閑話 悪巧み(双葉、琴音、翼) side双葉

「かんぱ〜い!!」

「「かんぱ〜い!!」」


 琴音先輩の乾杯の合図で、私と翼も乾杯をする。

 ここは、私の家。

 総司はみんなで温泉旅行に行ってるし、瑞希はお友達の杏奈ちゃんの家にお泊りに行っているわ。


 酒の肴は瑞希から送られて来た、総司達の写真。

 幸せそうな総司や詩音さん達。

 私も、琴音先輩も、翼も思わず笑みが出る。


「は〜・・・でも、良かったわぁ・・・詩音達が幸せになれそうで・・・」

「そうですね・・・見て下さい、この翔子からのLINを。」


 そこには、


『総司くんと無事結ばれました。勿論、黒絵さん、柚ちゃん、詩音さんもです。私、凄すぎて気絶しちゃいました♡』


 という文面が。


「・・・翔子さんは本当に明け透けねぇ・・・」

「本当ですね。翼そっくりだわ。」

「良いじゃないですか。娘が自分に似ているのは嬉しくないですか?」

「・・・まぁ、それは分かるわ。私も、詩音は私に似てるって思うし。」


 本当に、あの子達は母親に似てるわね。

 だから、私にとっても、とても好ましいんだけど。


 ・・・ん?


 私は、翔子さんと翼の会話を読み進める。


『本当?良かったわね!おめでとう翔子!』

『ありがとうございます。お母さん。』

『総司くん凄かったのね。初めてで気絶って凄いわね。』

『はい。すぐに気持ちよくなったので、総司くんに激しくして欲しいって言ったら・・・とんでも無いことになっちゃいました。』

『・・・ごくりっ。(というクマちゃんが物欲しそうにしているスタンプ)』

『お母さん、準備は整いました。これでお母さんがと総司くんを襲っても、笑ってすませられるようになりました。』



 ・・・んん?


『あら!?お裾分けしてくれるのね!それじゃ、今度総司くんをお家にご招待しなきゃね!』

『はい!・・・琴音さんもお呼びましょう!一人より二人、二人より三人です!一回シてしまえば、総司くんも諦めると思います。』

『翔子・・・お母さんだけじゃなくて、琴音さんの事も思いやれるようになるなんて・・・優しい子に育って・・・母は嬉しいですよ。』

『お母さんにも、琴音さんも幸せになって貰いたいですから。存分に乱れて下さい。』

『そうしますね。それじゃ、翔子はまた頑張ってね?』

『はい!今、黒絵さんが2回目を頑張っています。次は私の番です!それでは!』


 ・・・突っ込みどころしか無いわね。


「・・・翼さん。あなた本当に翔子さんとそんな会話を普通にしているのね・・・」

「ええ、恥じるところはありませんよ。娘も女、母もまた女です。」


 本当に変わらないわねぇ・・・


「それにしても・・・双葉さん、ぶっちゃけどう考えてるの?翼さんみたいに、総司くんを狙っている人の事を。」

「琴音さん・・・他人事みたいに・・・あなたもでしょう?」

「んんっ!ま、まぁ、私の事は置いておいて・・・どうなの?」

「そうですねぇ・・・」


 私は考える。

 すぐに答えはでた。


「・・・私が考えるのは、総司の幸せですが・・・親しくなった人の幸せも同じです。もし、総司とする事が、本当に翼や琴音先輩の幸せに繋がるのであれば、私は反対しませんよ?それに・・・ぶっちゃけ、翼や琴音先輩のように、超絶美人とデキるのであれば、総司には幸せしか無くないですか?」


 ま、そういう事よね。

 この辺りは、亮司に申し訳ないと思うことは、私としか経験が無かった事。

 かと言って、もし本当に浮気したら、ボコボコにしてただろうけど。


「・・・そう。まぁ、双葉さんもぶっちゃけたし、口うるさい葵さんや清見さんがいないから私もぶっちゃけるけど、総司くん・・・美味しそうなのよね・・・私も、二人しか経験無いけど、総司くんのアレ、規格外だったもの・・・どんな風になるのか・・・興味あるわ。それに、とてもいい男だし、亮司くんに良く似てるし。」


 じゅるりとヨダレを拭きながら妖艶に言う琴音先輩。

 ・・・酔ってるわねぇ。


「私もそう思います。私は離婚した夫しか知りませんが、それ以前に、総司くんは私の好みドストライクなんですよ。我慢できなくなったあの子が、無理やり私に襲いかかる妄想を何度したか・・・うふふ♡」


