第147話 大学生活一年目(2)

 秋を迎え、少し肌寒くなった。

 人恋しくなる季節だ。

 

 俺達は、来年に向けて、家探しを始めた。

 翔子の卒業を待って、みんなで暮らす為だ。

 大学の近くで、どこか良いところが無いか探す。

 何件かあったが、内見して見ると・・・微妙な所が多かった。


 まだ、時間はある。

 気長に探す事にした。

 来年の2月中には決めておきたい。

 引っ越しもあるしな。


 


 大学生活は上々だった。

 学部が違うから、主にシオンや柚葉、黒絵と会うのは学食がメインになる。

 たまに、シオン達からは愚痴を聞いた。

 どうも、よく校内で声をかけられたり、遊びに誘われるらしい。

 全て断っているが、鬱陶しくて仕方がないとの事。

 黒絵も同じ様なものらしいが、最近は落ちついているそうだ。

 昨年はかなり酷かったようだが。


 そして、話は俺の事になった。

 幸い、俺は、周囲に恵まれているのか、そんなに嫌な思いはしていない。

 ・・・男友達は出来ていないが。

 というか、俺に声をかけてくる男は、だいたいシオンや柚葉や黒絵を紹介しろって奴ばかり。

 ほとんど相手にしていない。

 だが、そんなボッチの俺を心配して声をかけてくれる希少な人もいる。

 

「おはよう暮内くん。今日も授業頑張ろうね?」


 その人は、ポツンと長机に座っていた俺によく話しかけてくれる人だ。

 見た目?

 そうだな・・・綺麗な感じかな?

 その子と、その友達と思われる女の子達は、俺と被っている授業が多く、気にかけてくれているようだ。


「ね〜ね〜暮内くん、今日のお昼一緒に食べない?」

「そうそう!たまにはどう?」

「・・・いや、一緒に食べる人達はもう決まってるんだ。ごめんね?」

「そっかぁ・・・残念。」


 そんな感じで、食事の事まで気にしてくれている。

 ありがたい話だ。

 だが、俺にはシオン達がいるからなぁ・・・俺も、せっかくなら、あいつらと一緒に居たいしな。

 全て断っている。


「あ!そうだ!それなら、授業後、どこかに遊びに行かない!?」

「・・・ごめん。バイトがあるから・・・」

「ええ〜?そうなんだぁ。」


 そう、俺は、アルバイトを始めた。

 それは、琴音さんの会社の手伝いだ。

 幸い、ここから家までの帰りに会社はある。

 

 実は、シオン、柚葉もそこでアルバイトをしていた。

 もっとも、雑務が多いけどな。

 琴音さんは、会社の雰囲気に慣れる為って言ってた。

 

 そうそう、今年の春からは、母さんも琴音さんの会社で働いている。

 前の会社からは凄く引き止められたらしいけれど、全て突っぱねたそうだ


 さて、それはさておき、俺が説明を終えると、シオンと黒絵と柚葉の顔が、苦虫を噛み潰したような表情になっていた。

 なんだ?


「・・・ねぇ黒絵。これ・・・」

「ああ・・・間違いないだろうね。柚葉はどう思う?」

「私も、詩音ちゃんと黒絵ちゃんと同じ考えだよ・・・危険だね・・・」


 危険?

 なんの事だ?


 よくわからないが、俺は、


 昼は必ずシオン達と一緒に食事を取ること。

 余計な人は連れて来ないこと。

 授業後は、シオンか柚葉、黒絵の誰かと必ず一緒にいること。


 を約束させられた。

 ・・・一体、何を心配しているんだろう?

 しかし、鬼気迫る表情でそう言われたら、断れない。

 



 冬。

 一気に寒くなる。

 クリスマスは毎年と同じだ。

 俺は頑張った。

 ミニスカサンタの群れを相手にな!!

 正直、めっちゃ興奮した。


 

 ・・・琴音さんと翼さんも、シオンと翔子をうちに送りがてら来たのだが、何故かミニスカサンタの衣装を来ていた。

 ・・・すっげぇ似合ってた。

 というかエロかった。

 ヤバかった。

 シオン達が身を挺してブロックしていなかったら、そのまま食われていたかもしれん・・・


 母さんもミニスカサンタになっていた。

 似合っていたかもしれないが・・・親のそれはきつい・・・


 瑞希はいつもどおりパシャパシャと写真を撮っていた。

 ミニスカサンタで。

 

 感想は以上だ。

 色とりどりのチラリがあったとだけ付け加えておこう。



 正月を迎え、俺達は初詣に行った。

 翔子は熱心に合格祈願をしていた。

 絶対に受かって欲しい。


 年明け以降は、翔子は受験一色だった。

 俺達もその手助けをした。

 特に柚葉は、家事の修行がてら、翔子の家に泊まり込み、家事代行をしていた。

 翼さんからアルバイト代を貰ってな。

 料理も頑張っているようだ。


 俺達の住む家も決まった。

 結構良い一戸建ての借家を見つけたのだ。

 どうも、所有者が家を建てた後に、海外への転勤が決まり、10年程日本を離れる事になってしまったらしい。

 なので、それまでの間、借家となったそうだ。

 5LDKなので、一人一部屋ある。

 少し割高の借家であるが、条件はばっちりだった。

 俺と黒絵、翔子、柚葉で金を出し合い、ここを借りる事にした。

 頭金は、黒絵に建て替えて貰った。

 相変わらず、株で荒稼ぎしているようで、返さなくて良いと言っていたが、そういうわけにはいかないだろう。

 だが、取り敢えずは甘える事にした。

 いずれは返すつもりだ。


 2月に入ると俺達は、家具や雑貨を見に行く事が多くなった。

 翔子の物は、受験が終了し次第、みんなで見に行く事になっている。

 卒業してすぐに入居する事にしたらしい。

 これで、みんなでいつも一緒にいられる。

 こんなに嬉しい事は無い。


 そして、翔子の卒業を迎えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る