第3話 暮内亮司の見守りの日々(3)

 昨日は大変だったね総司・・・

 黒い子・・・北上さんの宣戦布告の後、総司は針のむしろの上にいるような顔をしていたからなぁ・・・

 今は登校中だけれど・・・総司に三人が積極的になっているね。

 周りの様子を伺うと・・・うん、総司がそこまで心配するほどでは無いようだ。

 総司もそう思っているようで、苦い顔はしているものの、ホッとしているようにも見える。

 良かったね総司。



 



 しかし、そう思うには少し早かったみたいだ。

 校門まで着くと、北上さんが生徒会の人達を引き連れて、あいさつ運動をしていたんだ。

 ・・・懐かしいなぁ・・・僕もやったなアレ・・・

 双葉、それに、琴音さん、清見ちゃんや翼ちゃん、葵ちゃん・・・懐かしいなぁ・・・

 

 あ、北上さんが総司達に気がついた・・・って、何かなこの雰囲気?

 北上さんはとても嬉しそうに総司達に近づいているけど・・・周りが唖然としているみたいだね?

 なんでだろう?

 

 おや・・・北上さんが総司のネクタイの歪みを直してくれたみたいだ。

 気が利くいい子だね。


 『やれやれ。君たちがいながら・・・ふふふ、やはりワタシがソウを管理・・・いや、支えてやらねばな!そう!内助の功という奴だ!!』


 へっ!?

 管理?それに内助の功って・・・


『なんですって!?違うわ!総司を管理するのはあたしよ!!朝も!昼も!夜も!!ベッドの中も!!』


 ベッドの中!?

 西條さん!?

 君は何を言って・・・


『違うもん!!そーちゃんを管理するのは私だよ!!詩音ちゃんでも黒絵ちゃんでも翔子ちゃんでも無いもん!!私がそーちゃんの全部を管理するのー!!そーちゃん!』


 うんうん、そんな事言ったら柚葉ちゃんだって黙ってられないよね。

 でも管理って表現が・・・い、いや、柚葉ちゃんみたいな子に限って・・・そんなわけが・・・


『本棚の裏に隠してある変な本とかDVD、もう捨てて!!私がそーちゃんのを管理するからね!!』


 えーっ!?

 やっぱりそういう事なの!?

 というか、なんで総司のお宝コレクションの事を知ってるの!?


『おい!?なんでお前が知ってんだ!?てゆーかバラすな!!それに意味分かって言ってんのか!?』


 総司が明らかにうろたえてるね。

 うん?なんかこの流れ・・・見に覚えが・・・


『勿論だよ。任せて!私頑張る!あ、本とかはそーちゃんママが教えてくれたよ?』


 双葉!?

 君はなんて酷いことを!!

 待てよ?・・・僕も双葉に何度かバレて大変な事になった気がする・・・

 そう・・・そうだ!

 まだ結婚する前に、何度か探しされて、バレる度に折檻を・・・それで、もっと難しい所に隠すんだけど、いつの間にか見つかって・・・あ!?その時の経験か!?

 

『まったく・・・総司先輩を支え、食欲も性欲も管理するのは、後輩の私だって言うのに・・・それと総司先輩?どういう事ですか?なんで私がいるのに、そんなモノに頼る必要があるんですか?いりませんよね?もうそんなモノは。これからは、私がいるので、我慢しなくて良いんですよ?どんな事にもこたえてあげますから。』

『い、いや翔子そういう問題では・・・』


 翔子ちゃん・・・相変わらずだね・・・それにしても翼ちゃんにそっくりだ・・・


『・・・仕方がないですね。お母さんもつけてあげます!』


 翔子ちゃん!?

 君も何言ってるの!? 


『こらこら、君たち、そういうのは、相性が大事なんだぞ?その点、このワタシは何度も何度も、身体と身体で激しくぶつかり合い、お互いがどう動けば上手く行くのかよく知っているんだ。ソウとの身体の相性はバッチリと言えるだろうね。ならば、このワタシがソウの全てを管理するのは当然だろう。』


 ふぇっ!?

 あれ!?

 そんな事してなかったよね!?

 ・・・って、喧嘩の事か。

 びっくりしちゃったよ・・・


 それにしても・・・あ〜・・・酷いことになってるね・・・

 周囲の人・・・特に男の子達が、絶望した表情をしているね。

 泣いている子もいるなぁ・・・うん?ちょ、ちょっとそこの生徒会の子が泡吹いて気絶してるけど!?

