閑話 それからの一年

 俺と柚葉、シオンの3人は最終学年になった。

 翔子は2年生への進級。

 そして、瑞希がうちの学校に入学して来た。 

 瑞希も、見事合格していたのだ。


 一年間の思い出は色々あるが、受験がメインだし、簡単に説明しようと思う。

 

 ゴールデンウィークでは、黒絵を交えて、また別荘まで家族ぐるみで泊まりに行った。

 まとまった休みという事で、俺達は楽しく過ごせた・・・昼間は。

 夜は・・・言わなくてもわかって貰えると思う。

 何せ、黒絵は俺達に常に会えるわけでは無いというストレスを抱えており、それを解消するかの如く、凄まじい貪欲さを見せた。

 そして、それに負けられないと、シオンや柚葉、翔子も襲いかかってくる。

 そんな状況を、酔っ払った母さんや琴音さんたちに覗かれたりした。

 朝、朝食の時にそれを暴露され、シオン達は顔を赤らめた。

 しかし、翔子の、『まざれば良かったじゃないですか』という発言には、肝を冷やした。

 それを鵜呑みにした琴音さんと翼さんが、次の日の夜、翔子とのタイミングで部屋に突入してきて、異変に気がついた清見さんと葵さんに引きずり出されていたからな。

 勿論、母さんは笑っているだけだった。

 あ、そうそう、ちなみに食われてはいない。 

 ・・・危ない所ではあったが。


 夏休みは、受験勉強が主だった。

 特に、柚葉がやばかった。

 いつも余裕の無い顔で、勉強していた。

 一度、無理に頑張る必要は無いと言ったのだが・・・

『私は、絶対に黒絵ちゃんやそーちゃん達と一緒の大学に行くよ!絶対!!』

と、凄まじい気迫で勉強していた。

 そんな柚葉に触発され、俺達も気合が入った。

 おかげで、模試でA判定がとれた。

 柚葉は泣きながら喜んでいた。 

 一応、息抜きにレジャープールにみんなで行ったりもした。

 当然、黒絵も一緒にだ。

 この時は、光彦と三津浦も一緒に行くことになった。


 たった一年だが、みんな魅力が上がっていたのか、プール内の視線を独占していた。

 まぁ、バカどもがしつこく声をかけてきたから、俺と光彦、黒絵で丁寧にもらったがな。

 最後は、泣きながら喜んで離れてもらったよ。

 わかって貰えて良かった良かった。


 体育祭では、陰キャを止めた俺が大活躍をしたり、2年生ではスポーツ万能の翔子が無双していたり。

 そう言えば、驚いた事があった。

 瑞希があんなに動けたのを知らなかった。

 翔子ばりに無双していた。

 ・・・これも、母さんの血なのだろうか・・・


 そう言えば、借り物競争で、『好きな人』というお題の紙を引いた生徒が、シオン、柚葉、翔子の所に告白がてら頼みに来て、盛大に振られて泣いていたりもしていた。

 ・・・実は、俺の所にも、下級生の女の子が来た。

 同じお題を持って。

 その時に言われた言葉は、『好きです!私も仲間に入れて下さい!!』と言うもの。

 かなり驚いた。

 何せ、その子は結構可愛かったのだ。

 しかし、驚いたが・・・やはり、そういうわけにはいかなかった。

 俺は、その子の事を好きな訳では無かったからだ。

 というか、あまり知らなかった。

 丁重にお断りした。

 ・・・もっとも、その件で嫉妬したシオンと柚葉、翔子、そして、それを聞いた黒絵に、とんでもない目に遭わされたが。

 主に夜に。

 ・・・恐ろしい。

 ちなみに、光彦のところにも同じ様に下級生が行っていた。

 そして、それを三津浦にチクられていた。

 翔子から。

 後日、光彦に文句を言われた。

 どうやら、光彦も搾り取られたらしい。

 ざまぁ!


 そうそう、瑞希と言えば、あいつ、かなり大きな猫を被っていたようだ。

 入学してすぐぐらいに、アイツの友人と一緒にいるところに出くわしたのだが・・・アイツの話し方を聞いて、思わず吹いてしまった。

 そして、その後、シオンと翔子が上手くごまかしてくれたのだが・・・帰宅後、瑞希を含む女性陣にボコボコにされた。

 物理的に。

 デリカシーが無い!とな。

 ・・・そんな事言われてもなぁ。


 どうも、シオン達は瑞希の猫被りは知っていたらしい。

 瑞希が、入学前にあらかじめ相談していたようだ。

 何故、兄である俺に相談していないのか・・・

 複雑な気分である。


 以前会って欲しいと言われて会った、杏奈ちゃんとは普通に接していたはずなんだが・・・解せぬ。


 そして、もう一つ驚いた事があった。

 どうやら、瑞希が色々な人に俺達の写真を見せていた事が功を奏してか、俺達の関係は学校中に広まっていた。

 驚いたのが、ほとんどの者が好意的に受け取っていた事だ。

 何故だろう?


 まぁ、中にはシオンたちに惚れて、俺に絡もうとした下級生もいたらしいが・・・どうも、俺と同じ学年の生徒に止められたらしい。

 あの、去年の副会長達の事件で、俺と黒絵にボコられて停学になった生徒達が、俺が強いというのを言いふらしたらしく、俺に対し実力行使では絶対に勝てないと吹聴していたようだ。

 丁度いい抑止力になったみたいだな。


 まぁ、デメリットも無いし、もう隠していないから、別に言いふらされても構わないんだけどな。

 むしろ、口止めしなくて良かったと思った。

 

 そして、冬休み。

 やはり、受験勉強がメインである。

 たまに、息抜きがてらみんなで遊んだりはしていた。


 じゃないと、黒絵と翔子が可哀想だし。

 黒絵は、時間がある時は、勉強を教えにうちに来ていた。

 特に、柚葉をメインに据えてな。

 正直助かった。

 めちゃくちゃ分かりやすいんだよ、黒絵の教え方は。

 受験終わったら、お礼をしないとな。


 クリスマスも簡単に済ませ・・・まぁ、俺が夜にひどい目に遭うのはそんなに変わらないが、それなりに息抜きをした。

 正月もそれは同じだった。


 そして冬休みを終え、受験一色となる。

 俺達は、黒絵程の余裕は無い。

 シオンは結構あるかもしれないが・・・俺達に付き合ってくれた。


 そして、卒業の時を迎える。

 

 


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