩はなし・・・総司くん!気をしっかりと持って・・・」
葵ちゃんと清見ちゃんも必死だ!
なんとか・・・なんとかしないと・・・
「母さん達・・・楽しそうだね。」
「ええ、総司。お母さん、とっても楽しいわ!」
双葉〜〜〜〜〜!!こら〜〜〜〜!!!!!
「総司くん?気持ち悪くない?」
「・・・今はあんまり・・・悪く無いです。」
「そう。じゃあ、気持ちよくなりたい?」
「・・・気持ち悪いよりは、気持ち良いほうがいいです・・・」
「そう!だって翼さん。これは仕方が無いわね!」
「ええ、そうですね琴音さん。総司くんが望むなら、あの子達の母親として仕方がありませんね。」
違う総司!
騙されてる!
騙されてるから!!
・・・あれ?
いまなんか・・・身体から力が抜ける感じが・・・どこかに流れた・・・?
「それじゃ総司くん?今も〜っと楽にしてあげるからね♡」
「そうね。そして、その後は・・・気持ち良くなりましょう♡」
いや!それどころじゃない!!
総司!!
「それじゃ御開ちょ・・・」
「・・・何やってるの?」
「「!?」」
西條さん!!
良かった間に合った!!
・・・うわぁ。
眉間に青筋立ってる・・・
琴音さんと翼ちゃんと双葉は顔が引きつってるね。
葵ちゃんと清見ちゃんはホッとしてるけど。
「し、詩音?これはね?総司くんが間違えて飲んじゃって、熱くなったから脱ぎたいって・・・」
「そ、そうですよ?他に他意はありません。それに、総司くんが気持ちよくなりたいと言うから、仕方がなく・・・」
なんだかキョロキョロしてた柚葉ちゃんがその状況に気がついたみたい。
一瞬で顔が鬼みたいになった。
「何やってるんですかぁ!」
「お母さん!私がいないところでしても意味がありません!」
・・・危ない。
翔子ちゃんはやっぱりね。
「・・・どうやら、皆さん酔い過ぎのようだ。ワタシ達はソウの部屋に避難させて頂こう。」
北上さんもすっっごい怖い顔してる。
目とか人を殺しそうな感じ。
美人が本気で怒ると本当に怖いね・・・
「ぷはっ!柚葉!この二人と双葉センパイは私と葵で怒っておくわ!」
「ええ、そうです!黒絵!早く総司くんを2階に!あなた達!ちょっとそこに正座しなさい!!説教です!!」
「「「ええ〜」」」
総司は西條さんに支えられて2階に行った。
・・・僕はちょっとこっち見ておこう。
まったく・・・
「あなたたちやりすぎでしょう!!」
「そうですよ!琴音センパイも翼も!!双葉センパイも止めなきゃ駄目でしょうが!!」
葵ちゃんと清見ちゃんが正座させた三人に怒鳴ってる。
ガミガミと怒られ、シュンとする三人。
「・・・琴音さんと翼の気持ちも正直わからなくもないけど、それでも今日のはやりすぎです。」
「・・・ごめんなさい。そうね。ちょっと場の雰囲気に飲まれすぎたわ。」
「・・・そうですね。やっぱり、自分でも思っていた以上に夫の浮気は心に来たのかもしれないわ。寂しいのよ。翔子がいるのは分かってるんだけど、世界から切り離されてたった一人になっちゃったみたいに寂しいの。無意識に亮司さんに似ている総司くんにそれを埋めて貰いたいって思っているのかもしれない・・・」
「「翼・・・」」
翼ちゃん・・・
涙ぐんでそう言う翼ちゃんに葵ちゃんも清見ちゃんも何も言えなくなっていた。
琴音さんと双葉がぎゅっと翼ちゃんを抱きしめている。
「・・・大丈夫よ翼さん。あなたには翔子さんだけじゃなくて私もいる。」
「そうよ?それに私もそうだし、清見や葵もいるから。それに・・・総司だってきっと最後はあなたを支えてくれる、私はそんな気がするの。ねぇ葵、清見、今日のはちょっとアレだったけど、そうなった時の覚悟はしておいて。私はこの二人を止める気は無いから。」
「「・・・」」
双葉は真顔で葵ちゃん達にそう言った。
二人は複雑そうにしている。
でも、それ以上は言うつもりも無いようだ。
翼ちゃん、琴音さん。
僕も何も言うつもりはないよ。
辛い思いをした二人を、もういない僕が助ける事は出来ない。
そんな資格もない。
だから僕は見守るよ。
総司や双葉、瑞希を見守るのと同じ様に、君たちも見守る。
そう、決めたよ。
「さ!それより飲みましょう!嫌な事はぱ〜っと忘れてさ!!」
「良いですね!じゃあ、亮司も一緒に飲ませましょうかね。」
琴音さんがそう言うと、双葉が僕の遺影を持ってリビングに置く。
そして、コップに入れたお酒。
正直、お酒は弱いから好きじゃないけど、でも、今日は気分だけでも飲もう!
