第9話 暮内亮司の見守りの日々(9)

 僕が怪しいと思った彼女。

 やはり、総司たちも怪しいと思っているみたいだね。


 そして、気になる事のもう一つ、総司の仲の良い友達の吉岡くんの事。

 彼についての情報が北上さんから入ったんだ。

 

 どうも、質の悪い人達から狙われていて、逃げ回ってるみたいだね。

 そして、その人達は、柚ちゃん達も狙ってるみたいだ。

 北上さんは、久しぶりに総司と共に暴れられるのが嬉しいのか、嬉しそうにしているね。

 ・・・大暴れしている時の双葉にそっくりだ。

 

 そんな総司に、吉岡くんが接触してきた。

 経緯を聞いている。

 

 ・・・この子、良い子だね。

 総司?

 この子を助けてあげないと駄目だよ?

 この子は、君たちの為にも身体を張っているようだから。


 決意を固めた吉岡くんが立ち去ると、総司は携帯電話を取り出し、みんなに連絡をしているようだ。

 まず、間違いなく悪意に晒されるもんね。

 警戒している総司達。

 

 動きがあったのは、終業式の後だった。

 

 再度総司を呼び出した三津浦という女の子。

 明らかに、総司を見てニヤついている。

 悪意が隠しきれていない。

 ・・・いや、違う?

 何か漏れそうになっている感情がある?

 

 移動しているときも、この子には何か・・・恨みのような負の情念を感じる。

 感じる?

 なんで僕はそんな事が出来るようになってるんだ?


 ・・・なんだろう。

 何か、意味がある気がする・・・




 廃れたカラオケボックスに到着し、中に入ると・・・ああ、やっぱり罠か。

 散々総司に悪態をついてる。

 でも、総司はそんなにやわじゃない。

 何せ、『クレナイ』なんて呼ばれるくらいだからね。


 呆気なく三津浦という女の子以外をのして、その場を完全に支配する総司。

 そして、今は三津浦という子を脅している。

 ・・・あんまり、感心しないと感じるのは、多分、僕が総司ほど修羅場をくぐり抜けていないからだろうね。

 総司には、明確にみんなを守ろうという意思がある。

 やはり、総司は僕よりもいい男だと思う。


 

 震える男に車を運転させて、後部座席でふんぞり返っている総司。

 これじゃ、どっちが悪いかわからないね。

 

 でも、それも彼らのたまり場に到着すると、容赦はいらなかった事がよくわかった。

 建物周りや、通路には何人も悪そうな奴が気絶している。

 多分、北上さんがやったんだね。


 そして、ホールに入ると、そこには、北上さん達にまさに襲いかかろうとしていただろう多くのチンピラがいた。

 そして、アザだらけで顔を腫らしている吉岡くんも。


 ・・・やっぱり、僕は甘い。

 これほど悪い人達に、遠慮はいらないんだな。


 『悪いが、ZCT潰すからな。こいつら、救えねぇわ。』


 この人数相手に、平然とそう言えるのは流石だね総司。

 そして、北上さんは凄くウキウキしているね。

 子供らしいところがあって可愛いと思う。

 ・・・物騒な状況じゃなければ、だけど。


 その後、一斉に襲いかかってきた相手を、平然と処理していく二人。

 ・・・本当に凄いね総司。

 あれ、ほとんどカウンターで攻撃してるよね。

 どうやったら、そんな事出来るんだろう?


『あはははははは!楽しいなソウ!やっぱりお前と一緒に戦うの最高だ!!』

 

 それ以上に、北上さんのテンションがヤバい!

 嬉しそうに相手をふっ飛ばしいていくのは、見ていてホラーだ。

 どこにそんなパワーがあるんだろう?

 身体細いのに。


 これ、相手は多分トラウマになるね。


『ははははは!ほらほら!どうしたクズ共!もっと頑張るが良い!!』


 女の子にも全然容赦してないし。

 グーで顔殴ってたよ?

 気の強そうな女の子が、メソメソ泣いてるし。


 あ、吉岡くんを助けた!

 そして、吉岡くんに柚ちゃんたちを預けて、さらに殲滅していく速度があがってる。


 ボスっぽい子も、あっという間に総司にやられちゃったね。

 ・・・にしても、本当に容赦が無いなぁ。

 人間ってあんなに簡単に骨が折れるんだね・・・僕は知らなかったよ。


 いつもの通りに、総司が後処理を進めていく。

 その中で、驚いたことがあった。

 

 総司が、三津浦という子の悪事を、ネットにあげようとした時だ。

 吉岡くんが、土下座までして許しを請うていた。

 彼は、本当に良い子だ。

 三津浦さんも、そんな彼にそこまでさせて、罪悪感でいっぱいの顔をしている。

 ・・・これだけ反省していれば、もう、大丈夫かな?


『は〜!ソウ!楽しかったな!またやろう!!』

『いや、やらねーよ?』

『何故だ!?』


 ・・・北上さん?

 あんまり、葵ちゃんを心配させるような事してちゃ駄目だよ?

 


 最後、外に出た総司たちを、吉岡くんと三津浦さんが見送りに来た。

 そこで、最後の感謝と謝罪をしている。

 それにしても・・・柚ちゃん達は、本当に良い子だね。

 まさか、三津浦さんを許して、友達になるなんて。


 よくわからないけど、なにか女性同士で通じ合うものがあったっぽい。

 告白がどうとか言ってるし。


 そして、総司をおちょくった吉岡くんが、総スカンをされている。

 ・・・どういう事?


『本当にそう!吉岡さん!吉岡さんが一番悪いんです!!この鈍感野郎!!』

『り、莉愛!?なんでだ!?』


 ・・・ほんとに、どういう事?

 僕は、首をかしげている総司たちと同じように首を傾げた。

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