第131話 新学期の学校

ヒソヒソ


「おい・・・」

「ああ・・・」

「なんか変わったなアイツら・・・」


ヒソヒソ


「・・・ねぇ」

「・・・うん」

「なんか距離近い・・・って言うよりも自然?」


 今日から新学期だ。

 なんだか、今日は朝から視線が凄い。

 原因はなんだろうか?


 今は昼放課だ。

 いつも通りシオンや柚葉、翔子、黒絵と食事を取り、今はまったりタイムだ。


「あ〜・・・そーちゃん・・・学校って疲れるねぇ・・・」


 背後から、柚葉が覆いかぶさるようにくっついている。

 柚葉のクラスでは、今日は体育でマラソンがあったようで、ぐったりとしている。


「黒絵さんは何時いつ頃から自由登校になるんです?」


 翔子が、俺の膝に座りもたれかかっており、横にいる黒絵を見ながら言った。


「そうだね・・・我が校は2月からだった筈だ。」


 黒絵は、椅子を寄せて、横から俺にもたれかかっていた。


「そっか・・・自由登校・・・黒絵どうするの?学校来るの?」


 反対側からはシオンが背を向けて、俺にもたれかかっている。


 あのクリスマス以降、そこまで照れることは無くなった。

 俺もくっつかれっるのは安心するしな。

 これくらいなら。


「ああ、ワタシは来る予定だよ。じゃないと、君たちにあまり会えなくなるのでね。」

「黒絵ちゃんに会えなくなるの寂しいから、来てくれるなら嬉しいな〜」


 俺はみんなの話を聞いて、相槌を打っている。

 俺も、黒絵が来てくれるのは、正直嬉しい。

 だが・・・


「受験は本当に大丈夫なんだな?」

「ああ、大丈夫だ。だが、最近、違う考えに惑わされる事がある。」

「違う考えってなんです?」


 黒絵の言葉に気になった翔子が、疑問を口にする。


「わざと留年して、ソウ達と一緒に卒業する。」

「アホか。ちゃんと卒業しろ。」


 めちゃくちゃアホな考えだった。

 しかし、俺がそう言うと、黒絵はムッとして、俺の頬を頭でグリグリとしてきた。

 ・・・いい匂いだが、やめろ。

 それにちょっと痛い。


「なんでそんな事言うのだ!ワタシだけ卒業するのは寂しいのだ!」

「お前なぁ。翔子だって一年は寂しい思いをするんだぞ?」

「それはそうだが・・・む〜!」


 黒絵がむくれている。

 ・・・ちょっと可愛い。


「おお・・・やってるなぁ。」


 そんな俺達に近づく男。


「光彦か。」


 光彦は俺達を見て、頷いた。


「どうやら、ヤッたようだな。」


 光彦がうんうんと頷いてそう言った。


「セクハラ。」

「吉岡くんサイテー。」

「吉岡さんデリカシーを持って下さい。莉愛に注意して貰いますよ?」

「死ね。」


 ・・・いや、確かにその通りだが、きっついなぁ・・・特に黒絵。

 死ねは流石に可哀想すぎる。


「・・・そこまで言わんでも・・・」


 ほら!

 光彦ちょっと涙目じゃねーか!


「ま、そういうこった。そういうお前もだろ?」

「・・・まあな。」


 光彦は、苦笑いをしていた。

 どうやら、こいつらもクリスマス、上手くいったみたいだ。


「ああ、ワタシ達も知っているぞ?莉愛から連絡が来たからな。」

「莉愛から?」

「うん。これだよ〜?」


 黒絵の言葉に眉を潜めた光彦に、柚葉がLINの履歴を表示する。

 どうやら、女性陣だけのグループがあるようだ。

 なになに・・・?


『光彦くんとエッチ出来ました♡すっごく優しかった♡莉愛ちゃん大勝利!!』


 ・・・これはなんとも。

 光彦をちらりと見ると、顔を押さえて天を仰いでいる。

 まぁ、そうなるだろうな・・・ん?


『おめでとう莉愛ちゃん!こっちも出来たよ!!』

『莉愛、おめでと。私達も総司に抱いて貰ったわ。』

『おめでとうございます莉愛。私も凄く気持ち良かったです。』

『本当!?おめでとう皆さん!念願叶いましたね!!』

『はい。今は、黒絵さんが2回目をしているところです。』


 んん?


