第153話 大学生活2年目(1)

 今日は大学の入学式である。

 翔子は現在、講堂で入学式に出席している所だ。

 去年の事からも、この後、間違いなく絡まれるであろう翔子の為に、俺とシオン、柚葉、黒絵は講堂の近くに待機中である。


「・・・今年も勧誘、酷いかしらね・・・」

「間違いないと思うよ・・・」

「翔子は綺麗だからな・・・」


 シオン、柚葉、黒絵が顔を顰めながら呟く。

 

「まぁ、俺達で守ってやろう。」


 俺も同意見なので、そう言うと、3人は無言で頷く。

 そうこうしている間に、入学式は終わり、新入生が講堂から出てきたが・・・


 ああ・・・


「既に絡まれてたわね・・・」


 シオンがため息をつきながらそう言った。

 人の塊が出てきて、中心には翔子がイライラした顔でいた。

 男どもが必死に話しかけている。


 やれやれ・・・


「翔子!」

「あ!総司くん!黒絵さん達も!どいてください!!」


 翔子が男どもをかき分けて俺達のところに走り寄る。

 男どもは、明らかに俺達・・・というか俺を睨みつけてきた。


「お疲れさん。大変だったな。」

「いえ、大丈夫です。」

「翔子ちゃん、案内するね?」

「はい!お願いしま・・・」

「ちょっと待ってくれ!」


 翔子と柚葉が話している最中に、新入生のうち、いかにもチャラい男が絡んできた。


「あのさー、俺達が先に声かけてんだから、こっち優先してくんない?・・・って、お姉さん達も超美人じゃん!俺も一緒に案内して貰って良い!?」


 ズカズカとこっちに近寄ってくる男。

 

「悪いがそれはできない。俺達は知り合いなんでね。」

「お前には聞いてねぇよ!黙ってろ!!」


 そう叫びながら腕を伸ばして、俺の胸ぐらを掴もうとした。

 俺はその手首を強く握り、そのままテコの原理で間接・・・というか腕の骨に負荷をかけ、その痛みで体勢を崩し、膝まづかせる。


「イテテテテテテ!?は、離せ!!」

「離して下さいだろ?礼儀のなってねぇ奴だな。」


 俺は更に強く握る。


「いてぇぇぇぇぇ!?離せ!離して!離して下さい!!」


 俺はそのままそいつの耳元に口を近づける。


「おい・・・相手見て物言えよ?じゃないと・・・どうなっても保証できねぇぞ?わかったか?」

「分かりました!すんませんでしたぁ!!」


 俺が手を離すと、手首を抑えてうずくまる男。

 そのまま、翔子に詰め寄っていた男どもを見ると、男どもはたじろいだ。


「あんまり女の子を怖がらせるんじゃない。次に同じことを見かけたら・・・な?」


 少し睨みつけてそう言ってやると、そいつらは表情を引きつらせ、退散していった。

 まったく・・・あんな強引で女の子の気が惹けるなんて本気で思ってるのかねぇ・・・

 俺には怖がらせてドン引きされるようにしか思えないんだが。


 その後は、勧誘で翔子に近づこうとするサークルや部活の奴らがいたが、側に俺と黒絵がいる事に気がついた瞬間、その場に止まり、そのまま回れ右をして離れていく。

 俺達の事を知らない奴らが声をかけて来ても、そのサークルなんかの仲間が来てすぐに回収してくれた。


 うんうん。

 物分りが良いのは素晴らしい!

 去年一年、陰で俺の所に来た奴らに、根気よく貰ったのが良かったんだろうな。

 中には震えながら後輩や同級生を回収に来た奴もいたもんなぁ・・・





 夏までは主に、翔子が大学に慣れる為に費やした。

 基本一限から授業があるため、全員で通学する。

 食事は、やはり俺達がいつも食べる第一食堂だ。

 

 ここが、1番広くて、安い。

 やはり翔子も人目につくので、色々な虫が寄ってくるようだ。

 あんまりしつこい奴は、俺か黒絵が応対して貰っている。

 どいつも涙を浮かべながら素直に応じてくれる。

 素直なのは良いことだ。


 ちょっと一人だけ物わかりの悪い奴がいて、大学が終わってから悪いお友達と一緒に声をかけて来たので、俺と黒絵がら、そいつは大学を辞めてしまった。

 おかしいなぁ・・・アイツらの言語に合わせてやったってのに。

 久しぶりの共同作業で黒絵は喜々としていたけどな。



 夏到来。


 俺達は例によって琴音さんの会社でアルバイトである。

 今年からは、翔子もだ。


 翔子は、翼さんから秘書としての仕事の基礎も教わっていた。

 シオンも、母さんから基礎を教わり始めた。

 俺は、雑務と、琴音さんの補助もやるようになった。

 たまに社長室で、琴音さんと翼さんに襲われそうになるが、だいたいシオンが気づいて注意して止める。

 俺も、会社ではやめてくださいといつもお願いしているのだが・・・


 柚葉は、本格的に家事をやってくれている。

 勿論、まだ学校もあるので、一人では厳しいこともあり、みんなで手伝っている。

 

 黒絵は、アルバイトこそしていないものの、収入は俺達の中では1番ある。

 株や投資が主な稼ぎだ。

 やってることが、もう、大学生では無いと思う。


 だから、高めの家賃もなんとかなっている。

 一応、大学在学中は親からの仕送りもあるしな。

 俺達はいらないと言ったのだが、やはり親として、学生の間は少しでも受け取れと言われ、ありがたく頂戴する事とした。


 一応、海やプールなんかにも行った。

 そして、今年はキャンプにも行った。


 中々充実していると思う。


 瑞希も、たまに遊びに来る。

 受験生なので、そこまで頻繁では無いが、それでも他の学生よりかは余裕があるようだ。

 やはり、こいつはスペックが高い。

 そう言えば、夏休み中に杏奈ちゃんと泊まりに来た時に、シオン達と女子会をしていたが、・・・女子会なのに何故か俺もそのまま参加させられたが、シオンの『彼氏は作らないの?』という質問で、『良い男がいない』とか生意気な事を言っていたから、高望みしずぎなんじゃないか?って言ったら、思い切りビンタされて、『誰のせいだと思ってんの!!』と怒鳴られた。

 意味がわからん。

 

 しかし、女性陣(杏奈ちゃんを含む)がうんうんと頷いていたから、多分悪いのは俺なのだろう。

 ・・・解せぬ。


*******************

あとがき

カウントダウン 残り8話

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