第11話 暮内亮司の見守りの日々(11)


まえがき

本日から一日置きにアフター・・・というか番外編を更新していきます。

どうぞお楽しみ下さい。

***************


 まったく・・・あの後、流石に僕もまずいと思って部屋の外に出たよ。

 双葉ったら、あれじゃ総司が可哀想じゃないか・・・


 というか、よく我慢出来たね総司。

 君は凄いよ。

 

 だって、僕が双葉と付き合う切っ掛けになったのって、大学に入ってちょっとした位に、一緒に食事を食べていた時に、僕が間違えてお酒を飲んじゃって、フラフラになっていたのを双葉に介抱されながら帰ってたんだけど、途中限界を迎えて公園で休憩中に、僕を介抱する双葉があまりにも綺麗で優しげだったし、もう好きになってたのもあってか、吸い込まれるようにキスを・・・ん?待てよ?


 あの時僕が間違えて飲んじゃったお酒・・・飲み物は双葉が注文してたような・・・

 あれ、本当に間違いだったんだよね?

 なんだろう?

 今の総司の有様を見ると、背筋に冷たいものが・・・ま、まぁ良いか!

 

 僕が双葉を好きになっていたのには間違いが無いんだし!うん!



 朝を迎え、へろへろの総司と吉岡くん。

 会話を聞くに、どうやら乗り切ったみたいだ。

 凄いねぇ・・・


「それにしても・・・あいつら、あんな風だったなんてなぁ・・・北上も、西條も、南屋も、東儀も、全然そんな風に見えねーってのに。莉愛は、見た目ギャルっぽいからまだ分からなくも無いが・・・あいつ、処女の癖して、すげぇ攻めて来やがった。俺・・・時間の問題かもしれん。」


 ああ、それは僕も思った。

 あの子達、それぞれの母親以上に肝が座ってるなぁ・・・


「あ〜お腹空いたわね。」

「うん、美味しそうだね〜。」

「朝から新鮮な海の幸、最高です。」

「そうだな。こういった機会じゃなければ、中々食せないからな。」

「本当ですね。いただきましょう?」


 ・・・この子達、なんでこんなに普通なの?

 照れるとか無いのかな?


「何?あんた達、照れてんの?相手が悪かったわね。あたし達はみんな覚悟が決まってるから、これくらいじゃどうって事無いわよ?」

「そうそう。私、そーちゃんと一緒になるためなら、なんだって出来るもん。」

「柚ちゃんと同じです。総司先輩?色々早く決断したほうが、楽になれますよ?」

「まったくその通りだ。ソウ、お前は喧嘩の時には凄まじい決断力を見せる癖に、そんな事でどうする。あれくらいの気合と勇気を持て。」

「光彦くんもそうですよ?あたしとしては、憧れの先輩として、優しく大胆に導いて欲しいんですけど。」

「・・・莉愛、あのなぁ。順序は大事だぞ順序は。」


 そうだよ!

 順序大事!!

 

「・・・光彦くんに言う資格があります?お試しって言ったの、光彦くんですよ?あたしは、その間にもっと好きになって貰わないといけないんです。積極的にもなりますよ。もう、遠慮する必要も、隠す必要も無いんですし。」

「ぐむっ・・・」

「こら、ソウ。お前、何を他人事みたいな顔をしている。お前も同じ穴の貉だぞ?あれだけ色々してやったというのにお前はまったく・・・」

「そうです!もうちょっと手を出すとかあったと思います!!」

「そーちゃん・・・それはそれで不健康だと思うよ?年頃の男の子的に・・・」

「そうね。総司?いい加減諦めて手を出しなさいよ。そして、あたしを選びなさい?」

「ちょっと!選ばれるのは私です!!」

「違うもん!私だよ!!」

「いいや、ワタシだね。」

「「「「む〜!!」」」」


 あ〜あ・・・二人共痛い所を突かれた顔してるね。

 総司も吉岡くんも格好いいのに、完全に負けてるなぁ。




 



 その後、総司達はまた海で遊んでいたんだけど、案の定というかなんというか、絡まれて撃退していたんだ。

 総司も北上さんも強い・・・って本当に強いねやっぱり。

 それに吉岡くんも強い。

 あっという間に倒しちゃった。


 ・・・にしても、北上さん、現役時代の双葉と戦ったらどっちが強いんだろ?


