第133話 2月のイベントと言えば?(1)

前書き

ちょっと思いついたので、突発イベントと被りましたがバレンタインです。

******************


「さて、総司。覚悟は出来ているかしら?」

「・・・」


 今、俺は追い詰められていた。

 完全に抵抗できなくされている。

 何があったか・・・俺は記憶を思い返す。




 今日は、バレンタインデーだ。

 

 今年のバレンタインは、明日が土日という事もあり、みんな俺の家に泊りがけで来ている。

 

 そう、泊りがけだ。

 泊まりのメンバーはシオン、柚葉、翔子、黒絵・・・そして、琴音さんと翼さんだ。

 清見さんと葵さんは来ていない。


 なんでも、娘がいない事もあり、それぞれ旦那さんと仲良く過ごすそうだ。

 怖いのは・・・二人からの伝言だった。


『そーちゃんハッピーバレンタイン!私からのチョコは、柚葉から受け取ってね?・・・それより、今日、お泊りなんでしょ?琴音センパイと翼には気をつけるのよ?あの二人は、何をしでかすかわからないから。パクっと食べられないように気をつけなさいね。』

『総司くん、バレンタインのチョコレートは黒絵に渡してあります。受け取って下さいね?それと・・・今日はストッパーである私と清見はいません。肉食獣が二匹紛れ込んでいますから、くれぐれも気をつけるのですよ?黒絵にも口うるさく言ってありますが、この件に関しては、双葉先輩もあちら側の可能性が高いです。隙を見せないように。』


 ・・・俺はこの言葉を電話で聞いた時に、だったら泊まりに来てくれませんかと聞いてみたのだが・・・


『愛する旦那とラブラブするから・・・ごめんなさいね?』

『たまには、子供抜きで夫婦の時間を過ごすという事になっているの。ごめんなさい。』


 うん・・・それは仕方がない。

 双牙さんも、翔一さんも嬉しそうにしているらしいし、俺のわがままにはつき合わせられないよなぁ・・・

 それにしても、バレンタインか・・・


 俺は先日見た夢を思い出す。

 と言っても、断片的にしか覚えていないのだが・・・


 その夢の内容は、何故か俺は大学生で、あいつらと一緒に暮らしていた。

 そして、バレンタインデートをする事になり・・・その途中で見知らぬ女性に話しかけられ、浮気を疑われて・・・!?頭痛が!?


 何か大変な目に遭ったような気がする。

 何せ、起きた時に汗でびっしょりだったからな。


 ・・・あれが、現実にならない事を祈る。


「ソウ?聞いているのか?」

「・・・ああ、聞いている。」


 俺は、現実逃避をやめ、黒絵達の話に耳を傾ける。


「そーちゃん?百歩譲って琴音さんと翼さんからチョコを受け取るのは良いの。お母さんも渡してたし。でもね?だからと言ってあれは無いと思うの。」

「・・・俺が頼んだわけではなかったんだが・・・」

「総司、だからと言って、あれは許せないわ。」


 三人が怒っている事。

 それは、夕飯後、シオン達が入浴中に遡る。






 シオン達は、みんなで風呂に行っていた。

 相変わらず仲が良い。

 俺は、自室に向かおうとして・・・がしっと肩を掴まれた。

 

 振り向くと、そこには瑞希が居た。


「なんだ瑞希?」

「お兄ちゃん、私があげたチョコ、もう食べた?」

「悪い、まだなんだ。すまない。」

「ううん。良いの。お義姉ちゃん達のもあるだろうし。なら、ここでちょっと食べない?私も食べたかったんだ〜。」


 ・・・まぁ、そうだな。

 折角、可愛い妹がくれた奴だし。


 俺は、ソファに近づき、瑞希と並んで座る。

 

「はい、お兄ちゃん。あ〜ん。」

「あ〜ん。」


 俺が自室から持ってきた、瑞希がくれたチョコを開けると、一つつまんで俺の口元に持ってきたので、遠慮なく食べる。

 ・・・上手いなコレ。

 結構、良いやつなんじゃないか?


「はい、じゃあ交代ね?」

「は?」


 瑞希はそう言って立ち上がると、すぐさまそこに琴音さんと翼さんが俺を挟むように座り込み、肩を組んできた。

 まさか!?


 俺がバッと瑞希を見ると、笑顔で、


「どうしたのお兄ちゃん?」

「お前・・・まさか・・・」

「あ、私用事があるから部屋に行くね?ごゆっくり♡お母さん、後よろしくね!」

「み、瑞希〜!!!」


 嵌められた!!

 また、俺を売りやがった!!

 しかし、そんな風にしていても、現状は改善しない。


 俺達を見る母さんが凄くニコニコしている。

 そして、携帯をこちらに向けている。

 面白がってやがる!!


「さて・・・じゃあ、次は私達のね?」


 二人から肩を組まれ、匂いや感触にドギマギしていると、二人は懐・・・というか、胸の谷間から包装されたチョコを取り出した。

 どこに仕舞ってるんだ!!


「総司くん、はいどうぞ♡」


 翼さんが包装を解き、そして手でつまんで俺の口元に持ってくる。

 さ、流石にこの状態で食べるのは・・・


 俺が躊躇していると、琴音さんがニヤッと笑った気がした。


 そして、天国と言う名の地獄は加速する・・・

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