『え!?も、もう2回目ですか!?』

『そうよ。この後、翔子、柚葉、あたしの順番よ。』

『は、早くないですか?痛くなかったんですか?』

『私すっごく痛かったんだけど、早く慣れたいし、いい機会だからね〜。』

『あれも12枚入りを3箱買ったから、今回の旅行で使い切るつもり。』

『はえ〜・・・これは負けていられません!私も今から頑張ります!!』


 ・・・こ、これは・・・

 光彦を見ると、顔を顰めている。

「だからか・・・」と呟く声も聞こえる。

 どうやら、心当たりがあるようだ。

 

『しかし、それだとお金が結構かかっちゃいますね・・・あ!そうだ!良いこと考えました!今度一緒に産婦人科に行きません?』

『なんで?(うさぎが、首を傾げながら「なんで?」と言っているスタンプ)』

『アレを飲めば、つけなくても・・・』

『はっ!?(犬が驚いているスタンプ)』

『!!(目が大きく白目の女の子が驚愕の表情を浮かべているスタンプ)』

『っ!!(魔法少女が息を飲んでいるスタンプ)』


 俺と光彦はお互いに顔を見合わせる。

 

『そうすれば、回数制限は無くなりますよね?』

『なるほど!!莉愛!あんた良いこと考えたわね!!』

『そっか〜・・・なんか、そっちの方が痛くもなさそうだし・・・』

『・・・今調べたら、身体への負担はあるようですが・・・でも、いいアイデアだと思います。』

『じゃあ、今度行きましょう!』

『ええ、黒絵にも言っておくわね。』

『はい!』




『莉愛、おめでとう。ワタシも今2回目が終わった所だ。君の案は素晴らしい。是非参加させて頂こう。』





『黒絵さんもおめでとうございます!私も今二回目が終わりました!一緒に光彦くんや暮内先輩を離れられないようにしましょう!』

『ああ、そうだね。ソウもその方が喜ぶだろう。我々がソウや吉岡のそれを管理するのだ。一滴足りとも無駄撃ちをさせるものか。』

『そうですね!』


 !?

 こ、こいつら・・・

 俺はすぐさま光彦を見ると、驚愕の表情を浮かべている。

 ・・・おそらく俺も同じ様な表情を浮かべていることだろう。


『お互いに相手を快楽漬けにするわよ!頑張りましょう!!』

『はい!』

『ああ!』

『うん!』

『ええ!』


 俺達は、バッとシオン達を見る。

 すると、そこには、笑っているものの、目がしっかりと真剣になっている四人がいた。


「・・・逃げられないわよ?」

「逃さん。」

「そーちゃん、吉岡くん、覚悟しててね?」

「莉愛の休みは把握しました。近日中には決行となるでしょう。楽しみにしていて下さい。良かったですね?今後は・・・数を気にせずデキますよ?」


 その時だった。


 Pon!


 と携帯にLINの通知音がなった。

 光彦のだ。


「そうそう・・・莉愛にはこれ、見せた事言ったから。」


 光彦がメッセージを見て驚愕している。

 それを覗き込むと・・・


『光彦くん・・・見ましたね?楽しみにしてて下さい♡私がんばりますからね♡』


 わなわなと震える光彦。

 そして・・・俺も震えていた。


「な、なぁ・・・身体に負担があるならやめた方が・・・」

「そ、そうだぞ!身体は大事だ!莉愛にもそう言って・・・」

「駄目だ。」「駄目ね。」「駄目だよ?」「駄目です。」

「「!?」」


 な、なんで・・・


「恋人とつけずに出来るのだ。嬉しいだろう?」

「そうそう。ただ気持ちよくなるだけじゃない。良かったわね?」

「うんうん!これでそーちゃんもっとも〜っと出来るね!」

「総司くん、吉岡さん、嬉しいですか?嬉しいですよね?総司くんは私達と、吉岡さんは莉愛とデキるのですから。」


 馬鹿野郎!

 ここ教室・・・!!


「や、やっぱりアイツあの四人と・・・!!」

「がぁぁぁぁぁ〜!!考えたく無い!!」

「憎い!!ただただ憎い!!」

「つ〜か光彦やっぱ彼女いたのかよ!!クソッ!!リア充どもめ!!」

「それも莉愛ってあの莉愛ちゃんだろ!?いつの間に!?」


 男達の憎悪の声と射殺さんとする多数の視線。


「やっぱりねぇ・・・」

「だと思った・・・でも・・・」

「四人ともなの・・・?」

「え!?ちょっと待って!?光彦くん彼女居たの!?」

「莉愛・・・それって、学校やめたモデルの莉愛ちゃん!?嘘!?」

「あ〜あ・・・取られちゃったかぁ・・・」


 女子達は、俺に納得の視線を送る者と、光彦に向ける驚愕の視線を送る者がいた。

 

 ざわつく教室。

 頭を抱える俺と光彦。

 

 そして・・・不敵に笑うシオン達。


 もうちょっと手加減してくれませんかねぇ・・・


「はっきり言っておかないと、ちょっかいがウザいのよ。」

「そうだな。ワタシ達が誰のものか、これではっきりとわかるだろう。」

「そうだよ!これで告白がもっと減るだろうし、そーちゃん達にも告白無くなるね!」

「良いことしかありませんね。総司くん、吉岡さん、良かったですね?」


 ・・・良くねぇ。

 目立ちたく無いってのはやめたが、目立ちたいとは言ってねぇんだよ!俺は!!


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