「子供たちに!乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
琴音さんの音頭でみんなお酒を飲む。
その後はみんな大騒ぎだった。
ああ・・・この風景・・・ずっと目に焼き付けておきた・・・あ・・・れ・・・なんか・・・目がぐるぐると・・・これ・・・酔って・・・なん・・・で・・・
「あ〜!?お母さん達何やってるの!?なんでこんな状態なのよ〜!!」
ん・・・?
そんな叫び声で目を覚ます。
柚葉ちゃんがぷりぷりと怒ってるけどなんで・・・ってなっ!?
視界に飛び込んでくる肌色と色とりどりの下着!!
うわぁ・・・すごっ・・・はっ!?殺気!?
僕がバッと横を見ると、横になった状態で何故か僕がいる辺りを凝視している双葉がいる!!
怖っ!!
この間総司に忠告した時なんかよりもずっと怖いんですけど!?
表情があの頃のままだし、完全に目が合ってるんですけど!?
なんで!?見えてるの!?
い、いかん!
すぐに後ろを見なければ!!
僕がみんなから視線を切った後も、何故かこちらを見られている感じがする。
「・・・っかしーな?なーんかムカつく気配があったよーな・・・なんもいねーし・・・鈍ったか?」
ひぃっ!?
獣かなんかなの!?
全然鈍ってないから!!
その後は、総司達が降りてきて、琴音さん達からの謝罪を受けていた。
瑞希は柚葉ちゃんと翔子ちゃんが起こしにいったみたい。
「ふぁぁあああ・・・おふぁようごじゃいしゅ・・・」
あの騒ぎの中よく眠れたねぇ。
でも可愛いなやっぱり。
「・・・お前、よくあんだけ騒いでる中で、寝られたな。」
「ふぇ?私、一回寝ちゃうと気にならなくなるんだよ。あ、でも、寝る前に、お兄ちゃんの部屋からキャッキャとした声が聞こえてたのは知ってる。」
「「「「っ!!」」」」
・・・ん?
何いまの柚葉ちゃん達の反応。
まさか酔った総司に何か・・・
結局、疑問は晴れなかったんだけど・・・でも、僕聞いちゃったんだ。
瑞希の独り言を。
それは、瑞希が手を洗いに行った時だった。
「・・・ズルいよ柚ちゃん達・・・私だってお兄ちゃんのお兄ちゃん触ったりしたかったのに・・・こっそり見に見にいったら、お兄ちゃんの寝てる布団の中から四人の足が見えてたから、何してるのかすぐ分かっちゃった・・・あ〜あ・・・良いなぁ・・・私だって好きな人のなら見たいし触りたいのに・・・」
・・・つっこみどころが多すぎる・・・
あの四人まさか・・・
そして瑞希?君、まさか総司の事本気で・・・
・・・双葉ぁ、ど、どうしよう・・・
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