第132話 黒絵の卒業に向けて

「さて、今日話し合うのは、黒絵の卒業祝についてだ。」


 新年も数週間が過ぎた。

 黒絵は今日、受験の関係で用事があり、共にはいない。


 今は、俺とシオン、柚葉、翔子でファミレスに来ている。


「黒絵ちゃんが喜ぶ事か〜。なんだろうね〜?」

 

 柚葉が、人差し指を顎に当て、小首を傾げている。

 

「そうですね・・・どうしましょう?一番悦ぶのは総司くんとの無制限デスマッチだと思いますが・・・アレも手に入りましたし。」


 おい。

 喜ぶの意味が違うだろうが!

 それに、なんだデスマッチって!

 アイツの場合、それは色々意味を持つんだぞ!

 ガチで戦いたがったらどうする!

 間違いなく、大怪我するぞ!!


「・・・まぁ、あたしはそれでも良いとは思うんだけど、それとは別として、何かお祝いのプレゼントか、催しをしてあげたいわよね。」


 ・・・それとは別?

 それとは別って言ったか今?

 もしかして、それは確定なのか?


「そうだね〜。あ!そうだ!だったらさぁ、こんなのどう?」


 柚葉の案をみんなで聞くと、全員目を輝かせた。

 俺もそれは中々に良い案だと思った。

 やるじゃないか柚葉。


「良いわねそれ!」

「はい!なら、今年のお祝いの度にそれぞれに”それ”をプレゼントするってのはどうでしょう?」

「良いんじゃないか?俺は賛成だ。記念の品として申し分ない。」

「でしょ!じゃあそれでいこうよ!みんなでお金出せば、そこまで高くならないんじゃないかな?」

「なら、俺が男として少し多めに出すとしよう。」


 これは本当に良いと思う。

 こうして、黒絵の卒業祝の品は決まった。

 

 確認事項もあるから、その辺りは女性陣に任せる事にする。


 まだ期間もあるし、また、黒絵がいないタイミングで、みんなで探せば良いしな。


「じゃあ、それは決まりね?後は・・・そうねぇ・・・総司との一泊二日でどこか泊まりに行って貰いましょうよ。」

「う〜ん・・・でも、黒絵さんはみんなで卒業旅行に行きたがると思いますが・・・」

「そうだねぇ・・・でも、別に一回だけしか行けないわけじゃないでしょ?だったら、卒業旅行とは別に行って貰えば良いんじゃないかな?」


 ・・・え?

 それって・・・どちらにしろ、俺が大変な思いをする事になるんじゃ・・・


「そうしましょう!うふふ・・・もう、回数を気にする必要もありませんしね。」

「ええ、そうね。無しでするのがあんなに良いなんて思わなかったわ!それに満足感も凄いもの。」

「そうだよね!全然痛く無くなったしさ!私も大満足だよ!」

「あ、あのさぁ。俺にも限界ってものがだな・・・?」


 危ない!

 コレは、このまま進めたら俺がヤバくなる奴だ!

 なんとしてでも、ここで止めねば!!


「限界?総司・・・人間は限界を越える事が出来る、稀有な生き物なのよ。」

「そこで越える必要ねぇだろうが!」

「何言ってるのそーちゃん。自分で限界を作っちゃいけないよ?そーちゃんなら大丈夫!」

「そういう問題じゃねぇだろ!何を根拠に言ってるんだ!」

「総司くん・・・そんなに気になるなら、一度計測して見ましょうか。総司くんの限界を・・・」


 翔子が、舌で唇をぺろりと舐めながら、妖艶に俺に流し目を送る。


「いや、いい!しなくていい!」

「そーちゃん、私知ってるよ?あれでしょ?押すな押すなってヤツ!」

「違う!フリじゃねぇ!!」

「総司?なら、別に良いわよね?だって限界なんてわかんないんだから。」


 くっ・・・!!

 こいつら、あの手この手で・・・!!

 駄目だ、逃げ道がねぇ!!


 俺はがくりと肩を落とす。

 そんな俺を見て、シオンは満足そうにした。


「はい、決まり!じゃあ、決まった事を確認するわよ?」


 シオンが言った事をまとめるとこうだ。


・ 今年のお祝いの時、一人一回、特別なプレゼントをする。

・ 卒業旅行には全員で行く。(これは、これから卒業を迎える度に行う。)

・ 卒業旅行とは別に、卒業時、各員一回は俺と二人きりで泊りがけで出かける。


 という物になった。

 ・・・今から、不安でしか無い。

 まぁ、これも惚れた弱みだろうか。

 

 甘んじて受けよう。



 こうして、打ち合わせは終わった。

 黒絵も間もなく卒業だ・・・なんだかんだで寂しくはなる。

 一足先に大学に行く黒絵。

 

 ・・・俺達も、絶対に同じ大学に合格しないと、な。

 頑張って勉強しよう。

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