 今も妄想しているのか、とてもだらしない顔を見せる翼。

 普段、無表情に近い整った顔をしている翼が、まずしない顔ね。

 

 この子も酔ってるわぁ。


「でもなぁ・・・翔子さんは喜んでくれそうだけど、詩音や柚葉さん、黒絵さんは嫌がるだろうしなぁ・・・う〜ん・・・」


 琴音さんは腕を組んで考え込む。

 そんな琴音さんを見て、翼は少し考えて、


「・・・そうですね。一番の狙い目は、あの子達が妊娠して、その面倒を見る、という名目で、私達があの子達の家に転がり込んだ時だと私は踏んでいます。それまでは、隙があったら狙うスタンスでどうでしょう?」


 ・・・めちゃくちゃ具体的な案だわ。

 翼・・・本気ね。


「・・・確かに、それなら勝率は高そうね。それにしても・・・すぐに案が出てくる辺り、ずっと考えてたの?」

「翔子と二人で考えました。」


 ・・・翔子さん・・・恐ろしい子!


「でも、確かにいい案だわ。それなら、あの子達もなんだかんだで許してくれそうだし・・・双葉さんはどう思う?」

「そうですね・・・良いんじゃ無いですか?総司もムラムラが溜まる頃でしょうし、他で何かされるより、琴音先輩と翼の方がよっぽど良いと思いますし。何より・・・面白い!」

「流石双葉さん!」「流石双葉先輩!

「あ!だったらさぁ・・・」


 私達は悪巧みを続ける。


 ・・・なんとなく、仏間の方から、呆れてるような気配を感じるけど・・・ま、亮司も許してくれるでしょ!


 ね?亮司?

 もうちょっと待っててね。

 私が・・・あたしがそっちに行ったら、思う存分シてあげっからさ♡


 

  



 



 酔いつぶれて雑魚寝しちゃったのか、まどろみの中。

 なんとなく夢見心地の中。


 私の目の前には亮司の姿。

 他には何も無い真っ白な空間。


 亮司は呆れた表情をしていた。


『・・・あのね双葉。君には本当に迷惑をかけてるよ。総司や瑞希をしっかり育ててくれて、感謝もしてる。でもさぁ、総司に琴音さんと翼ちゃんをけしかけるってのはどうなのさ。』


 亮司は、何故か昔の・・・高校生の頃の姿だった。

 あたしも、同じ頃・・・まだ、髪の色を染め直す前の、不良だった頃の姿だ。

 だからこそ、夢だとわかった。


『いいじゃね〜か亮司。あの二人も離婚して寂しいんだよ。それに、総司もあんな美人二人とデキるなら、嬉しいだろうしさ?』

『・・・そりゃそうかもしれないけど・・・羨ましい思いもあるけれど、それでもさぁ・・・義娘達の夫なんだよ?それを・・・』


 亮司の、聞き捨てならない言葉にピクリと眉が動く。


『・・・待て、亮司。今、羨ましいっつたか?』


 あたしがそう言うと、亮司は焦った表情に変わった。


『へ?い、いや、なんの事だか・・・』

『おい亮司・・・てめぇ、そっちで浮気してねぇよなぁ?あ”あ”?』

『し、してない!してないよ!!神に誓って!!僕は双葉一筋だよ!うん!!』

『・・・ぜってーだな?もし嘘だったら・・・わかってんな?』

『も、勿論だよ!』

『ならよし!』


 あたしの言葉に、亮司は苦笑した。


『・・・変わらないねぇ君は。総司と瑞希を頼んだよ?』

『任せときな!だからそっち行ったらいっぱい土産話してやっからよ!』

『うん。頼んだよ?僕の大好きな双葉。』

『ああ・・・亮司、愛してるよ。』


 



 はっと目が覚める。

 周りを見回すと、寝てる琴音サンと翼が見える。


 仏間に目をやる。

 

 亮司の遺影が微笑んで見えた。


 あたしは誓う。

 しっかりと、生きて、全部見届けて死んで、その後はまた、亮司と幸せになる!


 そして、思いっ切り亮司とヤる!!

 そんときゃまぁ・・・琴音サンと翼にもお裾分けしてやっかなぁ・・・あの子達みたいに亮司を分け合うか!!


 亮司!覚悟しとけよ!!

 お前が死んでデキなくなった分、しっかりと埋め合わせして貰うかんな♡



*******************

あとがき

これで、本章も終わりです。

いよいよ、次が最終章の予定でしたが・・・もう一章挟もうかなと思ってます。

クリスマスが、思ったよりも長くなっちゃいましたので・・・すみません。

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