 誰か気がついてあげて!!


『して、ソウ。お前の家にある、いやらしいのというのは、どのようなタイプの相手のモノなのだ?』

『何聞いてんだ!?』


 え!?

 北上さん何聞いてるの!?

 そんなの言えるわけないでしょう!?


『当然、黒髪ロングで、完璧生徒会長な女のモノだろうな?』

『違うわ!黒髪ロングは正しくても、ギャル風の奴よ!!クラスメイトで隣の席の女の子の奴なら尚、良し!』

『違うもん!幼馴染モノで、胸の大きい人のだよ!!多分!!』

『いいえ、違います!幼馴染みは幼馴染みでも、ショートカットの妹風味な後輩モノですよきっと!!スポーツ万能なクール系美少女後輩を、巧みな言葉攻めとドSな表情と行為で、幼馴染みの先輩が攻め立ててるのだと思います!!』

 

 ・・・うん。

 これは総司言えないね。

 僕も知ってはいるから。

 当然、紳士の時間は目をそらして、離れれるだけ離れていて上げているから、目にはしていないけど、持ってるものは知ってる。

 なんでこの子達、ピンポイントで当ててるの?

 怖いね・・・


 可哀想に・・・総司、どれだけ詰め寄られても、絶対に言えないよねぇ・・・

 あ、逃げた。

 頑張って逃げきるんだ!!



 その後も、総司は今まで感じることのなかった周囲からの視線に晒され、だいぶ参っているみたいだ。

 決定的なのは、北上さんが教室に来て、一緒に食事を取った事と、総司のお友達の吉岡くんからの情報みたいだね。

 完全に参ってしまって、口からなんか魂が抜けているみたいだ・・・

 総司、諦めが肝心だよ?

 それにしても・・・四人とも積極的だね。

 やっぱり、みんなの娘だけはあるなぁ・・・


 放課後、総司はみんなで帰宅中だ。

 今日は、北上さんも一緒に家に来るらしい。

 家に着くと見慣れない車があった。

 そして・・・


『あら、暮内くん、いえ、総司くん。こんにちは。お邪魔しているわね。』

『お久しぶりねそーちゃん。あら!格好良くなっちゃって!お邪魔してるわ。』

『おかえりなさい、先日ぶりね総司くん。』


 ・・・葵ちゃん、清見ちゃん、翼ちゃん・・・みんな元気そうだね。

 それに、とても綺麗になった。

 自慢の後輩たちだ。


 葵ちゃん達は、口々に総司にお礼を言っている。

 あれ?総司なんか頬が赤いような・・・


『それにしても・・・みなさん、とてもお綺麗ですね!流石は柚ちゃん達のお母さんだ!見て!お兄ちゃんの顔。あれ、絶対照れてますよ?』

『『『あら♡』』』


 あ!?

 こら瑞希!そんな事言ったら・・・


『総司!あんたまさかそういう性癖が・・・』

『・・・そーちゃん!!お母さんで変な事考えないで!!考えるなら私にして!!』

『総司先輩?私と一緒になったらお母さんもついてきますよ?だから私にしましょう?』

『ソウ・・・まさか、お前が母上をそのような目で見ているとは・・・安心するんだ、ソウ。私も同じ様に成長する筈だ。だから、それまで我慢しろ。』


 ・・・あ〜あ・・・西條さん達の目がつり上がってるよ。

 総司・・・可哀想に・・・それにしても、西條さんはまだしも、柚葉ちゃん達、良く自分のお母さんの前でこんな事言えるなぁ・・・特に翔子ちゃんは・・・うん、とんでも無い子だね・・・翼ちゃんでもそこまでではなかったなぁ・・・


『アホか!だから違うって!確かに皆さん綺麗だとは思うがそんな目で・・・』


 総司・・・必死だね・・・ん?葵ちゃん達が立ち上がって総司に近寄っていってる?

 まさか総司が娘を誑かしたって怒るのかな!?


『嬉しいこと言ってくれるわね・・・総司くんは私のような歳上が良いのですか?黒絵も歳上です、良かったですね?』


 葵ちゃん!?何が!?何が良かったの!?