 怖さでいえば圧倒的に双葉だろうけど強さはわかんないな。


 何度か見たことある双葉の本気。

 あれ、凄いもんね。

 寒気がするくらいの殺気っていうのかな?


 僕なんかは、所詮空手をかじっているだけに過ぎないけど、それでもわかる程の重苦しい感じ。

 あれは絶対敵にしたくない。


 あ、そんなこんなで総司達も帰るみたいだ。


「・・・光彦くん。暮内先輩、ギャップがひどすぎません?とても4人の女の子に詰め寄られてタジタジになっている人と同じと思えません。」

「・・・だよなぁ。俺も『クレナイ』に憧れてた一人なんだが・・・なんて残念な奴だ。」


 ・・・あはは。

 だよね。

 僕もそう思うし。





 その日の夜。


 総司が双葉に説教してる。

 あれはやりすぎだったからね。

 総司!もっと言ってあげて!


 う〜ん・・・でも、効いてるように見えないなぁ。


「はぁ。もうちょっと自重してくれよ・・・こっちの身が持たない。」

「いやあね。それは、あなたの方にも問題があるからでしょう?」

「俺に問題?」


 総司に何か問題あるかな?


「そうじゃない。あなたが、4人も引っ掛けて、それを放置していたからでしょう?」

「・・・引っ掛けてって・・・そんなつもりは無いが・・・」


 あ、総司がやり込められてる。


 優しさについてと、あの子達が羞恥心を押し殺し手でも総司の気持ちを惹きつけたいって事を諭されている感じ。


「むしろ、私は本当に実行したあの子達を褒めてあげたいくらいだし、嬉しいわ。だって、それを押してでも、なんとか総司と一緒になりたいって思ってくれている証拠だもの。だから、何があっても、私はあの子達の味方だし、これからも協力するわよ?」


 そう言われちゃうと、総司は何も言えないよね。

 多分、僕が生きていても同じかもしれない。

 だって、自分の息子の事をそれだけ好きって事なんだから。


「総司、よく聞きなさい?あなたは、貞操を捧げられる程好きって気持ち、これがどれくらい大きなものかわからないといけない。そして、それを受け止めないといけないわ。私は、あなたが誰を選ぶかどうかについては口出しするつもりは無いし、資格も無い。それを決める事ができるのは、あなただけなのよ?あの子達が愛しているあなただけ。よく考えなさい。」

「そう・・・だな。」


 なるほど。

 確かにそうかもしれない。


「そうそう、後、一つだけ助言・・・というよりも忠告、いえ、警告ね。」

「警告?」


 ん?双葉の様子が・・・


「あなたが誰を選んでも良い。愛せないと確信して、誰を選ばないでも良い。だけど、もし、”あの子達の為を思う”なんて事を考えて、誰も選ばないという選択をしたら、私はあなたを許さない。」

「っ!!」

「そんなのは、あの子達に対する侮辱よ。あの子達を舐めすぎている。あの子達は強いわ。きっと結果を受け止めて、それでも関係性を維持しようとするでしょう。それを、あなたの小賢しい考えで踏みにじろうとするのだけは絶対に許せない。良いわね?」

「・・・」


 ・・・本気、とまではいかないけど、かなり真剣に話をしたね双葉は。

 少しだけ、まだ不良だった頃の圧力を感じたよ。

 そうだね・・・あれは、琴音さん達といる時に、不良に絡まれた時だったかな。


 僕は当時の事を思い出す。

 双葉は確か、


『てめぇら大事な仲間に粉かけてくんじゃねぇ!殺すぞ!!』


 って言ってた。

 ああ、そうか。

 双葉の中では、もうあの子達の事が大事なんだね。


 総司も思わず息を飲んで返事をしてる。

 双葉が笑顔になってホッとしてるみたいだね。


 まぁ、総司は双葉のそういう面は知らないからなぁ。


「じゃあ、これからもあの子達に色々教えてあげよっと。」

「ん?」


 ん?双葉?


「だって、私はあの子達の味方だもの。」

「ちょ、母さん!俺はそれを止めろと・・・」

「あら?そんなの、あなたが早く決断すれば問題無いでしょう?」

「そ、それは・・・」

「じゃあ、良いじゃない。はい、これでお話しおしまい!」

「・・・」


 あはは。

 総司、してやられたね!

 それに双葉、あの子達も守ってあげているんだね。

 君はやっぱり優しいな。


 僕は君を愛しているよ。

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