第12話 暮内亮司の見守りの日々(12)

 ん?

 なんか急に意識がはっきりしてきたぞ?

 ここは・・・祭り会場?

 

 どうにもわからない。

 この、浮き上がったり沈んだりする意識はなんなんだろう?


 っと、あれは総司達か。

 瑞希もいるね。


 うんうん、瑞希も可愛らしいじゃないか!

 浴衣似合ってるよ!

 北上さんや柚葉ちゃん、翔子ちゃんや西條さん達にも負けてないね!

 流石は双葉の血筋だ!


 どうやら出店で何か対決してるみたいだ。

 こういうところは子供らしくて良いね。

 お?瑞希が勝ったのか!

 

 罰ゲーム?


「ん〜?どうしよっかなぁ・・・あ、じゃあ、女の子はみんな、好きな人とあたしのほっぺにチューして欲しい!!勿論ここでね!」

「「「「「「「!?」」」」」」」


 え!?

 ちょ、ちょっと瑞希!?


「・・・良いだろう。」

「良いわ。」

「良いよ。」

「良いですよ。」

「・・・わかった!」

「「はぁ!?」」

 

 て、そこ了承しちゃうの!?


 あ、総司と吉岡くん、必死に誤魔化そうとしてる。

 

「あれ?お兄ちゃんまさか・・・約束守らないの?あ〜あ・・・男らしいと思ってたけど、一度決めた約束を守れないんじゃあ・・・軽蔑しちゃうなぁ・・・」

「・・・や、約束は・・・守るさ・・・」

「そう?なら良いよ。流石はお兄ちゃんだね!」


 総司、相変わらず瑞希に甘いねぇ。


「おい、総司・・・お前の妹、とんでもないな。」

「・・・ぐっ・・・あの、母さんの娘なだけある。」

「・・・お前の母親どんな人なんだよ?」

「・・・押し入れ事件を考えて、あいつらに吹き込んだ真犯人だ。」

「あ、納得だわ。」


 本当に、僕の妻がすまない・・・


 宣言通りしっかりと写真を撮った総司達。

 周りの人達に羨まれているね。

 

 総司は顔真っ赤にしてそれどころじゃないみたいだけど。


 あ、次は瑞希か。

 

「いや〜!ハーレムですなぁ!!みんな美人だし、役得役得!」


 瑞希・・・ちょっとお父さんとお話しよう?

 お父さん心配だよ?

 くぅ!注意出来ないのが悔やまれる!!




 罰ゲームも終わって、瑞希はたまたま来ていたらしい他の友達達と別行動するみたいだね。


 総司達は、山の上から花火を見るのか。


 ヒュルルルルルルルルル・・・ドォ一一一一一一ン・・・


 おお・・・綺麗な花火だ。


 総司達も吉岡くん達も、それぞれ雰囲気を作って見ているね。

 青春だなぁ。


 でも、僕は見逃さないよ。

 総司、西條さん達にも見惚れているね?

 

 まぁ、実際すごく綺麗な子達だし・・・総司、気がついているかな?

 君はもうとっくにこの子達に・・・


 ・・・苦しそうだね。

 出来るなら助けてあげたい。

 相談に乗ってあげたい。


 でも、それは僕の役目じゃない。 

 いや、僕に資格は無い、か。


「・・・どうしたの?総司、なんだか辛そうだよ?」

「そうだね・・・そーちゃん、何かあったの?」

「総司先輩、教えて下さい。あなたを苦しめている事が何かを。」

「ソウ、教えてくれ。今度はワタシが・・・ワタシ達が、お前を支える番だ。」


 やっぱり気がついてくれたんだ。

 この子達は本当に良い子達だ。


 総司の目から涙が流れる。

 西條さん達が寄り添ってくれている。

 

「・・・俺が、選ぶ事で、お前たちを傷つける事に・・・耐えられない・・・耐えられそうも、無い・・・俺は・・・どうしたら・・・なんて弱い・・・情けない・・・」


 総司・・・


「俺は・・・どうしようも無い人間だ。父さんの死から逃げ、母さんや瑞希を放置し、喧嘩に明け暮れ・・・現実から逃げ続けて来た。目立ってしまう事が怖くて、戦う事もせずに・・・こんな俺が・・・綺麗に輝くお前たちにふさわしいとは・・・思えない・・・」


「こんな・・・こんな俺に・・・お前たちを選ぶ資格が・・・本当にあるのか・・・でも・・・お前たちに嫌われて離れて欲しく無いという想いもある・・・なんて情けない・・・男らしく、ない。」


 総司の独白。

 胸が痛む。

 この子がこんなに思い悩む切っ掛けになったのは、僕だ。

 僕が・・・僕が死んだから。


 ああ、僕はどれだけ家族を苦しめたら・・・ 


「だから・・・もし、俺を見限るなら、早めに・・・しろ・・・自分を安売りするような真似をせず・・・俺から離れ・・・」


 !?

 総司!!

 それは違う!!

 この子達は君に必要なんだ!!

 それに、


「総司!!」

「そーちゃん!!」

「総司くん!!」

「ソウ!!」


 ほら、よく聞いておくんだよ?


「総司!それ以上言ったら怒るよ!」

「そうだよ!私達がする事は私達が決めるもん!!そーちゃんにも決めさせないよ!」

「その通りです!それに、私は、絶対に総司くんを見限ったりしません!何があってもです!!」

「ああ、三人の言う通りだ。お前がワタシ達を傷付けたく無いように、ワタシ達だって、お前を傷付けたくない。」


 涙が出てくる。

 西條さん、北上さん、柚葉ちゃん。翔子ちゃん、本当にありがとう。

 総司と居てくれて。

 こんな不甲斐ない僕に代わって総司を注意してくれて。


「総司?どんな選択をするのかは、あなたが決めるの。その結果には、誰にも文句は言わせないわ。勿論、私も言わない。」

「うん、詩音ちゃんの言う通りだよ。だから、そんなに思いつめないで?どんな決断だって、そーちゃんが決めた事なら、受け入れるから。」

「総司くん?大丈夫、大丈夫です。私達は、結果が悪くても、離れませんから。」

「ああ、翔子の言う通りさ。だから、ゆっくり考えてくれ。」


 本当にこの子達がいなかったら、総司はどうなっていたんだろう?

 僕は、感謝してもしきれない。 

 総司も落ち着いたみたいだ。

 

 どうか・・・この子達に、幸せな道が訪れますように。

 神様、願います。


 僕はどうなってもいい。


 この子達だけは・・・


 ああ・・・また、意識が・・・総司・・・頑張れ!!

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