『ありがとうそーちゃん・・・まさか私の事をそんな風に見てるなんて・・・でも、ごめんなさい。私は夫を愛しているの。だから、代わりに柚葉をあげるわ。大丈夫、柚葉も私の血筋よ?大きくなるわ。』


 清見ちゃん!?大きくなるって・・・そりゃ、なるだろうけど、娘をあげるって・・・


『総司くん?翔子がああ言ってるので、お手伝いするわね。夫には・・・夫にだけは内緒にしておいてね?その分サービスするから♡』


 つ、翼ちゃん!?

 君は何を言ってるんだ本当に!!

 全然変わってない・・・どころかパワーアップしてる!?

 翔子ちゃんがこうなったのは君の仕業だな!?

 そして双葉は笑ってないで止めなさい!!

 ほら!瑞希がめちゃくちゃ見てるから!!


 ・・・あ、見かねて西條さん達が詰め寄って総司に無茶苦茶な事言ってる・・・って襲われてる!?

 双葉ぁ! 

 笑ってないで早く総司を助けなさい!!


 ・・・なんとか部屋まで逃げられたみたいだね。

 総司・・・ごめんね?

 お父さん・・・助けてあげられないんだ・・・


 そんな風に思っていたら、総司はさらなる苦境に立たされていた。

 みんなにしがみつかれて・・・柚葉ちゃん!止めるんだ!そんな事したら・・・!!


『え〜っと・・・『生徒会室での情事 先輩生徒会長とのイケナイ放課後』『いつの間にこんなに!?巨乳になってた幼馴染みの誘惑』『お兄さん!わたし負けないから! 美少女な妹系後輩女子を快楽落ちに』『ギャルしかかたん。クラスメイトのギャルが陰キャの僕を襲ってくるんだが!?』・・・そーちゃん・・・これ・・・』


 ああ・・・総司のトップシークレットが・・・


『死なせて・・・くれ・・・』


 総司・・・なんて哀れな・・・

 西條さん達が元気づけているけれど、総司は体育座りで心を閉ざしている。

 あ、痺れを切らした西條さんが総司と無理やり目線を合わせた。


『もう!総司!しっかりしなさいよ!』

『・・・だが、』

『良いじゃないの!あたしは正直嬉しかったわ!!これって意識してくれてるって事でしょ!?じゃあ、いいじゃない!!』


 ・・・この強引な優しさ・・・やっぱり琴音さんに似てるなぁ・・・


『そ、そうだよ!そーちゃんが好きなタイプになれて良かったって思うよ!』

『そうだな・・・ま、まぁ、ソウがどうしてもと言うのであれば、このようなシュチュエーションでするのもやぶさかでは無い。確か、生徒会室には監視カメラは無かった筈だしな。』

『むしろ、総司先輩が普通に性欲あって良かったと、ホッとしてます。・・・まさか、ここまで今朝言ったのと酷似しているとは思いもしませんでしたが・・・これは言えなくて当然ですよね。』


 他の子も、口々に総司を励ましている。

 まぁ・・・落ち込んだ原因はこの子達にあるけれど、それでも総司を思いやってくれているのはよく分かる。


 ・・・北上さんのは、ちょっと行き過ぎだと思うけど。


 でも、おかげで、総司も元気になったみたいだ。

 よかった・・・めでたしめでた・・・


『さて、お互いに謝ったし・・・これはもういらないわね。パッケージ見る限り、あたしの方が可愛いし。』


 え?

 

『そうだね。もうポイしちゃおう!こんなの!そーちゃんの目の毒です!!私の方が大きくて可愛いし。』


 へ!?


『うむ。やはり、映像では不健全だろう。まぁ、ソウ。安心しろ。ワタシと付き合ったら、どれだけ発散したくなっても受け止めてやろう。それに、ワタシの方が綺麗だしな。』


 なんでそうなるの!?


『『総司先輩?もう、こんなものは必要ありません。ムラムラしたら私がいるでしょう?生涯私が、私だけが先輩の性欲処理をします。それに私も方が可愛いでしょう?というわけで・・・』


 双葉も同じような事を言っていたけど・・・はっ!?

 総司!すぐにその子お宝達を保護するんだ!!じゃないと・・・!!


『『『「えいっ!!』』』


 バキッ!!


『ああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?』


 やっぱりぃぃぃぃ!?

 ああ・・・その子お宝達に罪は無いのに・・・総司・・・可哀想に・・・僕と同じ流れを辿ってるね・・・まぁ、僕のお宝達がバレたのは双葉だけだったけどさ。

 

 その悲しみ・・・よく分かるよ・・・

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